「健康食品」ってホントに体に良いの? 医薬品ではないけれど…注意すべきポイントを医師が解説

 「体に良い」とのイメージが強調される一方で、科学的根拠が明らかでない物もある「健康食品」の安全性について学ぶ講演会を、京都府保険医協会が同協会(京都市中京区)で開いた。医師で内閣府食品安全委員会委員の脇昌子さん(内分泌・代謝内科)が講演し、注意するポイントを解説した。

 医薬品は「疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされるもの」で、医薬部外品も含めて医薬品医療機器等法の規制を受ける。一方、食品は、法に基づいて栄養成分や機能性を表示できる「特定保健用食品(トクホ)」「機能性表示食品」「栄養機能食品」の他に、機能性を表示できないサプリメントや栄養補助食品、自然食品、ダイエット食品などと称する、いわゆる「健康食品」がある。

 脇さんは健康食品について「健康にいいというイメージを(私たちが)受けるが、実ははっきり言っていない」と広告や表示の問題点を指摘。健康食品は「法的規定はなく、成分量や品質は製造者の自己責任で、取る(食べる)かどうかは消費者自身の自己選択と自己責任。有害事象も有効性も消費者の自己評価」とし、科学的データに基づき認められ法律で品質管理が定められている医薬品との違いを示した。

■見えにくい被害

 健康食品は、健康の維持・増進に役立つことをうたって販売され、そのような効果を期待して取られているが、健康被害が生じても、それは自分の責任になってしまう。

 健康食品が原因と疑われる健康被害の実態や広がりは見えにくいが、東京都の調査で約4%の人に経験があった。保健所などへの報告によると、発疹などのアレルギー症状や下痢、腹痛などの消化器の症状、むくみ、頭痛、めまいの他、肝障害もあった。「肝障害は分かりにくい」といい、実際の被害は多いことを示唆した。

 健康食品の安全性の見極めについて、自らが座長としてまとめた食品安全委員会の「『健康食品』についての19のメッセージ」から説明。肝臓に良いとされるウコンの過剰摂取による肝障害などの事例や、ベータカロテンの長期摂取による喫煙者の肺がんリスク上昇▽ビタミンDサプリメントは心血管病を減らさない▽カルシウムサプリメントによる心筋梗塞や脳卒中の増加-などの研究結果を紹介した。

 ビタミンやミネラルのサプリメントによる摂取について、手軽に取れることから、毒性の強いセレンや体内に蓄積しやすい鉄、ビタミンAなどの過剰摂取のリスクも指摘。「サプリメントで良くしようとするよりも、食事を修正した方が安全」とした。サプリメントなどの摂取は食品と比べて成分の血中濃度が急上昇するため有害事象につながる可能性もあるといい、「自己判断せず、医師、薬剤師、管理栄養士、サプリメントアドバイザリースタッフなど専門家からアドバイスを受けてほしい」と強調した。

■対象は健康な成人

 さらに、トクホや機能性表示食品も含め、評価のための研究は「健康な成人」が対象であり、「高齢者や子ども、妊婦、病気のある人への安全性は分からない。健康食品を取ることには注意が必要」と指摘。食品による健康被害は原因食材が特定しにくく、「不調があれば(健康食品を)すぐにやめてほしい」とした。特にダイエット食品について、医薬品成分などを添加した違法な物による重篤な肝障害や死亡事例も報告されており、注意を求めた。

■購買心あおる商法

 科学的研究に基づかない「体験談」や、「初回限定」「時間限定」などの購買心をあおる売り方についても問題とした。ネットも不確かな情報があふれており、「確かな情報を自分で確かめてほしい」と国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所や食品安全委員会などのホームページを紹介した。

 元気で長生きはみんなの願いだが、「単独の食品で健康寿命の延伸の効果が実証されている物はない」。健康食品に頼るのではなく、適度な運動▽家族で食卓を囲むなどのコミュニケーションも含めた健全な食生活▽十分な休養と睡眠-を勧めた。

「健康食品」についての19のメッセージ(食品安全委員会)

 (1)「食品」でも安全とは限りません。

 (2)「食品」だからたくさん摂(と)っても大丈夫と考えてはいけません。

 (3)同じ食品や食品成分を長く続けて摂った場合の安全性は正確にはわかっていません。

 (4)「健康食品」として販売されているからといって安全ということではありません。

 (5)「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は「安全」を連想させますが、科学的には「安全」を意味するものではありません。

 (6)「健康食品」として販売されている「無承認無許可医薬品」に注意してください。

 (7)通常の食品と異なる形態の「健康食品」に注意してください。

 (8)ビタミンやミネラルのサプリメントによる過剰摂取のリスクに注意してください。

 (9)「健康食品」は、医薬品並みの品質管理がなされているものではありません。

(10)「健康食品」は、多くの場合が「健康な成人」を対象にしています。高齢者、子ども、妊婦、病気の人が「健康食品」を摂ることには注意が必要です。

(11)病気の人が摂るとかえって病状を悪化させる「健康食品」があります。

(12)治療のため医薬品を服用している場合は「健康食品」を併せて摂ることについて医師・薬剤師のアドバイスを受けてください。

(13)「健康食品」は薬の代わりにはならないので医薬品の服用を止めてはいけません。

(14)ダイエットや筋力増強効果を期待させる食品には、特に注意してください。

(15)「健康寿命の延伸(元気で長生き)」の効果を実証されている食品はありません。

(16)知っていると思っている健康情報は、本当に(科学的に)正しいものですか。情報が確かなものであるかを見極めて、摂るかどうか判断してください。

(17)「健康食品」を摂るかどうかの選択は「わからない中での選択」です。

(18)摂る際には、何を、いつ、どのくらい摂ったかと、効果や体調の変化を記録してください。

(19)「健康食品」を摂っていて体調が悪くなったときには、まずは摂るのを中止し、因果関係を考えてください。

(まいどなニュース/京都新聞)

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