京都の夏、1日だけ見られる謎の「回収箱」 ご先祖への思い、ごみとは区別するもマナー守らない人も

 五山送り火が行われる毎年8月16日、京都市内ではもう一つ、この日だけの風景が見られた。盆に仏壇などに供えた食べ物や花の回収だ。回収する京都市が「いつから始まったか分からない」とするほど古くから続く取り組みで、集めた供物は「どのように処分されるのか」との疑問が京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。一体どこに運ばれるの?

 盆が近づくと、市内の掲示板には「お精霊送り」の供物の持ち込み場所を示すポスターが貼り出される。「お供物を川へ流さないようにしましょう」との呼びかけと、学区ごとの回収拠点が記されている。

 もともと京都では、盆の供え物を川に流す風習があった。しかし、衛生上の問題から、市が回収拠点を設けるようになった。回収を始めた時期について市まち美化推進課は「記録が残っておらず全く分からない」とする。一方、昭和30年代に出版された郷土史家・田中緑紅の著書によると、家々を回って供花や供物を引き取る人がいたという。現在は「お供物入れ」と書かれた段ボール箱が市内600カ所に置かれる。

 近年は仏壇のない家や、盆にお供えをしない家も多い。そんな中、昔ながらの風習を守っている家ではどんなものを供えているのだろうか。

 「うちの場合、お供えの内容は13日から16日まで毎日違ったものが決められているんです」。上京区に長く暮らし、著書「京都人度チェック」で京都の暮らしを紹介している鳴橋明美さんが教えてくれた。

 13日は白ご飯やサツマイモの煮物など4品、14日はご飯の代わりのそうめんやナスのおひたしなど4品-という具合に細かく決まっているという。「15日までは毎日、お下がり(仏壇から下げた供物)を家族でいただきます」。先祖の霊を送る16日だけは、午前中にご飯とあらめの煮物、漬物を供え、仏壇に灯(とも)したろうそくの火が消えると供物を下げる。供物は食べずに新聞紙で包み、花や苧殻(おがら)(麻木)とともに回収箱へ入れる。

 回収箱には果物や菓子など、一般的な家庭の供物も持ち込まれる。16日に箱に入れられた品は、17日に市が収集する。市まち美化推進課によると「市のごみ焼却場に運んで、一般廃棄物と一緒に処分する」という。

 一般ごみと同じように焼却するなら、通常の「燃やすごみ」と区別する必要はないのでは、と素朴な疑問を同課の担当者にぶつけると、「ご先祖への思いを込めて準備した供物なので、ごみとは区別しています」との答えが返ってきた。「中には供物以外のものを出す人もいる」といい「マナーを守ってほしい」と呼びかけている。

(まいどなニュース/京都新聞)

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