2023年春、福岡県動物愛護センターに真っ黒の2頭の大型犬が収容されました。もともとは元飼い犬のようですが、民家の少ない場所に捨てられていたところを保護されたとのこと。2頭とも顔や体格がよく似ていることから「姉妹ワンコだろう」と福岡県動物愛護センターの職員は話します。

大型犬、それも2頭となると引き出せる団体が限られてきますが、そこで名乗りをあげたのが、地元・福岡県を拠点に保護活動を行うボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす（以下、はぴねす）。はぴねすのスタッフはすぐに引き出しに向かいました。

■センター職員が与えたご飯を延々と食べ続けた

対面した真っ黒の姉妹ワンコは人懐っこく、初めて会うはぴねすのスタッフに対し、尻尾をブンブン振り回して柵越しに甘えてこようとします。スタッフは「明るくて性格が良いワンコだ」と思いましたが、その横で福岡県動物愛護センターの職員は「これでもだいぶ太ってくれ、元気になってくれたんですよ」と言います。

保護当初の2頭は食べ物を探し歩く日々をおくっていたのでしょう。骨格が浮き出るほどにひどくやせており、職員が与えるご飯を延々と食べ続け、どれだけ与えても続けさまに食べていたと言います。元飼い主にどんな事情や理由があったかは知りませんが、こんなにお利口でかわいい2頭を捨てるなんて…。2頭が不安と空腹を抱えながら過ごしていたことを思うと、スタッフは胸が苦しくなりました。

■難点は「自分の大きさ」「自分の力強さ」を自覚していないところ

はぴねすのスタッフはこの2頭にリオ、リサと名付けて連れ帰ることにしました。移動の際に初めて乗る車でもおびえることはなく、リオ、リサともにおとなしく過ごしていました。

大型犬なので引き取り場所の確保には少し難儀したはぴねすですが、リオ、リサそれぞれが先住犬のいる家で過ごすことになりました。

リオ、リサとも人間には誰にでもすぐなつき、他のワンコと遊ぶのも大好きないたって性格良好のワンコでしたが、ただ一つだけ難点もありました。それは2頭も「自分の大きさ」「自分の力強さ」をいまひとつ理解していないこと。他のワンコと遊んでいると力が強すぎて突き飛ばしてしまったり、散歩の際のリードも引っ張りすぎて人間が引きずられてしまったりしました。

「そんなリオ、リサがとってもかわいくて愛おしい」とスタッフは語ってくれました。

■リオに訪れたピッタリの出会い。そして今度はリサの番

そして今年の夏、大阪のある方からリオに「迎え入れたい」という申し出がありました。前述のように激しいリオなので、当初スタッフは「『ダメだったら返す』というような気持ちがあるなら最初からヤメてください」と伝えました。

しかし、その方は「しっかり家族で話し合い、それでも家族全員がリオに惹かれた」「何か困ったことが起こることも想定し、すでにドッグトレーナーも手配している」と言います。

この里親希望者さんの、迎え入れるワンコに対する徹底した姿勢と、「リオじゃなくちゃダメなんだ」という強い思いを感じました。スタッフは安心してこの方にリオを譲渡することにしました。

新しい里親さんはリオに「モナ」という新しい名前をつけてあげ、小さなお子さんも含めた家族全員でリオの面倒を見てくれているそうです。スタッフは「そのまんまのリオを迎え入れてくれる優しい家族に迎え入れてもらって本当に良かった」と嬉しく思いました。

そして、今度はリサの番。リオが優しい里親さんと出会えたように、リサにも心を通わせてくれる里親希望者さんが現れることを祈るばかりです。

わんにゃんレスキューはぴねす

http://happines-rescue.com/

（まいどなニュース特約・松田 義人）