出会いは生後2カ月の譲渡会 「もう猫を迎えるのはやめよう」そう決めていた女性の心に甘えん坊な2匹が入り込んだ 「家族になれて良かった」
■5つ子の子猫
Iさんとそらくん、こむぎちゃんは生後2カ月の時に譲渡会で出会い、生後3カ月になった2021年6月26日にトライアルを開始した。
そらくん(2歳・オス)とこむぎちゃん(2歳・メス)は、2021年3月26日生まれ。生後3日目の3月29日に保護された。中学生の子どもが中心となって保護猫活動をしている「子猫園ベルソーデシャトンズ」が、ある会社の敷地で保護したという。子猫たちは5つ子、まだへその緒がついたままだった。
静岡県在住のIさんは、幼い頃からずっと保護猫と一緒に暮らしてきたが、2020年の2月に飼っていた猫が突然病気で亡くなった。
「初めて目の前で亡くなる瞬間に立ち会い、もう二度ととこんな悲しいお別れを経験したくないという思いから、猫を迎えるのはもうやめようと心に決めていました。でも、当時7歳と5歳の息子と娘が、『猫ちゃんとまた暮らしたい』という強く願っていて、私自身も猫が大好きなので、夫と相談して何度も自問自答を繰り返しました。毎日心が揺れ動きました」
そんな時、ちょうどポストに入っていた市の情報誌に、そらくんとこむぎちゃんたち5匹の子猫の写真が掲載されていた。里親募集中だった。
「思わず子どもたちに見せてしまいました。その瞬間、子供たちは『会いに行きたい』と大騒ぎ(笑)すぐに連絡を入れ、譲渡会に参加しました」
■なかなか選べず
譲渡会場には16匹の可愛い子猫がいた。
「子猫を迎える場合は2匹以上でという条件があるのですが、大事な命を2つも預かり、辛く悲しいお別れをまた2回経験すると思うと、責任もあるし覚悟が要りました。それに、みんな可愛くてなかなか決められませんでした」
娘さんのところにこむぎちゃんが寄ってきて、ずっと遊んでくれていたので、娘さんは「この子がいい!」と言った。5匹のうちの1匹、世阿弥くんは数日前に急逝してしまい、2匹ずつ譲渡したいという話があった。
「そこでもまた決められず…。息子は『みんな連れて帰りたい』と言ったのですが、さすがに難しいので、こむぎとの相性を聞き、そらを迎えることにしました。ただ、そらとこむぎは体が小さく弱かったため、体調が安定してからトライアルを始めることになりました」
■家族になれてよかった
2匹を家に連れてきてもらうと、すごく怖がって隅の方に逃げたり隠れたりしていた。
「その日の夜から少しずつ2匹で探検をはじめ、次の日にはヘソ天で寝ていました。子猫園から嫁入り道具で毛布をいただいたのですが、その匂いも落ち着くようで、よく2匹でその毛布の上でふみチュパをしていました」
施設にいた時、そらくんは「寿限無」、こむぎちゃんは「さくら」という名前だった。Iさんは、せっかく付けてもらった名前なのでそのままでもいいと思っていたが、子どもたちが前から考えていたようで、息子さんがそらくん、娘さんがこむぎちゃんの名付け親になった。
そらくんは、Iさんが今まで出会った中でナンバーワンの食いしん坊。甘えん坊でいたずらっ子だ。「寂しがり屋で、トイレやクローゼットなど家中どこにでもついてくる。もう一人子供がいるみたいだという。
「私の車の音も分かるので、帰宅すると必ずドアの前でお出迎えしてくれます。あと、小さい箱が大好きなので、よくパンパンになって入っています」
こむぎちゃんは、今まで出会った中で一番穏やかで優しい子だという。おんぶが大好きで、Iさんが座ると静かに背後から肩に両手をかけて、『おんぶして』とアピールしてくる。
「こむぎをおんぶしているとそらが嫉妬して無理やりジャンプしてくるので、毎朝背中の上で落とし合いが始まります。最近腰痛がひどくなってきましたが、そんな2匹が最高に愛しいです!」
一家揃って2匹にメロメロ。疲れていても、イライラしていても、そらくんとこむぎちゃんの姿を見ると、みんな癒され笑顔になるという。
「あの子たちに話しかける時は声のトーンも変わります。『亡くなった世阿弥くんの分まで元気でいようね』とよく話しています。猫を迎えることはすごく悩みましたが、今はそらとこむぎと家族になれて本当に良かったと思います」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)