生きることを奪われかけた保護犬 災害救助犬として社会貢献 地震、土砂災害、豪雨の被災地へ
「殺処分ゼロ」の実現を目指す団体・ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。保護したワンコを、新しい家族とマッチングし、幸せな暮らしへつないでいく活動を行う団体ですが、この他に、保護犬を災害救助犬、セラピー犬、里守り犬といった社会貢献できるワンコへと育成する活動も行っており、すでに数頭が活躍しています。
そのうちの1頭がルーク。ピースワンコのハンドラー・仁尾さんと一緒に災害救助犬として、これまでに複数の被災地での捜索活動に参加してきました。
■普段は無邪気。でも出動すれば真剣な表情に
普段のルークはピースワンコのシェルターで暮らしています。人懐こく、無邪気で愛らしいワンコですが、ひとたび災害の現場へ出動すると表情は一変。1人でも多くの人の命を救うために、がれきの山などの中でも機敏に動き回ります。
ルークが災害救助犬として育ち、活動をするようになったのはハンドラー・仁尾さんとトレーニングを重ねてからです。ハンドラーとは災害救助犬やセラピー犬などの調教師のことを指しますが、この仁尾さんの指導のもとで救助訓練をマスターしたルークは、仲間の救助犬たちと一緒に後に国内外の複数の災害現場に出動するようになりました。
2018年にインドネシアで起きたロンボク島地震、同年に大分県中津市で起きた土砂災害、熊本県で甚大な被害が起きた令和2年7月豪雨など。いずれの災害現場でもおおいに活躍し注目を集めました。
■先輩の災害救助犬の意志を引き継ぐルークたち
ルークには、夢之丞という先輩の災害救助犬がいました。夢之丞は殺処分寸前でピースワンコに保護された後、訓練を重ね、同団体初の災害救助犬として活躍したワンコです。2014年の広島土砂災害では行方不明者1人を発見し、その後も10カ所以上の被災地に出動した経験のある災害救助犬の大ベテラン。前述の災害現場のいくつかは、この夢之丞と一緒にルークも出動し捜索活動をいました。2021年で夢之丞は災害救助犬を引退しましたが、その思いと活動はルークや現役の仲間のワンコたちが引きついでいます。
■今後起こりうる災害に備えて定期的に訓練を続ける
災害現場に出動する際、ルークは必ずハンドラー・仁尾さんと一緒です。仁尾さんは、状況が異なる災害現場で救助犬がどのように立ち回るべきかを判断し、指示しつつ、災害救助犬たちの体調を気遣いながら任務にあたっています。
こうした仁尾さんの思いは当然ルークたちにも伝わり、強い信頼関係を構築されています。こういったハンドラーとの信頼関係は、災害救助犬の活動に不可欠であり、だからこそルークや仲間の災害救助犬たちも、現場で集中できるのです。
一度は殺処分対象になったり、なんらかの事情から行き場を失ったワンコであっても、きちんと人間が向き合い、相応のサポートをすれば、このように社会貢献をできるという好例です。ピースワンコでは今後もいつなんどき起こるかわからない災害に備え、ルークなどの災害救助犬の訓練を定期的に行い、そしてセラピー犬、里守り犬などの育成にもより一層の力を入れていきます。
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)