スタッフを見つけるとピョン跳ねする柴犬 いくつもの病気を抱え…新しい飼い主さんとの出会いを待つ
2023年初め、ひとりぼっちでいるところを発見され愛護センターに収容されたワンコがいました。白と茶色の毛が特徴的な柴犬で、人に馴れており、元飼い犬の可能性が高いシニア犬。愛護センターに収容されてしばらく経っても飼い主が名乗り出てこないことから、捨てられたワンコのように思えました。
■多くの持病を抱え彷徨っていた
このシニア犬を引き出すことになったのが、行き場を失った数多くのワンコの命を助ける活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。このワンコに「タシュ」と名付け、同施設に連れて帰りました。
すぐに健康状態をチェックすると、様々な病気が発覚しました。腎疾患、角膜炎、関節炎、気管虚脱、心拡大など。
多くの病気を抱えながら元飼い主と離れ離れになり、ひとりぼっちで彷徨っていたことを思うと、スタッフは胸が苦しくなりますが、これからのタシュが幸せに暮らしていけるよう全力でサポートすることを決意しました。
■つらい境遇を感じさせない
つらい過去を持つタシュですが、スタッフを見つめる表情はいつも穏やかでニコニコ。元飼い主に捨てられても人を信じる心を失わず、笑顔を見せて甘えてくれます。タシュは多くの病気を抱えていますが、それに負けないぐらいの明るい性格で周りを笑顔にしてくれました。
部屋にいるときはのんびりと過ごしていますが、散歩中は色々なものに興味を示し「これは何だろう?」「なんだか楽しそうだな!」と言わんばかりに探索します。道端で松ぼっくりを見つけ咥えて遊んでみたり、草むらに入っていき、草の匂いをいっぱい嗅いでみたりと、その様子だけを見ればいたって元気なワンコです。
■興奮させない配慮と、散歩時間の制限
ただし、前述のような病気の治療は簡単ではなく、興奮によってひどい息切れを起こすこともあります。これは気管虚脱という病気によるもので、興奮に伴い歪んだ気管が狭まり呼吸が苦しくなるからです。そのため、スタッフはタシュが興奮するような場面を作らないように配慮し、さらに激しい運動などもさせないようにしました。
さらにもう一つ、関節炎の影響により後ろ足が曲がってきており、散歩の際などに痛そうにすることがあります。好奇心旺盛でいつも遊びたがるタシュですが、こういった事情からも散歩の時間も制限する一方、治療においては獣医師より関節炎に効く注射を打ってもらっています。
■「楽しいのは良いけど、体を大事にね」
そんな持病を抱えたシニア犬のタシュですが、人好きで好奇心旺盛な性格はやっぱり今日も変わりません。スタッフを見つけるとうれしそうな笑顔を浮かべ、「一緒に遊ぼうよ!」とピョンピョンと飛びはねたり、スタッフの周りを走り回ることもあります。そんなタシュの様子を前にすると、スタッフの表情もゆるみます。「楽しいのは良いけど、とにかく体を大事にしてね!」と声をかけながら、今日もタシュの世話を続けています。
現在、タシュは新しい家族とのマッチングの日を待っています。タシュの持病やシニア犬であることに理解があり、一緒に穏やかに過ごしてくれる里親さんに迎え入れてもらうことが望ましいとのこと。また、タシュはときどき他のワンコにちょっかいを出してしまうクセがあるため、先住犬などがいない環境が良いとのことです。
「めでたくタシュに新しい里親さんが見つかったら、これまで以上にタシュらしく、のんびり穏やかに過ごしてほしいです」とスタッフは話しています。
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)