割れたガラスや廃材、排せつ物が散乱 言葉を失う環境で命をつないでいた保護犬 ジャンプして散歩をせがむ人懐こいワンコに変身!
2023年4月、北海道の多頭飼育崩壊の現場から推定1~2歳のメスのミックス犬が保護されました。その名はシジミ。複数いたワンコの中でもシジミのお腹が大きく、妊娠の疑いがあったため優先的に保護されました。
■スタッフも言葉を失うほどの劣悪環境
多頭飼育崩壊とは、動物を多数飼育していた飼い主が、去勢や不妊などをせず、無秩序な飼育を行った末に、動物が繁殖を繰り返し、子どもを生み続けるなどし、結果的に飼育破綻することを指します。
シジミは元飼い主宅の敷地内にあるハウスで飼育されていましたが、そこには大量の排せつ物と廃材、割れたガラスなどが散乱する劣悪な環境でした。
このひどい環境からシジミを救い出したのは、北海道を拠点に多くの犬猫の保護活動を行認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。数多くの現場を見てきたスタッフも、さすがにこの環境を前に言葉を失ったそうです。
■シジミは妊娠後、流産していた
劣悪な環境から救い出したシジミですが、保護の翌日スタッフはすぐにかかりつけの動物病院に連れていきました。獣医師に診察してもらったところ妊娠はしていませんでした。しかし、出血をしていたことから流産の可能性が高いとの診断でした。
血液検査の結果も貧血気味で、栄養状態が悪かったことが原因だと思われました。あのような過酷な環境下ではなく、ちゃんと愛情を持って飼育されていれば、シジミはここまで辛いをすることはなかったはずです。
■短い足でジャンプする姿がキュート
辛い思いをしてきたシジミですので、しっぽの会に来てからは、毎日たくさん食べてもらい、スタッフはたっぷりの愛情を注ぎました。こういった思いを感じてくれたのか、シジミはすっかり元気になり、そして、シジミ本来の穏やかで明るい一面もいっぱい見せてくれるようになりました。
人間から愛情を注がれることなく、劣悪な環境で育ったワンコは臆病だったり、警戒心が強くなかなか心を開いてくれなかったりすることも多いですが、シジミはいっさいの攻撃性がなく、どこを触っても怒らない人なつっこいワンコでした。
さらに慣れてくると、スタッフの姿を見つけては、尻尾をフリフリし、ぐるぐる回りながらルンルンで飛び跳ねるようにもなりました。短い足で必死にジャンプするシジミの姿は、スタッフのハートをわしづかみにし、しっぽの会のアイドル的存在にもなりました。
■散歩も苦手だった
また、あの劣悪な環境にいたことから推測するに、シジミは散歩にも満足に連れていってもらえていなかったようです。そのため、当初のシジミはとにかく散歩が苦手。リードに引かれることに慣れておらず、立ち止まってしまうことがしばしばありました。
しかし、散歩を繰り返し、その楽しさを覚えてからは、すっかり散歩が上手になり、今ではスタッフに「連れてって!」と甘えてくるほどにもなりました。
長きにわたって劣悪な環境で過ごしていたシジミですが、たっぷりの愛情を注ぎ信頼を築きあげたことで、わずか1カ月ほどの短い時間で、ここまで心を開いてくれるようになりました。
シジミが元気になり、人間を信頼してくれるようになったことを、スタッフはとても喜びました。そして、かつて辛い思いをしていた時間を取り戻すべく、これからのシジミが、幸せいっぱいの第2の犬生へと繋がることを強く願いました。
認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/#gsc.tab=0
(まいどなニュース特約・松田 義人)