「白地に青の左向き矢印」は一方通行じゃありません 「左折可」交差点、29道県でゼロなのに岡山県はなぜか全国2位の42カ所も
交差点近くで目にする白地に青の左向き矢印。正面の信号に関わらず常時左折してもよい「左折可」の標示板だ。2022年度末の時点で、岡山県内の42交差点にあり、県民にはおなじみの存在だが、警察庁によると広島、香川など29道県には一つもなく、全国でも260交差点にしかないというレアな規制という。青地に白矢印の「一方通行」の標識と見間違う県外のドライバーもいるとか。なぜ岡山県が沖縄県に次ぐ全国2位の「左折可」大国なのか、秋の交通安全県民運動(21~30日)に合わせ、調べてみた。
岡山市役所(同市北区大供)のすぐ北にある大供交差点。東西に走る県道岡山児島線(旧国道2号)とJR岡山駅前から南下する市役所筋の幹線道路2本に市道2本が加わった県内有数の複雑な交差点だ。南東を除く3方の角に交通島で区切られた左折専用レーンが設置され、「左折可」となっている。北西角で見ていると、倉敷方面から岡山駅方面に左折する車がひっきりなしに通る。もし赤信号で止めたら大渋滞は必至だろう。
そもそも「左折可」とは何なのか。岡山県警交通規制課によると、交通の円滑を図る規制の一つで、警察庁の交通規制基準に沿って安全を確保できる構造を前提に決めている。具体的には、道が広くて交通量も多い岡山市中心部や倉敷市水島地区に多いと教えてくれた。
■広い用地があったから?
道路の構造が重要ということで、岡山市道路計画課に聞いてみた。「古いことは分からない」としながらも、大供、柳川、大雲寺など岡山市中心部の主要交差点は、戦災復興計画で当初ロータリー式の交差点が計画されたため、円形の広い用地が確保された歴史があるという。深井真介課長は「構造上、独立した左折レーンを造りやすかったことはあるだろう」と説明する。
自動車にとっては、いつでも曲がれて都合のよい「左折可」。だが歩行者や自転車にとってはどうか。交通島までは横断歩道や自転車横断帯が設けられ、左折する車は横断者がいれば止まるのがルール。先ほどの大供交差点には歩行者や自転車に車両の接近を知らせる電光掲示板も設置され、注意しながら通行する姿が見られた。
実は大供交差点も最初から「左折可」だったわけではない。人身事故が絶えず、県内交差点で2年連続最悪を記録したこともあって、09年に改良されて現在の形になった。南東側の交通島を撤去して歩道を広げたり、北西側は左折カーブをきつくして車のスピードを落とさせたり、歩行者や自転車との事故が多発していた自動車の左折時の安全対策を進める一方、スムーズな通行を図るために南東側を除く3方向は「左折可」にした。
その結果、06年26件、07年29件あった人身事故は09年に19件、22年は7件にまで減った。7件のうち「左折可」に関係する事故は左折する自動車と直進してきた自転車が接触した1件のみとなっている。
■全国最多は沖縄県
全国的に「左折可」の交差点は、沖縄県の57が最多。3位以下は東京都33、奈良県23、長野県14と続く。ただ、奈良県が1959年から実施してきた県庁東交差点の「左折可」を今年3月にやめて左折矢印信号に切り替えるなど、21年度末より9カ所減った。一方、岡山県警交通規制課によると、この5年間に廃止はなく、むしろ2020年に岡山桃太郎空港に近い県道妹尾御津線の交差点(岡山市北区日応寺)に新設している。吉本和人次長は「岡山県に『左折可』が多い理由は分からないが、規制は交通の安全と円滑を確保するもの。実態に応じてきめ細かく対応してきた結果では」と話す。
左折可の交差点で注意するポイントも聞いた。「車はすぐ止まれる速度で通行するとともに、歩行者は優先でも安全を確認してほしい」と吉本次長。また、車道左端を走ることになっている自転車は、左折専用レーンから無理に直進レーンに移らず、自転車横断帯のところまで進んで交通島に渡るようにしてほしいということだった。今回の県民運動では、横断歩行者優先の徹底、運転中のスマートフォン使用禁止の徹底、スピードダウンの励行、自転車の安全利用とヘルメット着用に向けた理解の促進-の4点が重点に挙げられている。それぞれがルールを守ることで、自身を守るだけでなく、交通の円滑にもつながることを肝に銘じたい。
(まいどなニュース/山陽新聞)