松竹漫才の生き証人シンプレ 演芸場消失の荒波乗り越え35年 「客入らんなあ。閉めよか」劇場支配人のぼやき受け流し話芸に精進

 今年で結成35年を迎えたシンデレラエキスプレスが、去る10月1日に「シンデレラエキスプレス結成35周年記念公演」と題したスペシャル公演をエルセラーンホールで行なった。当日は「寄席編」と「ライブ編」の2公演が行われ、前半の「寄席編」には笑福亭鶴瓶と『こんちわコンちゃんお昼ですょ!』(MBSラジオ)で共演したラジオパーソナリティ・近藤光史がゲストで登場した。この記事では、後半に行なわれた「ライブ編」のレポートをお届けする。

■どんどん規模が小さくなっていく劇場に…

 ライブ冒頭では、ゴダイゴの名曲「銀河鉄道999」に乗せて、駆け出し時代から現在に至るまでのシンプレ35年の軌跡を写真でふりかえるオープニングVTRが流れ、会場のファンは感慨深げな表情を浮かべていた。VTR明けに満場の拍手の中登場したシンプレは、オープニング・トークを披露。VTRについて渡辺は「いろいろ懐かしい写真が出るのはわかるんですけどね、『角座閉館』、あれ要りますか? 閉館で全員笑ってるって」とオトしてみせた。

 「角座閉館」の話題をきっかけに、シンプレがデビュー以来舞台に立ってきた歴代の劇場をふりかえる流れに。演芸の浪花座、B1角座、通天閣劇場TENGEKI、道頓堀角座……と、バブル崩壊やリーマンショックを経て、世の中の移り変わりとともに場所と形を変えてきた松竹の演芸場を懐かしんだ。

 「客入らんなあ。閉めよか」という支配人のボヤきを幾度となく聞いてきたというシンプレは、まさに松竹芸能の生き証人。渡辺は、「芸人は悪くないんですよ。時代が悪い」「同じ敷地内の『俺のフレンチ・イタリアン』に負けただけ」とこぼした。どんどん規模が小さくなっていく劇場について松井が「最終的にはワンルームマンションに」と漏らし、会場を笑わせていた。

 オープニング・トークの後は、亜空亜SHINがシークレットゲストとして登場。中国の伝統「変面」マジックを披露した。

■よゐこ有野、ますだおかだを迎えて語る…松竹の“裏面史”

 続いては「養成所さんいらっしゃい」とタイトルしたトーク・コーナー。ゲストに有野晋哉(よゐこ)とますだおかだという、シンプレと同じく松竹芸能養成所の卒業生を迎え、話題はさらにディープな“松竹史”に。それぞれの養成所時代の話にさかのぼると、スカウトで松竹入りしたますだおかだは入学金と授業料が免除になったとふりかえる。しかし、増田いわく「会社の人から『払ってるテイでお願いします。TKOさんが怒るんで』と言われて」と暴露し、笑いを誘った。

 さらに話題は、当時の劇場1回のギャラどんだけ安かったか合戦(シンプレが優勝)、松井が浅草キッド・水道橋博士の家に泊まって、独り夜通しAVを見ていたら博士の彼女に見つかった話、よゐこが劇場を1カ月半でクビになった話、ミッチー純がマジックで使うウサギが逃げて、ますだおかだのネタをさんざん引き延ばされた話、楽屋でムームー姿で花札をしていた師匠たち、照明室でいつも×××していた某師匠の話など、とてもここでは詳しく文字化できない“奥深い”トークへと展開した。

 当日「東京でお金になるほうの仕事に行って、来られなかった」(有野談)よゐこ・濱口や、アメリカザリガニ、なすなかにしからのお祝いコメントVTRも流れ、会場は終始お祝いムード。

 続いて、シークレットゲストのかみじょうたけしが漫談を披露。前コーナーでのディープすぎるトークについて、「ふつう芸人さんて、1のことを10ぐらいに誇張して話しますけど、さっきの話、1のことを2ぐらいにしかしてないですからね。ほぼ事実」と補足した。また、自らの養成所時代を「授業で放送禁止用語を教えてくれた先生が紅萬子(現・紅壱子)先生だった」とふりかえり、爆笑をさらっていた。

 最後はシンプレが、漫才と〆のトークを披露。渡辺は「皆さんのおかげでここまでやってきて本当によかったと思ってます。時代は競技漫才へと向かっていますが、僕らは、それとはまた違う漫才を追求していきたい」と殊勝に語るも、最後に「くにお師匠(酒井とおる・くにお)に乳首をつねられながら頑張ってきてよかった」とオトし、会場は大ウケ。大盛況のうちにライブは幕を閉じた。

 渡辺・松井ともに50代後半にさしかかり、いぶし銀の魅力が増してきたが、まだまだシンデレラエキスプレスの“特急”運行は止まらない。

(まいどなニュース特約・佐野 華英)

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