ちょっと退屈だけど「おじさん、ありがと」 喧嘩の怪我も痛くて、台風の日に助けを求めた…推定3歳の保護猫・小鉄君の“日記”から
小鉄君は推定3歳の保護猫です。以下、小鉄君の日記より。
◇ ◇
僕は生まれた時から決まったおうちがなく、のら猫と呼ばれていました。いつもごはんを探して歩きまわる毎日でした。夏は蝉が地面に落ちていることが多くて、よく食べました。時には狩りをして、スズメやトカゲを食べることもありました。連れの猫達と食べものや彼女の取り合いで喧嘩することもありました。ある日、猫好きのおじさんが家の外で猫めしを振るまっていると言う口コミを聞き、そのおじさんの家の周りをうろついてみました。
口コミ通り、僕が行けばおいしいごはんが出てきました。時々、おじさんが僕を捕まえようとするので、嫌な予感がして僕は逃げました。だけど、台風の日、ちょっと前に他の雄猫と喧嘩をして左前足を咬まれたところが痛い上に、雨風が強くてたまらなくなり、おじさんの家の中に入れてもらいたくなりました。「おじさん!お願いします!」僕はおじさんの家の玄関前で、精一杯の大声で泣き叫びました。
おじさんは快く迎え入れてくれてお部屋を用意してくれました。おじさん、ありがと。生まれて初めてフカフカのお布団で寝ました。気持ちよかった。そして台風が過ぎ去ったお天気の日に、僕はびょういんに連れていかれて、猫エイズと猫白血病ウィルスの両方に感染しているということがわかりました。
おじさんの家には、僕の他に10匹のかわいい女の子やちっちゃい男の子がいるのですが、だから、一緒に遊ぶ事はダメと言われました。つまんない…。(獣医師からの補足説明:猫白血病ウイルスは、猫同士のグルーミングやお皿を共有しての食事で感染する場合が有ります。一方、猫エイズウイルスは、咬み合いの喧嘩では感染の危険が高まりますが、同じ部屋で暮らしているだけでは滅多に感染しません)
何日かすると、台風の直前に怪我をした足はだんだんと腫れてきて、ついには膿が出てきました。だから、またびょういんに連れていかれて、じゅういさんにその前足を触られそうになったので、僕は「やめろー!」と怒りました。
その後、お尻がチクッとしたと思ったらなんだか眠くなって、、、目が覚めると、左前足は包帯でぐるぐる巻きになっていました。そして顔の周りにもラッパみたいなものをつけられて。とっても不自由なのでごはんも食べれないし、おしっこやうんちできる気がしないので、翌日までふて寝をしていました。
おじさんは、やきもきしてちょいちょい僕の様子を見に来てくれました。しばらくふて寝していたけど、お腹がグーグー鳴ってきたので、ラッパは邪魔だったけど、頑張ってごはんを食べてみました。美味しかったー。そうしているうちに、おじさんはラッパを取り外してくれました。これでちょっとは動けるかな。でもこの前足の包帯、邪魔。歩けないよ。
今日もまたびょういんに連れていかれました。今度はピンクに白い水玉の、草間彌生さんの作品みたいなラッパをつけられました。
ちょっと違和感はあるけど、包帯ぐるぐる巻きの左前足は痛くなくなってきたので、包帯を引きちぎることはやめて、そのままにして僕の身体の一部となりました。
おしまい
おじさん、ありがと。
◇ ◇
追伸:その後、膿んでいた左前足はすっかり治って、ラッパ生活も包帯生活も卒業しました。僕は、僕の部屋以外のお部屋に行くことは許可が下りません。退屈な毎日ですが、以前のように雨に濡れたり寒かったり、食べるものがなかったり、といった苦しい時間からは解放されました。なので、ま、いっかな。
(獣医師・小宮 みぎわ)