阪神なのに、なぜジャイアンツカラー? オレンジ色車両があふれる謎 ファン待望「タイガース塗装」電車は存在するのか
プロ野球チーム、阪神タイガースが9月14日、18年ぶりにセ・リーグ「アレ(優勝)」を果たしました。ところで、阪神には黄色と黒色の虎色塗装の電車はあるのでしょうか。また、全国を見渡して虎色列車はあるのでしょうか。
■黄色と黒色からは縁遠く
ご承知のとおり、阪神タイガースは80年以上の歴史を持つ人気球団ですが、阪神電車の塗装と阪神タイガースのカラー(黄色と黒色)は縁遠いものでした。
阪神電車の塗装は大きく準急以上に用いられる急行系電車と普通に用いられる普通系電車で異なります。高度経済成長期からの標準塗装では急行系電車の塗装はクリーム色と赤色、普通系電車の塗装はクリーム色と青色でした。
転機になったのは1995年の阪神・淡路大震災。震災で廃車になった車両の代替として新車が製造されることに。新型普通系電車の5500系は震災を乗り越えての再出発という意味を込めて、上部は水色(アレグロブルー)、下部は白色(シルキーグレー)になりました。
そして、2001年に37年ぶりのクロスシートを装備した急行系電車9300系がデビュー。塗装も上部はオレンジ色(ブレストオレンジ)、下部は白色(シルキーベージュ)になりました。この塗装は5500系に対応する暖色系の明るい塗装として採用され、「急行系は暖色系」という伝統を引き継ぎつつ、新時代の阪神をイメージしたものです。
以降、9300系の先輩にあたる8000系も新塗装に変更されました。また、阪神なんば線でよく見かける1000系もオレンジ色が入っています。
このような経緯を経て急行系の新塗装が決まったわけですが、現在も沿線では「ライバルチームの巨人に似ている」という声を聞きます。ただ、従来の赤色をチームカラーに持つ広島もあるのですが…。
■実は2両だけある虎色電車
そして、2020年6月、武庫川線に阪神ファン待望の黄色と黒色の電車がデビューしました。その名も「タイガース号」といい、5500系を改造しました。この電車は阪神タイガースのチームカラーを強く意識し、車内のドア部も黄色もしくは黒色になっています。
「タイガース号」は1編成2両のみ。武庫川線では他に「トラッキー号」「甲子園号」「TORACO号」があり、確実に「タイガース号」に乗れるわけではありません。しかし、他の車両も甲子園球場や阪神タイガースを強く意識しているため、乗り比べるのもおもしろいと思います。
なお、9月29日~10月1日にかけて「タイガース号」「甲子園号」2本連結した4両編成で大阪梅田~高速神戸間を走ります。詳細なダイヤは阪神電車ホームページをご覧ください。
■虎色の電車は宇都宮にもあった?
阪神以外で黄色と黒色の虎色電車はあるのでしょうか。実は2023年8月26日に開業した次世代型路面電車「宇都宮芳賀ライトレール線」(宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地)の車両が虎色電車なのです。
ただし、塗装のイメージは「虎」ではなく「稲妻」とのこと。宇都宮市は「雷都(らいと)」と呼ばれ、雷の発生が多いところで知られています。同市では雷が雨を降らせ、稲穂を育てることから、市はPRに雷を積極的に活用しています。
このように、宇都宮の路面電車の塗装は阪神タイガースや虎にちなんだものではありません。とはいえ、虎をイメージしつつ、ポストシーズンでの阪神の勝利を祈願しながら、宇都宮芳賀ライトレール線に乗車するのもおもしろいのではないでしょうか。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)