「タクシーの行灯の点滅は緊急事態?」→110番「はい緊急です!」警察と連携して追尾する実況動画が話題に で、どうなった?
タクシーやバスなどの旅客運送車両には、車内で起きた非常事態を周囲に知らせる「警告灯」などが設置されています。
9月のある日の帰宅時、神戸市内にある学習塾『HI-FIVE』の代表であり、車やバイク、カメラなどの趣味のYouTubeチャンネルを運営する、かわけん(@kawakenda4)さんは、普段からよく走行する国道を自動車で走行していました。その際、前を走るタクシーの行灯(あんどん)の光が、赤く点滅していることに気づきます。
■意外と知らない「タクシーの警告灯」
自身の祖父がタクシードライバーだったこと。そして、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に描かれていたのを覚えていたかわけんさんは、「タクシーの行灯が点滅しているのは非常時の警告」と察知。誤作動だったら乗客に迷惑がかかる…と迷ったものの、万が一を考え、自車が完全に停車している信号待ちのタイミングで110番に通報しました。
(※走行中のスマホ操作は違反ですが、自動車が完全に停止している時は道路交通法違反の対象ではありません)
その後、Bluetoothでカーナビと連動させているスマホのハンズフリー機能を使い、走行中にスマホ画面を注視しないようにスピーカーで通話。オペレーターに状況を伝えながら、制限速度と十分な車間距離を保ってタクシーを追尾。その際のドライブレコーダー映像を自身のYouTubeチャンネル(@kawakenda4)に投稿しました。
そして動画の最後、ついに警察官が到着。通報から警官の到着まで、わずか5分25秒!手に汗握るその追尾実況動画は大きな話題となり、約273万以上の再生回数を記録しました。
■「今、警察官が向かってます。危なくなければ追尾してもらえますか?」
◇ 以下、YouTube動画のやり取りから抜粋(敬称略)◇
110番:緊急通報110番、事件ですか事故ですか?
かわけん:事件、やね。タクシーの行灯(あんどん)の点滅って緊急でしたっけ?
110番:緊急です。(警察官が)早急に行きますんで、ちょっと教えてくださいね。見たのは何分くらい前ですか?
かわけん:今、目の前を走ってます。
110番:わかりました。今、(かわけんさんのスマホの)GPS反応があって、〇号線ですかね?
かわけん:はい。〇号線、〇〇駅通過、〇〇方面。
110番:わかりました。ちょっと見てもらってもいいですかね。
<この後、タクシーのナンバーや車体の色、車種、そして各所の目印と共に走行状況をオペレーターに伝えるかわけんさん>
110番:了解しました。今、警察官が同時並行で向かってますんで、ゆっくり着いて行ってもらえますか?危なくなければ、ですけど。危なかったら離れてくださいね。車内の状況は見えますか?
かわけん:ちょっと見えへんねんけど…お客さんは乗ったはりますわ。
110番:(客が)特に暴れてるような、そんな様子はないですか?
かわけん:ないですね。
110番:行灯は何色に点滅してますか?
かわけん:赤色ですね。
110番:わかりました。進行方向で警察官が待ち受けてますんで、このまま(状況を)教えてください。
◇ ◇
その後、赤信号で停車していたタクシーの前に警察官が到着。タクシーの運転手に警官が声をかけたのを確認し、続いてパトカーが到着したことを電話口のオペレーターに伝えると、かわけんさんは速やかにその場を離れました。
警察の素早い対応はもちろん、安全に走行しながらタクシーを追尾し、オペレーターに詳細を的確に伝え続けたかわけんさん。その冷静さに驚く声が殺到しました。
果たして、タクシーは無事だったのか?
手に汗握る実況と事の顛末、そして、今回の動画を投稿した理由について、かわけんさんにお話を聞きました。
■もしもの場合は一刻を争うから
ーーこれまでにもタクシーの警告灯をご覧になったことがあったのですか?
「この時が初めてでした。祖父がタクシードライバーだったことと、漫画の『こち亀』で紹介されていたのですぐに気づきました。誤作動の場合もよくある、と聞いていたのですが、万が一の場合を考え、110番通報するに越したことはないだろうと判断しました」
ーー追尾中の実況が的確で、走行位置なども非常にわかりやすかったです。現場はよく走行される場所なのですか?
「普段からよく利用しています。脇道や交差点がほとんどない区間だということも知っていたので、説明しやすかったのだと思います」
ーーオペレーターさんとのやり取りの中で、事件の顛末は知らせなくていい、と返答された理由は?
「特に深くは考えていませんでした。タクシーに声をかけた警察官の雰囲気からも、事件性はそこまでなさそうだったことと、あとは警察のお仕事ですから、任せておけばいいかな、と」
ーーでは、「誤作動」という顛末はどのように知ったのですか?
「実はあの場所は、本来自分が曲がるところを通り過ぎていたため、あの後Uターンして、反対車線から現場を確認したんです。すると、パトカーだけが止まっており、タクシーはもういなかったので、事件ではなく誤作動だろうと判断しました。物騒な事件も多いですから、事件ではなかったようで、ホッとしました。110番通報も不要だったのかな、という思いも一瞬頭をよぎりましたが、もしもの場合は一刻を争うでしょうし、通報して正解だったと思っています」
■もし凶悪事件だったら…実はかなりテンパってました
ーー事件だった場合、巻き込まれる危険性などを考えると、警官が到着したのを確認した段階で、速やかに立ち去られたのも正解でしたね。
「それがすぐに立ち去った最大の理由でした。もし凶悪犯が乗っていたら…と考えると怖いですよね。それもあって、横に並んで並走するのさえ躊躇しました。私が落ち着いて冷静に話している、というコメントも多かったのですが、実はかなりテンパってドキドキしてました。テレビで見た『交通警察24時』のパトカー無線の様子を思い出して、何を伝えたらいいんだろう、と考えるのと同時に、何があっても今自分が事故を起こすことだけは避けなければ!と考えた結果、普段以上に周囲を確認しながら運転していたのが良かったのだろうと思います」
ーー皆さんご無事で良かったです!ちなみに、今回のドラレコ映像をYouTubeに投稿された理由は?
「タクシーやバスの非常灯について、もっと周知されて欲しいという思いからでした。実際、多くの方が知らない、とコメントされていたのは意外でした。110番通報にしても、なかなか練習する機会もないですし、免許更新の時などに全ドライバーが確認できるといいなと思います。
改めて今回は、110番のオペレーターが的確に指示をしてくれたこと、また、警官が現場に到着するまで約5分と、非常に早かったことにも驚きました。こんな的確に説明できない、というコメントも多かったですが、動画でもわかる通り、オペレーターさんはGPSでも位置確認できますし、『〇〇方面に向かってる途中』とか、目印を伝えるだけでも十分だと思います。これについても、警察からガイドラインみたいなものがあるといいですね」
■現役のタクシー運転手や元警官から称賛の声も
事の顛末も含め、かわけんさんは今回の詳細を自身のnoteにも投稿されています。
YouTubeのコメント欄には、現役のタクシー運転手さんや元警察官の方からも、「物騒な世の中ですし、通報して頂けるとありがたい」「こうした方の協力あっての警察活動であり、円滑適正な初動捜査となります。心強いです」という、賞賛の声も多く寄せられました。
元タクシー運転手さんのコメントによると、点滅している時に限らず、タクシーの行灯の光が「赤い」場合も、点滅時と同じく、通報などの配慮が必要なのだそうです。また、路線バスの場合は、「行先表示が『SOS』『緊急事態発生』『警察へ通報して下さい』などに変わります」とのこと。見かけた時は速やかに通報して良いそうです。
今回の動画を投稿したかわけんさんは、不登校や発達障害、肢体不自由などの理由から、現在の社会の枠組みでは「学びたい」という機会が失われがちな方に向けた学習塾「HI-FIVE」を運営しています。
「今回のタクシーの行灯と同様に、『知らなかっただけで、知ってたら何かしら協力できたのに!』って方も多いと思うんです。私たち自身や家族も将来、障害者になるかもしれないし不登校になるかもしれない。そういう時に、今回のタクシーじゃないですが、『SOS』を出せる人、受け取れる人が増えたらいいなと思っています」(かわけんさん)
※今回の通報と追尾は、通報者であるかわけんさんが自身と周囲の安全を十分に確保した上で、警察のオペレーターの指示に従い、安全に行っています。走行中のスマホ/携帯電話の画面操作は道路交通法違反です。また、無理な追尾なども大変危険なのでおやめください。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)