気分はキャンプ! 兵式飯盒で食べるカレーのお味は? 「洞窟」と「隠れ家」にこだわり過ぎた「暇なカレー店」
飯盒(はんごう)でカレーを出すお店がある。店内の雰囲気はまるで洞窟の中のちょっと広いスペースといった感じ。基本的にはバーだが、ランチにバターチキンカレーと不定期にフレーバーが変わるカレーを提供している。
飯盒で食べるカレーって、どんなのだろう? お店を訪れてみた。
■「お皿にしますか?飯盒にしますか?」
飯盒とは、キャンプや登山など野外で活動する際に炊飯や調理ができ、食器にもなる万能器具である。
飯盒でカレーを提供するお店があるという噂を聞きつけて訪れたのは、大阪市住之江区にある「One Curry BAR M's」というお店。
扉を開けると、さながら洞窟のような階段があって、上りきるとお店になっている。
カレーはバターチキンカレーと、不定期にフレーバーが変わる不定期カレーの2種類あるというので、バターチキンカレーを注文した。
「お皿にしますか、飯盒にしますか」と尋ねられ、迷わず「飯盒で」と答える。
待っている間、店長の笹岡鈴穏(ささおかれおん)さんに話を聞いた。
階段や店内の内装は洞窟のイメージで、オーナーの手づくりだという。オーナーは鈴穏さんの父親で、本職は内装業。洞窟好きが高じて、一般的なお店とは違う内装にしたいと考えたとか。本職の技術が、遺憾なく発揮されたというわけだ。
「お店のコンセプトは、オーナーが自分で楽しくお酒を飲める場所が欲しいと考えたところから始まっています」
注文したバターチキンカレーが出来上がってきた。
「お待たせいたしました」
テーブルの上に置かれたのは、キャンプでよく見る兵式飯盒だ。
外蓋を外すと、中蓋にカレーのルーが入っている。その中蓋を外すと、中に入っているご飯が黒い。焦げているのではない。竹炭で炊いてあるそうだ。ご飯の上にのっている小さくキューブ状に刻まれたものは山芋だとか。
辛さはやや控えめで、チキンがゴロゴロ入っている。ご飯の竹炭は、敏感な人は歯触りで感じるそうだが、筆者の感覚では無味無臭、歯触りも気にならなかった。飯盒で提供することで奇をてらっているのではなく、本当に美味しい。また、飯盒は底が深いせいか、目の錯覚でご飯の量が少なく見えるが、これでも250gある。
デザートに自家製のパンナコッタが付き、さらに数種類から選択できるソフトドリンクも付いて、お値段1,000円は安いと感じた。
余談ながら、写真(下)の「たこ焼き風ラムネ」は好奇心で選んでみた。実際に飲んでみると、甘みが強いジンジャエールのような味だった。
「できるだけ広い層に召し上がっていただけるように、バターチキンカレーは敢えて辛さを抑え気味にしています」
一方、辛いのが好きなお客さんのために、不定期カレーは辛めの味になっているという。バターチキンカレーも、希望すればバターを多めに加えて辛さを抑えることができるそうだ。
■倉庫が建ち並ぶ一角…「まさかここに飲食店が」
カレーを飯盒で提供するアイデアもさることながら、お店の外観からして、いい意味で予想を裏切ってくれる。
お店の周りは町工場と倉庫で、その一角に飲食店があるとは誰も思わないであろう雰囲気だ。大きなシャッターは閉ざされており、その脇にある勝手口が店への出入り口になっている。
白い塗料で「One Curry BAR M's」と書かれてある赤錆びた扉を開けると、そこはもう別世界。さながら洞窟のような壁と天井に囲まれて、薄暗い電灯に照らされた急な上り階段を上る。「たぶんこれが扉だろう」と見当をつけて壁を押すと、やっと店内に入り、店長が「いらっしゃませ」と迎えてくれるというわけだ。
カウンター4席、テーブル4席でこじんまりとした、隠れ家的なお店である。
基本的にはバーとして営業しており、80種以上の日本酒と22種類のビールが用意されている。ビールはベルギーをはじめ、世界のビールを仕入れているという。
いちばん気になるのは、なぜ飯盒でカレーを出しているのかということ。
「オーナーと僕がキャンプ好きで、しかも洞窟でキャンプをしたいという気持ちがありました。じゃぁ、せっかくなので、キャンプを連想させるものでお客さんに楽しんでいただきたいというところから、飯盒でお出ししようと考えました」
カレーをお皿で出すか飯盒で出すかは注文時に選べるそうで、お客さんの多くは物珍しさから飯盒を選ぶそうだ。
「SNSに飯盒カレーが投稿されていますから、初めは飯盒で注文されるお客さんが多いです。でも、2回目からは食べやすさを優先して、お皿を希望される方が多いです」
客層は30代~40代くらいのビジネスマンふうの人が多いそうだが、カップルでも子供連れの家族でも大歓迎とのこと。辛みが苦手な子供のために、辛くない「お子様カレー」も用意されている。
「お子さまカレーは、200円で提供しています」
コロナ禍に開店して2年、Instagramには「洞窟と隠れ家にこだわり過ぎて、隠れ過ぎた暇な店」とあるが、リピーターは少しずつ増えているという。
お店の外見に臆することなく入ってみれば、気さくな店長と美味しいカレー、そしてお酒を楽しめる。
階段が本当の洞窟のようで壁面がゴツゴツしているので、肌の露出が少ない服装で訪れるのがお勧めだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)