「汚いケージにエアコン直撃」ペットショップの小鳥の様子がおかしい→「病院に連れていく」と申し出、里親に 愛鳥家の献身的なお世話が話題
「こんな状態の子、見て見ぬフリはできない このままだと一歳になれないと思いました。」
ペットショップで見かけた元気のない小鳥の里親になった愛鳥家のエピソードを添えた動画がInstagramで話題になりました。動画の再生回数はすでに170万回を超えています。
投稿したのは、愛鳥家のSawaさん(@sawakong0217)。9月中旬ごろ、愛鳥のおやつを買うためペットショップに訪れた時のこと。店内の鳥を見ていると、両目をつぶってひたすら餌を食べる小鳥を発見。様子がおかしいなと思ったSawaさんは、しばらく観察をしていると小鳥はずっと目をつぶったまま食事をしていたといいます。ようやく目を開けたと思ったら、水の容器の方に移り、さらにケージの底に移動。その開いた目は飛び出しているように見えたそうです。
「小鳥の様子や行動がかなり違和感を覚えました。普通両目をつぶったままご飯は食べません。それも長い時間、寝ていたりリラックスしたりしているならばともかく…またケージはとても汚れていて。他の鳥のケージもフンが3センチほどの山になっているのがいくつかあり、一体どれくらい洗ってもらっていないのか…と心配になるほどでした。
また鳥類のケージコーナーから2メートルほど離れた正面の壁に大きな業務用のエアコンが取り付けられており、吹き出し口からの直風が当たっていたわけではないですが、正面に据え置かれた動物たちに冷気が降りてきますので、温暖な気候に住む鳥たちにはかなり酷な状況だとも思いました。エアコンの正面にケージを置かないのは鳥飼いの共通認識です。とりわけ元気のない小鳥には命取りだと感じました」
■ペットショップ店長「肝臓が良くない可能性はあるかも…でも元気」
元気のない小鳥は、マメルリハという種類でスズメほどの大きさ。飼育される中で最小のインコとのこと。アメリカンホワイトファローという珍しいカラーだとか。生後11カ月の男の子でした。明らかに弱っているように見えたという小鳥を見かねたSawaさんは、ペットショップの店長に小鳥の体調が悪いのではないかと尋ねたところ、「微妙なとこですね」と回答。さらに「この子はくちばしが伸びるのが異様に早いんですよ。肝臓が悪いと伸びたりするので、肝臓が良くない可能性はあるかも」と言いつつも、「でもケージの隅でうずくまるので体調が悪いのかと思って手を入れるとすごい勢いで怒ってきて、元気はあるんですよ」と説明したといいます。
両目をつぶったまま食べていたことには「ちゃんと食べられてます」という店長。ただ「肝臓が気にはなるので、値段を下げるか販売を取り下げるかどうか、微妙なところです。これまでも珍しいカラーなのでこの子をお求めになられたい方はいらっしゃったんですが、その時もお断りしました。お迎えしてすぐ何かあっては申し訳ないので」とも。
店側は一度購入希望者に小鳥の販売を断ったといいますが、当時小鳥のケージは値札が張り付けられたまま店頭に。「何とかしてあげたい」と強く思ったSawaさん。その日は帰宅しました。しかし、一晩悩んだあげく、翌日ペットショップで売られていた小鳥を病院に連れて行こうと決めました。
「オウム・インコ類はPBFDなど、伝染性の感染症を持っている可能性があり、発症すると脱羽、内臓疾患、免疫抑制などが起こります。新たにインコ類をお迎えする時は、検査をして陰性が確定するまでは先住鳥と隔離が定石です。先住鳥の健康を守るのは飼い主の責務ですので、その点でかなり葛藤がありました。また単純な不調ではないと感じて仮に連れ帰っても専門医に見せないとダメかなとも。その上、かかりつけの鳥専門の先生は人気で、健診だと1週間以上先でないと予約が取れないことが多いのですが…どうしても助けてあげたいと思い立ち電話を掛けたところ、翌日の診察の最後に診てくださると了解を得られました」
■診察結果は「栄養失調で脱水、ガリガリ」 肝臓や胃が悪く、肺炎も起こしていた
そして病院に連れて行く当日、ペットショップに足を運んだSawaさん。店長に小鳥を病院に連れて行きたいことを伝えると、「すぐに病院へ連れて行ってくださるなら、里親という形にさせていただきます」と快諾。さらに「もし健康だったらその時にお代を払ってもらえればいい」と、診察結果の報告を約束。ショップを後にし、その足で病院へ。小鳥の体調はかなり悪い状態だと分かったそうです。
「診断結果は、栄養失調や脱水、ガリガリに痩せており、両眼球のけがと腫れ、風邪、異常な量の螺旋(らせん)菌検出、くちばしの変形、羽の変形、尿酸の色からおそらく肝臓に問題ありとのことでした。くちばしや羽の変形は何からくるものなのか、ペレット(総合栄養食)を常食していたのになぜ栄養失調なのか、詳しい検査をしないとわからない病態でしたが、かなり弱っていたためとにかく養生しようということに。肝臓が悪いとみられその治療薬を、さらに風邪と異常に多い螺旋菌のためのお薬を。加えて、眼球には肉眼でも見える傷がついているとのことで目薬も処方されました」
こうしてSawaさんのおうちにお迎えした小鳥。ミライくんと名付けました。その後、レントゲン撮影をしたところ、肝臓だけでなく、腺胃(せんい、鳥の胃の1つ)も悪く、肺炎を起こしていたことも判明。それらが原因で体に栄養が回らず食べても痩せてしまっていたとのこと。このほか、鼻の中が腫れて鼻の通りも悪く、くちばしを動かす筋肉も固くなってしまい口も大きく開けられないなどミライくんは満身創痍の状態でした。
ただ治療のおかげで眼球の傷や螺旋菌はなくなるなどの改善がみられ、また病院で行う週2回の酸素吸入により呼吸も楽になってきたようだといいます。とはいえ、目の中に膿(うみ)が溜まっていることが分かり、あまりよく目も見えていないかもしれないとのこと。「一難去ってまた一難、この子にどれだけ辛いことが降りかかるのか」と、涙が出てきたそうです。
■小鳥が元気になったとしても、ペットショップに戻すことはない
ミライくんのほかに、5羽の先住鳥がいるというSawaさん。現在、基本的にはプラケースの中でじっと寝ているというミライくんですが、たとえ元気になったとしても、ペットショップに戻すことはないと話します。
「お迎えした以上は最期まで一緒にいる心づもりでいます。ですが、ミライにとってのベストを選択したいともいつも思っており、もし私よりもミライのお世話時間や愛情、目をかけてくださる方がいらっしゃれば、それはミライにとっては願ってもないことです。仕事をしていますのでどうしても在宅時間が短く一緒に過ごせないのが私自身の不安要素。毎日、ミライを1人きりで逝かせやしないかと心配しています。
今後病気や伝染性ウイルスが発覚した場合、先住鳥たちの飼育環境やミライの飼育環境をどう整えていくのかが課題です。場合によっては先住鳥たちを実家や離れて暮らす弟妹、信頼のおける仲間に預かってもらうことになるかもしれない、ということも視野に入れています。考えただけでも離れるのが辛いですが、ミライを放り出すことはできません。理想は、ミライが病を克服し、狭いケースを飛び出して他の鳥たちと一緒に家の中を飛べるようになることで、それを切に願っています」
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投稿には、ペットショップで弱っていた小鳥のミライくんの里親になったSawaさんの行動に感謝するコメントやペットショップへの意見などが多数寄せられています。
「動物の体調に気を使えないお店なんて潰れたらいいのに 助け出してもらえて良かった この子は幸せですね」
「ショップで働いている者として許せないです。ただすべての店員がそうだとは思って欲しくないです。少なくてもうちの仲間は毎日頑張って掃除をして体調管理に気を配り体調不良、怪我を見つけ次第すぐに病院で受診するように上司に申告、BRにて療養治療しています。」
「悲しいですが、知らないところでこんなひどい扱いをしている子達がたくさんいるんですよね…素敵な方に巡り会えて幸せだと思います」
「最後の顔が全てを物語っている。中々できないですね!素敵な行動」
「お迎えなさったんですね お優しい、本当に素敵です。このマメルリハちゃんが幸せに元気よく遊ぶ姿を楽しみにしています」
最後に…Sawaさんからのメッセージです。
「本当に毎日たくさんの方からミライへ応援のメッセージをいただきます。さらには募金呼びかけませんか?とか、送金やスパチャで支援のお手伝いしたいといったコメントやDMまでも。会ったことのない小鳥をわが事のように心配し見守り愛を伝えてくださる皆さんに、本当に感謝しています。
また鳥類や小動物はニッチな分野で保護施設、活動家も犬猫とは比べものにならないくらい少ないのが現状です。どうしても社会的にも人の目に触れにくいのですが、そこに苦しんでいる子たちがいることを知ってほしいです。今回の店舗だけでなく、よほど気を使っているお店以外はどこも大なり小なり問題があると感じます。ミライのことを通じて、動物のたちの置かれている状況やショップのあり方に意識を傾けていただくきっかけになればと思います」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)