「今いる保護猫、すごい顔なの」送られてきた写真で恋に落ちた トリミングサロンの看板猫になった「凶悪表情のブサかわ猫」
東京・青梅市にある「トリミングサロン シリウス」には、ニャンとも味のある看板猫ブブくんが! ブブくんは劣悪なペットショップからレスキューされ、飼い主のbalon_botさんと出会った子。お店では豊かな表情を活かし、お客さんの心を奪っています。
■同業者の先輩が見せてくれた「凶悪な表情の猫」に一目惚れ!
出会いは、2022年3月17日のこと。その日はちょうど、先住猫バロンくんの誕生日でした。
トリミング業務と動物保護活動に勤しむ同業者の先輩から久しぶりに連絡があり、飼い主さんは近況報告。すると、先輩から「今いる保護猫、見て。すごい顔なの」と、1枚の写真が送られてきました。
凶悪な表情を浮かべる、その猫はインパクト大!写真を見た瞬間、飼い主さんはブサかわなお顔を愛くるしく思い、思わず「ブッッ!(笑)」と叫んでしまったそう。
「写真の衝撃と、バロンの誕生日に出会ってしまったことに運命を感じました。気がついたら、先輩に『この子、うちにきます』と、言っていました(笑)」
飼い主さんはその日の夕方、対面しに行き、おうちに迎えることに。名前は、写真を見た時の叫び声から「ブブ」に決定しました。
ブブくんは、劣悪なペットショップからレスキューされた子。狭い飼育ゲージに入れられていたようで、保護時、背中の被毛は毛玉になっており、全身、糞尿まみれでした。
「保護直後に毛玉を全部刈り取り、背中をつるっぱげにしたので、その状態で、うちに来ました」
新しい環境に慣れてもらうため、飼い主さんは保護先と同じケージを購入。ハンモックも同じものを用意し、「そこを寝床にしてね」と、ブブくんに頼み込みました。
ブブくんは飼い主さんが思う以上に、肝が据わっている性格だったよう。先住猫のバロンくんとの顔合わせも穏やかに済ませ、おもちゃで遊びまわったり、我が物顔でソファーを占領したりと、お迎え当初から自由奔放。やがて、バロンくんにちょっかいをかけ始めました。
すると、バロンくんはストレスを感じ、ご機嫌斜めに。同時期、ブブくんに耳ダニが発覚したため、飼い主さんはしばらく実家でブブくんを隔離治療。その後は日中だけ、実家近くにある自身のトリミングサロンにブブくんを連れていき、様子見。
それを機に、ブブくんはお客さんを笑顔にする看板猫になっていきました。
「人慣れしてもらうため、お客さんには無理に触ったり脅かしたりしないよう、お願いしました。犬慣れは最初からしており、軽く鼻を合わせて挨拶もできたので助かりました」
■ジャンプを自然にしてくれる嬉しさを噛みしめた
実はブブくん、かつてはジャンプが上手にできなかったそう。保護先では高さ20cmのソファーに飛び乗ることすらできませんでした。
「ブリーダー宅やお店で、ろくに運動させてもらえてなかったんだなと感じました。保護当時は1歳でしたが、2.6kgしかなかったようで、筋力もありませんでした」
でも、普通の日常生活を送っていれば筋力はつくだろう。そう思い、飼い主さんは無理に運動させず、ご飯の量増やしつつ、キャットタワーやおもちゃで遊ばせ、バロンくんと走り回る様子を見守ることに。
すると、自宅に迎えて1ヶ月ほど経った頃、サロンにある高さ50センチほどのゴミ箱にジャンプ!
「やっぱり、筋肉が足りなかっただけか!と喜びました。その後は体重もグングン増え、現在3.9kg。3段あるケージの2段目へ自然に飛び乗り、眠る姿を見ると、成長したなぁと嬉しくなります」
ただし、ちょっぴり鈍くさいと感じる場面はあるよう。ブブくんはサロンにあるゴミ箱の上からカウンター上へ行くのが日課となっていますが、過去に、たまたまゴミ箱の蓋をあげていた時には、それに気づかず、見事にゴミ箱の中へイン!その後はしばらく、ゴミ箱を警戒していたのだとか。
また、猫用おやつ「ちゅ~る」に対する反応にもブブくんらしさが。投薬時に使っていたのか、お迎え当初、ブブくんは「ちゅ~る」を全く食べなかったそう。
「今でも、見せた時には微妙な顔はしますが、鼻の下に少しつけて味を教えてあげると、『あ!これかぁ!うまいよね!』という感じで食べてくれるようになりました(笑)」
■先住猫を気遣える優しさも習得!
お迎え当初、若干ギスギスしていたバロンくんとの関係性も、今では上下関係がしっかりでき、仲良く取っ組み合いをするまでに。
「ブブのちょっかいがヒートアップし、バロンがやり返した後からは関係性が変わりました。バロンは兄貴として教育しているようです。取っ組み合いに勝つのは、毎回バロン。14歳の貫禄を見せつけています」
2匹は毛づくろいをし合ったり、一緒に寝たりすることはあまりないものの、至近距離で眠ることはあるよう。
ブブくんは嫉妬深いバロンくんを気遣い、自宅では飼い主さんに甘えず。その分、トリミングサロンでは出勤直後から甘え鳴きをし、構ってアピール。
「たまに、ワンちゃんやお客さんに挨拶しに顔を出したり、作業の邪魔をしたりしてきます。かわいいです(笑)」
“よく寝る看板猫”として鎮座するブブくんには、ファンがたくさん。普段はお店に来ない、お子さんや旦那さんが奥さんと一緒に来たり、一眼レフや差し入れのおやつを持ってきたりする人もいるそう。
「まさに招き猫。ブブのおかげで、ワンちゃんが少し猫ちゃんに慣れたみたいという方も、ちらほらいらっしゃいます」
「トリミングサロン シリウス」は不定休営業で、完全予約制。ブブくんが逃げるため、触ることは滅多にできません。また、サロンを利用せず、ブブくんに会いに行くだけの予約はNG。
ストレスがかかりにくいよう、配慮された空間の中で、ブブくんは日常を謳歌しています。
「仕事場では目の前で掃除機をかけても、どかずに寝ています。変な猫~とよく言われるので、もしかしたら猫じゃないかもしれません(笑)」
猫らしからぬ行動を見せてくれるブブくんの日常。今後も追っていきたいものです。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)