「少し足りない」「ちょっと少ない」が数年後、十数年後に大問題に!? 欠陥住宅の見えない「手抜き工事」…こんなところに現われる
工場で正確にカットされた部材に高度な技術力・施工力が必要ない工具の開発など、安心・安全な住まいづくりのため各住宅メーカー・工務店や建材メーカーの取り組みが続いています。しかしいまだに「欠陥住宅トラブル」についての報告は少なくありません。
どうして「欠陥住宅」が生まれるのか、建売住宅も扱う不動産会社で長年一戸建て建築現場に立ち会ってきたAさん(60代・不動産業)によると、建築途中に現場に足を運ぶことで、だれにでも確認できる「手抜き現場」のチェックポイントがあるそうです。「こんな現場は危ない!」という特徴を聞きました。
■断熱材をタッカーで壁留めするときの本数が少ない
家の断熱性能は家の構造や使われている部材から計算できます。しかし、新築時に同じ部材が使われていても数年後、十数年後に断熱性能に「差」が出てくることがあるそうです。
断熱材にも様々な種類がありますが、例えばガラス素材から作られたグラスウール断熱材は、材料費も施工コストも安価で多くの住宅に取り入れられています。断熱性能も高く、燃えにくくて防火性も期待できる断熱材です。
しかし、施工のときに断熱材と柱や梁に隙間があったり、断熱材を壁に打ち付けてとめる「タッカー」と呼ばれる大きなホッチキスの本数が少なく、自重や湿気で数年後に断熱材が偏ってしまったりすると、計算通りの断熱性を発揮することができません。
■透湿防水シートがちょっと足りてない
「透湿防水シート」は、万が一屋根や外壁材の継ぎ目やコーキングの劣化などで隙間が発生したときに、家の内部に水が入ることを防ぐいわば「最後の守り」のような役目を果たします。隙間から雨が内側に入り込まないように防ぎつつ、湿気は透過させて家の湿度をコントロールする役割もあります。
高気密工断熱住宅には欠かせない部材ですが、この透湿防水シート、当然ですが隙間なくピッチリと覆わなければ意味がありません。寸法が足りていないなどで「隙間」ができると、そこから家の内部まで雨水が浸透してしまいます。
「あと1センチだったのに調湿防水シートのロールがなくなってしまった……」「高くて見えにくいところに貼るのを忘れていた」という事があれば、当然湿気やカビなどに悩まされる可能性が高くなります。
■ボードをとめるビスの本数が少ない
透湿防水シートや断熱材を入れ終わった後、壁紙を貼る前にボードを立てます。
柱にボードを打ち付けるときにビス止めをしますが、このビスの本数を少なくすればするほど、当然ですが作業は早く楽に終わります。微々たる額ではありますが、ビス代も浮くことに。わかりやすい問題がすぐに出てくる箇所ではありませんが、耐火性能が下がってしまったり、ビスからヒビが発生してしまったりするリスクが高まります。
なお、ボード工事では、各メーカーからビス間隔を指定されていることがほとんどです。
■一部だけ塗装の色が薄いところがある
さび止めや下地塗りなどは、ほとんどの場合複数回塗装を重ねます。この時、塗り忘れた箇所があれば一部だけ色の薄いところがでてきます。塗り壁の最終仕上げのような「美しさ」を必要とするものではありませんが、塗りむらがあればその分効果が損なわれてしまう可能性があります。
■養生をしないで荷物や材料を置いてある
家づくりの見えないところから常に丁寧に扱い、傷をつけないように配慮する姿勢の表れが養生です。ビニールシートを使って保護するひと手間をきちんとかけない現場では、これまで紹介したような本当の『欠陥』につながる手抜きが発生しがちだそうです。
「どんなに最先端の部材や道具を使っても、最終的に施工をするのは「人」です。決められた工程をきちんと確認し、丁寧に作業することの積み重ねが「欠陥のない家」を作ります。
難しさのない『基本の作業』で手を抜くということは、他にもいろいろなところで手を抜いている可能性が高いということではないでしょうか」。長年現場を見続けてきたAさんの言葉には重みがあります。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)