33歳女性「借金返済が月11万円、貯金がありません」…FPが訴える、今“最優先”にすべきこと
「お金がなかなか貯まらない」というお悩みは、若い女性からのご相談として受けることが多くあります。モノやサービスが潤沢な今の世の中、お金があれば欲しいものが簡単に手に入るという誘惑が多いのも事実で、つい衝動買いしてしまったという経験は誰にでもあると思われます。
ただし、誘惑に任せて「欲しくなったら買う」を繰り返していると、お金は貯まるどころか減る一方、そして足りなくなると借りるという手段を使い始めると、そこに計画性が無ければどんどん自分の首を絞めることになる可能性も高くなります。
また、手元資金を増やすために、NISA等の制度を使った投資運用を取り入れるのは有効な手段のひとつでもありますが、そもそも投資運用は余裕資金で行うものという大前提を忘れてはいけません。
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◆相談者プロフィール
33歳独身女性、会社員(総務担当の事務職)
・年収:350万円
・預貯金:なし
・月々の支出:23万円(うち負債返済11万円)
・同棲中のパートナーがおり、家賃は折半
◆相談内容
預貯金がなかなか貯まりません。毎月、収入に比べて支出が大きいので、都度カードでお金を借りていて負債の返済もあり、完全に赤字生活です。収入のうちの一部でもNISAを使って投資運用すれば、手元のお金が増えて貯まっていくのではないかと思い、始めてみようかとも考えています。また、病気やケガの際の備えとして保険も加入すべきかと思っていますが、そもそも保険料を払う余裕もないので、どうすればよいのかと悩んでいます。
■毎月の収支が赤字だから、預貯金が貯まらない
相談者さんの預貯金が貯まらない理由は非常にシンプルで、毎月の収支が赤字という現状にあります。まずは具体的に毎月の支出としてどのような項目があるのか?…について、内容の詳細についての棚卸から始めましょう。
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▽相談者さんのケース
・月々の手取り:20万円(別途、年2回のボーナスあり)
・月々の支出:23万円
[支出の内訳]
家賃(パートナーと折半した負担分):5万円
生活費(食費、通信費など):4万円
クレジットカード決済による雑費(使途不明も含む):3万円
キャッシングの返済:11万円
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…毎月の赤字分をボーナスで穴埋めしているとのことですが、何よりもまずは「11万円」ものキャッシングの返済が、気になる項目です。
■赤字の穴埋めのため、キャッシングやリボ払いを利用し続け…
相談者さんは約8年に渡って、毎月の赤字の穴埋めのためにキャッシングやリボ払いを利用し続けており、気がつけば負債総額250万円になっていました。毎月11万円の返済をしているものの、一向に負債が減らず、むしろ増えていく状況をどうにもできず、そのまま過ごしてきたとのこと。
今の時代、キャッシングやリボ払いは、誰でも簡単に利用できる環境になってきていると感じます。ゆえに、手元資金が不足した際に「すぐ返せるから」と、気軽に利用してしまうこともあるかもしれません。また、それ自体の仕組みをしっかり理解できていないケースもあるでしょう。
ですが、計画性なく安易に利用することで、相談者さんのように長年に渡って利用を繰り返し、返済額も減るどころか膨らんでいってしまう恐ろしさも存在します。
ここで、キャッシングとリボ払いの仕組みを確認しておきましょう。
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【キャッシング】
クレジットカードに付帯されている現金借り入れサービス
・即日からお金を借りることができ、手続も簡単
・カードローンより借り入れできる枠は小さいが金利は高い(年率15%前後)
【リボ払い】
リボルビング払いの略で、クレジットカードの支払い方式のひとつ。利用金額や件数を問わず、毎月定額を返済する方法
・毎月一定額を返済するため、管理しやすい
・支払残高と支払期間に応じた利息が発生する
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…キャッシングは金利の高さに注意が必要であり、リボ払いは仕組み上、返済の負担を感じにくく気がつけば支払残高が増えて負債が膨らむことにつながる危険性があります。
相談者さんのケースでは、負債を抱え始めてから今までの間、収入も大きく変わらない状況の中で「欲しいものがあったら買う」という欲求を抑えることなく、お金が不足したら簡単な方法でお金を借りるという習慣がついてしまっていたようです。まさに、気がついたら負債が膨らんでおり、高額の返済に追われる状況に陥ってしまっていました。
■何よりも負債をゼロにすることを最優先に
相談者さんの今の状況で、第一に何をすべきかと言えば、貯蓄でも投資運用でも保険加入でもありません。今ある250万円の負債をゼロにする方法を考え、早急にアクションを起こすことです。
この先も、今の生活パターンのままで進んでしまうと、明るい将来は期待できません。返済のために今の収入を増やすことも考えたいですが、急に大きく増やすことはなかなか難しいかもしれません。
状況に応じて、例えば家族や同居のパートナーを一時的に頼り、自分の収入のすべてを返済に充てるなど計画性を持って現状を脱する策を相談することも一案です。
また、自己破産や任意整理、個人再生といった法的手段の利用も検討材料のひとつです。このような手段を使うと、今後の相談者さんの信用情報に傷がついてしまうことは避けられませんが、相談者さんにとって必要なのは、今の状況を断ち切り大きく変えていく勇気を持つことです。
できるだけ早く決断し、負債をゼロにすることを最優先に取り組むことができれば、将来に向けてこれまで以上に新しい世界が見えてくるのは間違いありません。
■仕組みづくりができれば、お金は貯められる
そもそもの話に戻りますが、相談者さんが毎月一定の負債の返済をしなければならない状況に陥ってしまったのは、お金の使い方の仕組みづくりができていなかったことが原因のひとつと考えられます。
基本的な考え方として、毎月のお給料が入ってきたら「使うお金」「備えるお金」「貯め・増やすお金」に、まずは色分けをすることが大切です。
おそらく相談者さんはこれまで、お給料を受け取ったらすべて「使うお金」にしてしまい、さらに不足分は借りて、日々の生活を送っていたのではないでしょうか。
人間は感情が大きく支配する生き物でもあるので、「お金を貯めよう!」という気持ちがあっても、目の前に欲しいモノやサービスがあるとつい買ってしまったということは誰にでも考えられることなのです。
そのため、なるべくその状況が常態化しないようにする策として、お金の色分けが自動的にできる仕組みづくりが有効になります。
例えば「貯め・増やすお金」は、給与天引きで毎月自動的に一定額を簡単には引き出せない口座などに動かしてしまうという方法もあるでしょう。
■今さら悔やんでも仕方ない…早急に現状を変える努力を
これまで相談者さんが上手にお金と向き合うことができず、負債も抱えてしまったことを今さら悔んでも仕方ありません。
それよりも、これから先のことを考えて早急に現状を変える努力をすること。そして負債が無くなった際には、ぜひそこから先の将来に向けて、まずはお金の色分けをしっかりと考え実践していきましょう。また、NISAなどの制度を使った投資運用でお金を増やしていくことや病気ケガへの備えなども含め、お金まわりの環境を整えることも、私たちFPと一緒に考えていただけたら嬉しいです。
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◆福永涼子(ふくなが・りょうこ)FPオフィス「あしたば」のファイナンシャルプランナー(CFP)。2001年にFP資格取得しFP仲間と共に子どもの金融教育を推進。その後、銀行での運用相談業務を経て現職に至る。自身の経験もふまえた「働く女性や母親の視点」でのお金に関するアドバイス&サポートには定評がある。年間約250件の個別相談を実施。