繊細で幻想的な「切り絵」が話題 「凄すぎて言葉も出ない」「二次元のハズだよね?」作者に聞いた
まるで深海のような真っ黒な背景の上に、浮かび上がるチョウチンアンコウの切り絵が話題になりました。アンコウの体や細い無数のヒレ(鰭条)は、まるで機械のようなデザイン。光をはなつ提灯は、月で表現されています。
「これが一枚の紙から生み出されたって信じられないですね‥。提灯の部分を月にするという発想がもうすごすぎて、全部が素晴らしいです。」
「『切り絵だよね?透けてるよね?二次元のハズだよね?』と感覚が混乱します」
「素晴らしい!一目惚れです」
「とても美しくて声が出ませんでした」
などと、素晴らしさに驚く声がX(ツイッター)のリプ欄にあふれています。
この「月鮟鱇」の作者は、切り絵作家の「切り剣Masayo(@kiriken16)」(福田理代)さん。福田さんの切り絵の道具は、紙とシャーペンとデザインカッターのみ。平面の紙1枚にこだわり、残す線の太さの強弱で立体感を出す圧倒的な画力、それを切り出す集中力で繊細な作品を次々と生み出しています。
「まいどなニュース」では、2021年にまるで呼吸しているかのように動くタコの切り絵「海蛸子(Octopus)」について福田さんを取材しています。高校生のときに、友人のバースデーカードとして紙をハートにカットしてから31年、独学で切り絵を続けてきた福田さんにお話を聞きました。
■31年間、独学で切り絵を続けてきた作者に話を聞いた
──これまではどちらかというと生き物を写実的に細かく表現されていましたが、福田さんらしさはありつつ「月鮟鱇」は異なる作風ですね。
月鮟鱇では緻密さや繊細さなどの切る技術的なところよりデザインにこだわりました。特にチョウチンの部分に月を使ったところが自分でも気に入っています。
機械的なデザインで明かりを照らす物といえばランプや懐中電灯などを連想していたのですが、もう少し何かひと工夫欲しいと思っていた時に閃きました。餌をおびき寄せるために光るというより、周囲を照らす光のイメージです。
あと、身体の後方についている小さな雄もこだわりポイントです。チョウチンアンコウの雄の事を知った時は衝撃的で「これはデザインに絶対とりいれなければ!」と思いました。
──小さなオスはメスの体に噛み付いて、交尾行動の後、そのままメスの体と一体化してしまうとか…驚きました。切り絵が出来上がったときは、どのように思われましたか?
「なんて素敵な作品が出来上がったんだ!!どこからどこを見てもお気に入りポイントばかりだ!!」と物凄く自画自賛していました(笑)。落ち着いてくると直したいところが見えて来てしまうのですが、完成直後は達成感と満足感でいっぱいでした。
構想の段階で夫がとても楽しみにしていたので「これなら夫が喜んでくれる」とも思っていました。
──旦那さまに、アンコウの提灯を月にして作るという約束をされていたのですね。きっと完成を喜ばれていますね。以前の取材で、会社員として働きながら切り絵をするため、制作時間は夜中の3時から6時と話されていました。
基本的にはその生活を続けています。ただ最近は会社勤めの方で残業続きなので、4時過ぎに起きる事も多くなりました。
──そんなお忙しいなか、ポストでアンコウの切り絵を「急げ急げ」と書かれていましたが、完成日の目標があったのですか?
具体的な目標日時があったわけではありませんが、秋に個展があるのでそこに向けて一つでも作品を多く作らなければならない状況でした。今は次の作品にとりかかっています。
──次は、クジャクハゴロモなのですね。
今までは海洋生物や鳥などが多かったのですが、今回は昆虫に挑戦しています。昆虫のアップの画像などネットで検索したりしたのですが、不思議な不気味さでとても美しいと感じました。
■大阪と東京で展覧会の予定
福田さんの作品に、「すっごく実物が見たいです」というコメントも多くありました。直近では『白と黒のアーティスト3人展』(阪神百貨店梅田本店・ハローカルチャーで8月30日~9月5日)、『切り剣Masayo 切り絵展』(東京 京橋 メゾン・ド・ネコで9月30日~10月7日)で見ることができます。そのあとの予定や詳細は、SNS(@kiriken16)をご確認ください。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)