画像生成AIで有名アニメ風のミュージックビデオを作ってみたら 予算ほぼゼロで本格的仕上がりに!? インディーズバンドの試み
画像生成AI「Midjourney」で制作された、とあるインディーズバンドのミュージックビデオ(MV)が「かっこいい」「絵師は誰?」「ツッコミどころがありすぎて最高」「近い将来こういうのが主流になるのかも」と注目を集めています。絵が得意なわけでもないメンバーが、100時間以上かけて完成させた約4分間の“アニメ風”の作品。担当したベースの松永健太さん(@kentamatsunaga)に制作エピソードを聞いてみました。
5人組の「銀幕一楼とTIMECAFE」(@Ginmaku_Jimu)。昭和歌謡のエッセンスを取り入れた楽曲を得意とする、“踊れるエンターテインメントバンド”です。
楽曲「愛をさがしだせ!」はもともと「アニソンみたいな曲」をコンセプトに作られたといい、レコーディング自体は2023年春に行われました。メンバー間でジャケットのデザインについて意見を交わす中で出てきたのが「『シティハンター』みたいなアニメ風のイラストがいい」というアイデア。以前からAIに関心を持っていた松永さんは「じゃあいっそAIを使って全編アニメっぽいMVも作ってしまおう」と思いつき、独学で挑戦することにしました。
Midjourneyはテキストを打ち込むことで、高品質な画像を生成するAIです。松永さんはメンバーそれぞれの特徴を反映させた主要キャラクター5人を生成し、歌の展開に合わせて大量のイラストをどんどん切り替えていくことで、本格的なアニメ作品と見紛うクオリティに仕上げました。
「制作にかかった時間は100時間以上ですが、事前の勉強まで含めると150時間くらいは費やしたと思います」と松永さん。「絵を描けない僕がやっても、テキストを打ち込むとそれっぽい絵がどんどん出てくるのが面白かったですね。ただ、イメージに近い絵になるまで、構図やポーズを決めて100枚くらい作ることもありました」
特に難しかったのは「手の指」だといい、「武器などを持たせると、途端に変になるんです」と明かします。実際、YouTubeで公開されたMVをよく見ると、キャラクターの指の本数がおかしいシーンも…。また、「似た顔が作りにくい顔」というものもあるらしく、そうなると複数のイラストでキャラクターに一貫性を持たせられないので、一から作り直したりもしたそうです。
松永さんは「AI生成で思い通りの絵に近づけていく作業は、当たるかどうかわからないガチャを延々と回し続けるような感覚でした」と振り返ります。「でもそれがまた楽しいんですよ。やっていると、時間がどんどん溶けていきました」
完成したMVは、それこそ「シティハンター」のような世界観から始まりますが、途中でいきなり巨大なドラゴンや異形のモンスターが現れるなど、謎めいた展開に。キャラクターたちの複雑な過去を思わせるイメージも随所に挿入され、“それっぽい”奥行きを感じさせます。
松永さんは「『存在しないアニメ』がコンセプトですが、ストーリーもちゃんと考えて作りました。いろいろ想像しながら見ていただけると嬉しいです」と話します。「AIの進化のスピードを見ていると、画像生成もひとつの文化になっていく予感があります。今回のMV制作は予算もほぼかかっていないので、今後この手法はどんどん広がっていくかもしれませんね」
ちなみにMVの完成度の自己評価を聞くと、「完全に思い通りにはなっていないので80点くらい」とのことでした。
【銀幕一楼とTIMECAFE】@Ginmaku_Jimu
(まいどなニュース・黒川 裕生)