山に捨てられ、足をケガ「助けて」と現れた猫を保護 今では先住猫2匹に囲まれ幸せに暮らす

佐賀県佐賀市三瀬村にあるヴィンテージラグ、キルトと猫雑貨の店「猫ノ途中」。店主でデザイナーの本岡毬穗(まりほ)さん(50)は店から少し離れた山中の自宅で「ノラ」(メス、7歳)「イリ」(オス、6歳)「ポケ」(オス、10歳)の3匹の保護猫と一緒に暮らしている。特にポケは元飼い主によって山に遺棄された辛い過去を持ち、助けを求めてさまよっているところを本岡さんに保護された。店には3匹の中で接客上手のイリが出勤。看板猫を務めている。3匹との出会いなどについて本岡さんに話を聞いた。

本岡さん 元々は犬派だった私が、猫なしでは生きられなくなってしまったのは「ネェネ」(メス、6ヶ月で没)との出会いがきっかけでした。7年前、自宅の前にちょこんと日中、突然現れたんです。まだ生後4、5ヶ月くらいでした。おそらく捨てられたんだと思います。保護して病院へ連れていくと、重度の肺炎と診断され、「助かる見込みはないだろう」とのこと。それからわずか1ヶ月で、ネェネは虹の橋を渡りました。

ネェネはトイレのとき猫砂をかく姿がおしとやかで、常に私に寄り添ってくれた、とてもやさしい子でした。しばらく悲しみに暮れていたのですが、半年が経ったころ、里親を探されているボランティアさんを通じて、保護猫の黒白の「ノラ」、そして、3ヶ月後に茶白の「イリ」の2匹とのご縁をいただき、家族に迎え入れました。ノラは面倒見がよく、イリがやってくると、まるでお母さんのようにイリを可愛がり、幼かったイリを育ててくれました。

それから2年後の2019年9月。今度は自宅の前にキジ白の成猫が現れました。体は痩せ細り、左後脚を見ると骨が見えるほどの怪我をしていました。私に「助けて」といわんばかりで「にゃー」と訴えかけてきたんです。それが「ポケ」(オス、10歳)です。

すぐ病院へ連れていき、怪我の治療をしたあと、SNSにポケのことをアップしたんです。すると、たまたま私のその投稿を見た近隣に住む知人から「この子の飼い主を知っている」と連絡が入りました。話を総合すると、元飼い主はこの子と6年間も一緒に暮らしていたのに、事情があって飼えなくなり、別の人に譲渡。しかし、その人も飼えなくなって山に遺棄したようなんです。

ポケを保護したとき、獣医師さんがいうには「昆虫や小動物などを食べた形跡はない」とのこと。6年間も家猫として不自由なく暮らしてきたのですから、山に捨てられるなんて想像もしていなかったでしょう。何日もろくに食べるものもなく、ボロボロの姿で私の前に現れ、助けを求めてきたポケを、私はただただ「辛かったね」「もう大丈夫だよ」と抱きしめてあげることしかできませんでした。

それから4年が経ったいま、ポケの体重は当時の5キロから9キロまで増え、逆にダイエットをしないといけないほどに(笑)。先住のノラ&イリとも少しずつ距離を縮め、仲良しになりました。3匹の中では年上なので、今は頼もしいおじさんのような存在です。 

この店をオープンしたのは2021年4月。猫好きのお客さんと話をするうちに気づいたことがありました。それは意外にも一般の方は、猫を家族に迎えるとき、保護猫団体や保健所から譲渡してもらう選択肢があることをあまり知らない、ということでした。

保護猫活動をされている方々から生体販売や殺処分の現実などを聞くにつれ、猫の幸せのために、私にも何かできることがあるはずと思い、それで始めたのが猫雑貨の作家さんなどを集めてチャリティイベントを定期的に主催することと、地域の店が掲載されたパンフレットの制作でした。広告掲載していただいたり、配布店には募金箱を設置してもらったりして、集まったお金は微力ですが、猫の保護活動のために役立てています。

ポケは、車に乗る=知らないところへ連れていかれ辛い目にあう、という過去の記憶が染み付いているのか、車に乗せようとすると失禁してしまうほど怖がるため、店には連れてこられないんです。

3匹のうち、店の看板猫を務めているのがイリです。性格はびびりですが、この人は猫好きそうだなとわかると、そろっと近づいていき、おしりを差し出し「ポンポンして」と(笑)。それで軽くポンポンしてあげると、今度はコロンと横になってお腹をみせるのがイリの接客スタイルです。

店では、トルコ、アフガニスタン、ペルーなど海外から直輸入した手織りのヴィンテージラグや手刺繍のインドキルト、猫雑貨などを扱っています。ラグが毛だらけにならないかと心配される人もおられますが、猫飼いさんは「そんなの当たり前」と気にされません。気にされる方には毛が強力にとれるアイテムを紹介しています(笑)。

うちの子もお客さんの子も多くはそうなんですけど、猫ってなぜかヴィンテージものの匂いや質感が好きみたいで、気持ちよさそうに寝ていることが多いです。手仕事によって生み出された色とりどりの美しいラグやキルトは、この世に2つと存在せず、インテリアとして部屋におくだけでワクワクした気分にさせてくれます。色鮮やかなラグと猫って意外に相性いいんですよ。

【店名】「猫ノ途中」

【住所】佐賀県佐賀市三瀬村藤原3813-3

(まいどなニュース特約・西松 宏)

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