ケージの中から目が合った瞬間「にゃー!」 元気いっぱいの子猫を迎えて父を喪った悲しみは癒え、娘は命の尊さを知った

■「この子だ!」

ころもちゃん(1歳2ヶ月・オス)は、町を彷徨っていたところを保護され、保健所に収容されていた。保護しようと職員が近づいても怖がることはなく、甘えるように近寄ってきたという。

秋田県在住のTさんは、動物とは無縁の生活を送ってきた。

「子供の頃は接し方が分からず、苦手意識があったくらいでした。大人になり、首輪をした人懐っこいキジトラちゃんに出会ったのですが、本当に可愛くて一瞬で猫の虜になりました」

2023年、Tさんはお父さんを亡くして憂鬱な気持ちになることが多く、どうにかしなければと思っていた。ある朝起きた時、急に「猫を飼おう」と思い立ち、家族から驚かれたという。

「最初は、ブリティッシュショートヘアーのおあげ(1歳・オス)をペットショップから迎えました。2匹目は保護猫と決めていたので、県内の譲渡会に参加しました。夫からは、『この子と思う子に出会うまで無理に迎えない方がいい』と言われていたので見学のつもりでした。でも、窓際の明るい場所に置かれたケージの中の子と目が合い『にゃー』と鳴かれた時、なんだか呼ばれているような気がしました」

その猫がころもちゃんだった。譲渡会という慣れない場で固まっている子が多い中、ころもちゃんはモリモリご飯を食べ、手を近づけるとスリスリしてきた。Tさんは、「この子だ!」と思った。

「一緒に参加していた5歳の娘が『おうちにくる?』と聞くと、『にゃあ!』と返事をしました。私は、ころもの年齢もよく確認しないまま、『この子うちの子にしたいです!』とスタッフの方に言っていました」

■元気をくれる猫

Tさんは、譲渡会場からそのままころもちゃんを連れて帰り、トライアルを開始した。先住猫と会わないように家の中を歩かせると、全く怖がることなく探検し始めた。家族みんなに甘え、ご飯もおかわりしたので、Tさんは適応能力の高さに驚いた。名前は夫の直感で「ころもちゃん」になった。Tさんは、響きが可愛くて気に入っているという。

「ころもは遊ぶときも甘えるときも食事も全力で、猫であることを楽しんでいるように見えます。そんな自由気ままなところが可愛くて、うらやましいなと思います」

ころもちゃんは先住猫のおあげちゃんのことが好きでまとわりつく。

「しつこい!と叩かれているのが切ないけど面白いです。なんだかんだ言っても一緒に遊んだり寝ているので仲は悪くないです」

おあげちゃんは、先天性横隔膜ヘルニアという病気を抱えている。お迎えしてから正式な病名がつくまでいくつかの病院を巡り、治療方針で悩んで涙する日もあった。しかし、Tさんは、ころもちゃんのハチャメチャに元気で甘えん坊な姿に元気づけられたという。

「猫を飼って、娘は命の尊さを学び、家族の会話や笑顔が増えました。猫を飼わなければ私はずっとふさぎ込み、『自分は不幸だ』と思っていたはずです。今ではこんなかわいい子達と暮らせて幸せと毎日思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス