身障者用駐車スペースの三角コーン→障害の当事者「誰のため?置く心理がわからん」 運転は「介助者ありき」ではありません
公共施設や商業施設の駐車場に設けられている身障者用の駐車スペース。ここに「健常者」が誤って車をとめることを防ぐため、目印として三角コーンが置かれていることがしばしばあります。しかし実は障害当事者にとって、一度車から降りてこのコーンを脇に移動させ、所定の場所に車をとめるのは大変な負担になります。自分で車を運転する車椅子ユーザーのサンタさん(@santabird555)がTwitter(現X)で次のように問題提起し、様々な意見が寄せられました。
「このコーンは何のため?誰のためにあるんかな?毎回置く人の心理がわからん。
介助者ありきの障害者駐車場で考えてるんかな?車椅子1人でも運転はするよ!
いっそコーン退けておいて対象者じゃない人も使っているぐらいの方がマシに感じる。使えないと意味がない。見ていると悲しくなるね」
今年3月には車椅子ユーザーが移動しやすい社会を目指すTOYOTAの「#まだまだマナー」キャンペーンで、「身障者用の駐車スペースに三角コーンを置かないで」という呼び掛けがありましたが、なかなか浸透していないのが実情です。
サンタさんに投稿の真意を聞きました。
2012年、29歳のときに頸椎を損傷する怪我を負ったというサンタさん。脚の感覚を失い、手の指も動かない状態で1年間ほぼ寝たきりの状態で過ごしました。手術やリハビリを重ね、現在は車椅子ユーザー。車に関しては、手だけで運転できる特殊な装置を施した改造車に乗っていますが、運転席に乗り込み、車椅子を積み込んで出発するのに、1人でやると5分ほどかかるそうです。
-三角コーンのために苦労することは多いのでしょうか。
「頻度自体は“たまにある”程度ですが、とても困ります。ただ、置いてある場所の近くに警備員がいて対応してくれるケースもあります」
-投稿には「お店に電話して退けてもらえばいい」というコメントも寄せられていましたが、実際にこういう状況に遭遇した場合はどうされていますか。
「状況次第です。電話をかけるのに待っていられるスペースがあれば待機しますが、なければ諦めて遠くの場所に駐車します。また、すぐに出てきてくれそうな雰囲気のお店なら電話しますが、難しそうならやはり諦めます」
-当事者として、この「問題」はどのように解決されるのが望ましいと思われますか。また、当事者としてはどんなことを伝えたいですか。
「この駐車場コーン問題にしてもそうですし、エレベーター問題、障がい者トイレ問題など、いつまでこんな当たり前のことを『問題』として取り上げないといけないのでしょうか。一部の心ない人の行動が、社会問題にまで発展させていると感じます」
「身障者用スペースの三角コーンに関しては、『誰のために?』『何のために?』『どうしてそうなる?』ということまで考え始めると、すぐに認識を変えていくのは難しいでしょう。しかし、変える方法は3つあると思います。
①手っ取り早いのは、賛否両論を呼ぶような過激な行動をSNSで発信すること。でもこれをすると『だから障がい者は…』という反発を招き、共存からは遠ざかります。当事者の間でも『風当たりが強くなるからやめてくれ』となるでしょう。
②もう少し長い視点で考えて、幼稚園や小学校の道徳の授業に取り入れてみるのもいいかもしれません。車をとめてはいけない場所が当たり前の知識として共有され、その子たちが大人になる頃には自然とそういう社会になっていくのではないでしょうか。
③逆に短期的に変えるなら、強引ではありますが罰金を設けることです。社会が変わっていかないなら、海外と同じシステムを取り入れ、法などで取り締まる。利用証を車のフロントに貼り、それがなければ罰金、もしくは点数が引かれる決まりにしてしまうのです」
賛否両論があることは予め理解した上でそう提案するサンタさんは、最後にこう話してくれました。
「正直こんなことは考えたくないですし、世の中は優しい人で溢れており、僕たち当事者は以前に比べて生きやすくなっています。感謝もしています。ほんの一部の方の残念な行動が、色んな方への迷惑につながっているのです。もしあなたが明日、障がいの当事者になったら?あなたの家族や知り合いや友人がそうなったら?みんな他人事かもしれませんが、朝起きたら障がい者になっていることだって起こり得るのです。その時に色んなシステムやサービスが、当たり前のように、誰もが適切に利用できる社会であるべきだと僕は思います。まずはこのようなケースがあるということを『知る』ことから始まるので、これを機に少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです」
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サンタさんはYouTubeの「サンタチャンネルSANTACHANNEL」で障害当事者の生活を発信。車をどう運転しているのかや、バリアフリー仕様にした家の様子などを紹介しています。
(まいどなニュース・黒川 裕生)