「貝柱と貝殻って、謎の技術で超強力接着してるよね」 簡単にはずす方法に驚き「ここが一番旨いと思ってる」

 貝殻に残ってしまった貝柱を箸で取ろうとしたら取れなくて、くっついたままバラバラになってしまうことがあります。貝はツルッとしてるのに、貝柱の強力接着はなんなの!?というつぶやきがX(ツイッター)に投稿されて注目を集めました。

「前から思ってたけど貝柱と貝殻って謎の技術で超強力接着してるよね」

 投稿したのは、サイゼリヤで「ムール貝のガーリック焼き」を食べていた「dydt=x(@dydt_Nao)」さんです。画像には、虹色に光るムール貝の内側にしっかりとどまる貝柱が写っています。いかにも頑固そう。

 「ここほんと取れない」「取れないやつ」「不思議だよな」「いつも取れなくてイライラします」などと、取りたいけど取れないと思っている人が多いようです。「常々ここが一番旨いと思ってるんだよね。ちょっと筋肉質ってゆーか。」とあるように、貝柱も食べたいですよね。

 この投稿に、貝柱を簡単に取る方法が続々と寄せられました。

 まずは、サイゼリヤの従業員さんから「熱いうちに丸い方からフォークで剥がすと綺麗にとれますよ……(従業員の独り言)」「店員です笑 その貝柱は、スプーンを逆に(普段食べる方ではないほうを上)持ち、貝柱の付け根をゴシゴシしてあげるとすぐ取れます! 貝柱にもよりますが… ご参考までに!」とのコメントが。これからは貝柱ごとパクリといけますね。

 さらに「貝柱の付いている貝の裏側(貝の外側)を箸で数回擦ると簡単に取れます。どうして取れるのかは分かりませんが、割烹料理人だった父に教えてもらった技です。箸をちょっと斜めにしてゴリゴリって、7~10回くらい擦ってから貝柱を摘むとスッと取れます」という、貝の裏側を箸でこする方法が最も多く紹介されていました。箸だけでなく、別の貝殻をこすりつけたり、爪でカリカリするという人も。本職は研究者だというdydt=xさんにお話を聞きました。

──サイゼリヤで貝柱が取れなくて不思議に思われたのですね。

 貝柱が取れにくいことは何度も経験したことがありましたが、サイゼで歯を使いながら貝柱をむしって食べているときにふと繊維状の貝柱がつるつるの貝殻になぜこんなにも強くくっついているのだろうと、その原理が気になりました.通常の接着剤などではかなり苦手なシチュエーションでの接着だろうと思ったからです。

──たしかに、ツルッとしていて剥がれやすそうな気がします。「貝と接着」という論文を紹介されていましたが、見ても難しくて…。

 私も専門ではありませんが、トランスクリスタルとはポリマーなどの結晶が金属やガラスの表面と接触した状態で垂直に(柱状に)形成する現象で、私がツイートで引用した論文(松本・酒井,1976年)の著者らは貝殻とそこから垂直に伸びる貝柱の関係性からトランスクリスタルと類似のメカニズムで両者が接着されているのではないかという仮説から研究をスタートしています。結果としてはトランスクリスタルと全く同じ原理ではなかったのですが、貝殻と貝柱の間に結晶層が介在して接着強度を高めているという発見が述べられています。

──やっぱり難しいです…。でも、貝柱を簡単に外せる方法が集まっていて興味深かったです。特に、箸でこする方法をやってみたいと思いました。

 同じく貝殻の背面を擦るという方法は試してみたいと思います。擦ることによる振動や衝撃によって結晶層を局所的に破壊しているということなのかなと個人的には思っています。また貝殻がはじけ飛ぶくらい熱すると取れるという料理人の方からのコメントもありました。こちらは熱によって結晶層を変性させるアプローチと考えていて、これも理にかなってそうだなと思いました。

──なるほど、ありそうですね。dydt=xさんは、どんな研究をされているのですか?

 専門はこのツイートとは全然違って、電気や磁気といった分野の研究をしていますが、自然科学全般に興味をもっています。

──今回は、貝柱の接着が話題になりました。

 何気ないツイートがバズって正直びっくりしました。みんな経験はあるけど、その原理、何でそうなっているのかまでは考えたことがなかったって人が多くて、共感していただいたのかなと思っています。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)

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