「電車はいろんな状況の人が乗っています…」 修学旅行の児童たちを行儀よく振る舞わせた先生の言葉が胸に響く

電車で修学旅行や遠足の学生と出くわし、あまりのやかましさに閉口したことがある方は多いと思う。そんな時、脳裏をよぎるのは「引率の先生は何をしているんだ?」という言葉。実際は先生もどうにか行儀よく振る舞わせようと四苦八苦しているはずが、たまのイベントに浮かれる子供たちに言って聞かせるのは並大抵のことではないのだろう。

今、SNS上でそんなシーンで大きな効果を発揮しそうな"ある先生の言葉"が大きな注目を集めている。

「今でも覚えているんですが、小学校の修学旅行の時、新幹線に乗ったんですね。当時の先生がみんなに…

電車というものは、いろんな状況の人が乗ってます。楽しく旅行に向かう人、これから仕事に行く人…もしかしたら、ご家族が急病で、そこへ駆けつける人…お葬式の帰りの人もいるかもしれません。

君たちは、楽しい旅行ではあるかもしれませんが、そんな人達がいるかもしれない、そんな気持ちを心の片隅に置きながら行動してください。

と言ったんです。

ちょっと荒れた学校だったけど、ギャーギャー騒ぐ生徒は一人も出なかった記憶。

きちんと説明することが大切。」

と自身が小学生の頃のエピソードを紹介したのは鉄道タレントの古谷あつみさん(@railway_atsumin)。

圧をかけるのではなく、児童ひとりひとりの心に訴え、「もし自分の立場だったらどう思うか」を想像させてくれる思慮深い先生の言葉。この言葉を受け、古谷さんたちは自然と行儀よくふるまうことができ、楽しく旅行できたのだという。

古谷さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「ただむやみに押さえつけるだけじゃなく、理由をわかるように話すことってホント大事ですね」

「人生において何が大切なのかを教えれる先生は偉大

教科書に書いてあることを読むことなんて誰でもできる」

「同じ場にいても自分のメガネを通してみる景色と相手に見える景色は全く違うことを学べるときっと優しい大人になれると思います。」

「『想像させる』って大事。

そうやってキチンと説明してもらうと、子供だって思いやりの気持ちになるんですね。」

など数々の共感の声、感動の声が寄せられている。

古谷さんにお話を聞いた。

ーー当時の先生のご年代、お人柄についてお聞かせください。

古谷:当時の年齢で40代後半だったかと思います。隣のクラスの男性教諭でした。厳しかったのですが、ドラマに出てくるような鬼教師ではなく、何かあった時いつも冷静にみんなを諭すような先生でした。凛としていて、素敵な先生です。

ーー生徒たちから慕われていた先生だったのですね。

古谷:今回のポストの先生のお言葉にはちょっとした背景もあります。私たちの修学旅行の行き先は広島でした。テーマは「平和学習」です。修学旅行に出かける前から、広島や長崎に起きた悲惨な過去を何時間もかけて丁寧に教わりました。

修学旅行は、原爆ドームに行ったり、実際に被爆した方のお話を伺いに行くようなスケジュールで、宮島での観光もありましたが、ほとんどが戦争について学ぶ内容でした。

私は戦争体験者の祖父母に育てられたので、どこか修学旅行は楽しいピクニックに行くような感覚ではなく、日頃学んだことを実際にこの目で体験し勉強しに行く、とても大切なものだという認識がありました。ですので、より先生の言葉がすんなり入ってきたのかもしれません。

ーー古谷さんたちは先生の言葉をどのように受け止めたのでしょうか?

古谷:私は当時小学生でしたので、新幹線イコール旅行に行く人が乗るものという認識が少なからずありました。ビジネスマンだけでなく、先生が言うような状況の人が乗るなんていうところまで、想像力が追い付いていなかったように思います。私は、祖父母がすぐ近くにいましたし、実家に帰省するなどというイベントもないのです。子供の世界観はそんなものです。

なので、先生に諭され「そっか!いろんな人がいるよね。それは私たちがうるさくしていたら、きっと嫌な気持ちになるだろうな。」とわかりました。

他の児童たちの気持ちはわかりませんが、車内でトランプをしていた時に、友人がふと大声を出しそうになったけど「はっ」とした顔をして落ち着いたので、きっと私と同じように考えていたと思います。

ーー今振り返り、先生のお話のされ方についてどのように感じますか?

古谷:私は、独身ですし、子供もいませんので、子育ての大変さはわかりませんし、小学校の教員の大変さもわかりません。

ですが、高校と専門学校の講師をしておりましたので「子供に伝えることの難しさ」は少しわかる気がします。「こういうふうに伝えたい」と思っても、自分の意図と全然違うふうに伝わってしまうこともあります。子供を持つ親や、先生方は日々とても苦労されていると思います。

しかし、先生は諦めずに丁寧に説明してくださり、なおかつ「心の片隅に置きながら行動してください」と、私たちの判断に委ねてくださったのです。これは「どうせ言っても伝わらないだろう」「自分の真意は伝わらないだろう」ではなく、しっかり説明すれば伝わると信じてのことだと思います。

こういう思いは子供は敏感に感じ取ります。結果、今回お話した修学旅行のような結果につながったのだと思います。

◇ ◇

言葉は使いようで人を傷付けもすれば、逆に励まし、人間的成長をもたらすこともある。古谷さんの先生のような伝え方は誰にでも真似できるものではないが、相手の心に向かい合って話しようという心構えはぜひ見習いたいものだ。

なお古谷さんは9月3日に横浜市西区のNaked Loft Yokohamaで鉄道トークイベント「てっけん!#3」に出演。また現在、これまでに出演したMONDO TVの鉄道番組「鉄道ひとり旅~女子鉄編~」が一挙再放送中なのでご興味なる方はぜひチェックしていただきたい。

古谷あつみ(ふるや・あつみ)さんプロフィール

松竹芸能所属、鉄道タレント

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行ったことを機に、鉄道ファンとなる。新幹線の車内販売員を経てJR西日本の駅員となった後、芸能界デビュー。現在はタレント活動のほか、執筆活動もしている。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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