震えが止まらなかった保護犬 バギーから出るのに20分かかった散歩を今は満喫 「愛情は必ず伝わる、犬はそれに必ずこたえてくれる」
行き場を失ったワンコの保護・譲渡活動を通じ「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。
これまでに多くの命を救い、新しい里親さんとマッチングし幸せへとつないできました。しかし、譲渡に際しては「どのワンコもスンナリ」というわけにはいかず、中には初めて見る里親希望者さんに強い警戒心を抱き、なかなか譲渡につながらないケースも多いといいます。
保護犬は過去に辛い思いをして、人間に不馴れなことが多く、なかなか心を開いてくれない場合も多いのです。愛護センターから引き出したまだ若いレオナルドというオスのワンコも、同様に里親希望者さんの前でガチガチに固まってしまうワンコでした。
■吠えたり威嚇はしないものの「ひたすら我慢」の表情
ピースワンコの公式サイトなどでレオナルドのことを知った里親希望者さんは「この子と一緒に暮らしたい」と、ピースワンコの福山譲渡センターを訪ねました。
福山譲渡センターでは、初めてやってきた人にもすぐに尻尾を振って喜ぶワンコもいますが、レオナルドはその真逆。じっと固まり体全体を震わせ、おびえてました。そんなレオナルドに「仲良くなりたい」と近づいて話しかけたり、なでたりする里親希望者さんに対して、吠えたり威嚇することこそありませんが、「ひたすら我慢」のような表情で固まったままでした。
そんなレオナルドの様子を愛おしく思った里親希望者さんは、ここでレオナルドを迎え入れることを決意。一定期間のトライアルを経て、一緒に暮らすことに決めました。
■散歩を始めるまでに1時間以上がかかった
優しい里親さんから、レオナルドは新たに「レオン」という名前をもらいましたが、心を開いてくれるまでには相当な時間がかかりました。
里親さんを前にして震えがなくなるまでに2週間。散歩に行くためにケージやクレーから出るのに30分。マンションの共有部分の移動のためのバギーに入ってもらうのに20分。公園についてバギーから出るのに20分。
そこで目にした車、人、物音、風など全てにおびえて散歩というよりも、当初は逃げ回っている状態でした。
しかし、里親さんは優しくレオンに接します。「大丈夫だよ。少しずつ馴れていこうね」と声をかけ、根気強く接し続けました。
■心を開いた一方でどうしてもダメなことも
やがてレオンは少しずつ里親さんに馴れ、散歩も1日に3~4時間するほど大好きになりました。散歩に行くとわかるとシッポを振って大興奮。自分でコースを選び、他のワンコとのふれあいも問題なくできるようになりました。迎え入れた当を思えば、かなりの成長ぶりです。
そんなレオンにはまだどうしても苦手なことがあるようです。それは留守番。信頼を寄せた里親さんの姿が見えなくなると、不安になってしまうようです。逆に言えば、かなりの甘えん坊のかわいいワンコでもあるというわけですが、今は少しずつお留守番の時間を増やすなど馴らし、2時間ほどの留守番はできるようになりました。
■「愛情は必ず伝わる、犬はそれに必ずこたえてくれる」
里親さんにレオンと一緒に生活をして一番うれしいことを尋ねました。
「『とにかくそこにレオンがいてくれること』です。具体的にあげるなら帰宅するとシッポをブンブン降って迎えてくれるときや愛くるしい表情・しぐさに癒されている毎日で、自分の心(?)情緒(?)がとても安定しているのを感じたときです(子供たちの独立や更年期特有の症状に悩まされて少し鬱状態だったのですが、レオンのお蔭で毎日がとても楽しいです)」
また、保護犬を迎え入れようと考えている人にこんなアドバイスをしました。
「心配なこと、不安なことがいっぱいあると思います。特にうちのレオンのように慣れるのに時間のかかるビビリのワンちゃんは大変かと思います。でも安心してください。ピースワンコのスタッフのみなさんが親身に相談に乗ってくれます。何度も何度もLINEや電話でアドバイスをして下さったり励ましてくださいました。そして、『犬に愛情は必ず伝わる、そして犬は必ずこたえてくれるからがんばって!』と、散歩中に出会った保護犬の飼い主さんがかけてくれた言葉は嘘じゃなかったと実感しています。個性豊かな保護犬との楽しい時間は素敵ですよ! とお伝えしたいです」
当初とはうって変わって本来の明るく甘えん坊のそぶりを見せるようになったレオンと、そして一緒に暮らすことで心が癒されるようになったという里親さん。こういった好例が今後もっと増えていくことで、多くのワンコの命が救われることにも繋がると思いました。
もし、「保護犬を迎え入れてみたいけど、心を開いてくれるかどうか不安」と思う方は、ピースワンコをはじめまずは保護団体の門を叩いてみてはいかがでしょうか。意外な出会いがあるかもしれませんし、何より保護犬の現実を知る機会にもなるはずです。
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)