おなかに乳腺腫瘍の塊がある保護犬 「一刻も早く」と預かりボランティアは手術を選択 健康を取り戻すための日々が始まった

岡山県を拠点に、行き場を失った犬猫の保護活動を行う認定NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)。同団体に参加する京都在住のYさんは、2023年5月のある日、ワンコを引き出すため、預かりボランティアの先輩の車で岡山県動物愛護センターに向かっていました。

道中の車内、先輩の預かりボランティアからこんな話を持ちかけられました。

「しあわせの種たちの代表から話を聞いたのだが、今向かっている岡山県動物愛護センターに、緊急性の高い乳腺腫瘍のメスのワンコがいるらしい。できればそのワンコを引き出してもらえないか」

実はYさん、このワンコのことは、しあわせの種たちのグループLINEで知っていて、「早く誰かが引き出してほしい」と思っていました。しかし、Yさん自身は預かるにしても自宅のキャパの問題もあるし、この時点では即答することができませんでした。

まずは岡山県動物愛護センターに行き、当のワンコに会って様子を確認してから考えたいと、ひとまずは保留のまま現地へと向かいました。

■ワンコの前で、引き取るかどうか悩み続ける預かりボラさん

Yさんと先輩の預かりボランティアさんは、岡山県愛護動物センターに到着しました。

当時、センターには40頭もの保護犬が収容されていましたが、その中に話に聞いていた「緊急性の高い乳腺腫瘍のあるワンコ」が確かにいました。お腹には、約9cmにおよぶ大きな塊がぶら下がっています。これこそが乳腺腫瘍のようで、さらにこれより小さいものも含めれば5つほどの腫瘍らしきものも黙認されました。そのため、一刻も早い治療が必要でした。

乳腺腫瘍は見るからに痛々しく、そして重たそうにも映り、とても過酷な状況に感じられましたが、しかし当のワンコはいたってご機嫌。第一印象は「懐っこい」「ずんぐりちゃん」といった感じでした。

そして、人間が大好きな様子で、始めて会うYさんにも「よろしくね!」と言わんばかりに元気に尻尾をブンブンさせます。体を触っても嫌がらず、むしろ喜んでいる様子でした。

聞けばこのワンコ、年齢は推定10歳ほどで、体重は15キロあると言います。Yさんお自宅での預かりスペースは2階にあるため、このワンコを抱き抱えてお世話をするのは難しいと思いました。そして、Yさん自身、持病を抱えた保護犬の看病の経験がないこともあり、やはり難しいと思いました。

しかし、重い病気を抱えながらも、世話をしなかった人間を恨むこともなく、くったくのない笑顔を振りまくこのワンコを見ると、「一刻も早くなんとかしてあげなければいけない」とも思いました。

しばらくの時間、悩んだYさんでしたが、他に相応しい引き取り手がない以上、不安だらけの自分であっても迎え入れてお世話してあげるほうが、このワンコにとって良いだろうと考え引き受けることにしました。

■「腫瘍を取り除くことはできるだろう」

そのワンコは、ニコニコしていて明るい表情がチャーミングだったことからチャーミーと名付けることにしました。

Yさんは保護したその足で先輩の車で京都へと戻り、翌朝に地元の動物病院に連れていきました。さっそくチャーミーの乳腺腫瘍を診てもらいましたが、獣医師によればやはり「早急に手術する必要がある」と言います。そして、チャーミーにはまだ手術ができる体力があるとも言い、腫瘍を取り除くことができるだろうとも教えてくれました。

動物病院での検査を終え、ひとまずYさんの自宅に到着したチャーミー。急に知らない家に連れてこられたことで、さすがに笑顔がなくなり固い表情を浮かべるチャーミーでしたが、Yさんの優しい気持ちを感じ取り、すぐに岡山動物愛護センターで会った際のようなニコニコ笑顔を見せ、尻尾も振ってくれるようになりました。

■心配するYさんを前に、明るく笑顔を見せるチャーミー

後に無事手術を終えいつも通りの笑顔を見せてくれたチャーミーでしたが、実は手術の際のCT撮影や血液検査などで、左側の副腎が右側に比べて著しく大きいことがわかったり、甲状腺ホルモンの数値が基準値より下回っていることが判明しました。この他にも心臓の軽微な逆流があり、細胞診では悪性度の高いものも見つかりました。

このため、Yさんは今後も慎重にチャーミーのお世話をし続けるとともに、適切な治療を行なっていくことを決意。正直チャーミーが健康体を取り戻すのは難しそうですが、かと言ってチャーミーを放っていくわけにもいきません。現実的には、「現状維持」が目標となりますが、とにかくチャーミーが元気を取り戻してくれることを願いお世話をしていくことにしました。

幸い、チャーミー自身は術後の2日間ほどはご飯を食べられませんでしたが、すぐに食べられるようになり、驚くほど順調に体調を取り戻しているそうです。そして、あのニコニコの笑顔も相変わらずで、尻尾もブンブン振りまくっているそうです。

チャーミーは、心配するYさんを前に、まるで「心配してくれてありがとう。でも、私自身は、おかげでめっちゃ元気なのよ」と言わんばかりに表現してくれているかのようにも映りました。その笑顔を前に、Yさんは今後もチャーミーに寄り添い続けることを心に誓いました。

認定NPO法人しあわせの種たち

https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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