バーに入店した男女2人→女性のSOSに店主が機転で対応「ご予約承りました」仕事を盾にした悪意から身を守るには?

「モクテル」というノンアルコールカクテルを提供するバーやレストランが増えているという。そんななか、「私がお酒を頼んでもお茶を出して!」と客に頼まれたという、酒場にまつわる投稿が注目を集めた。

それを受け、おかっぱせんせー(@rouge_rg)さんがバーを営んでいた時代の経験談をX(旧:Twitter)に投稿。大きな話題になった。

「バーをやってた時の話。男女2人でご来店、女性が『仕事関係の着信があったからかけ直してきますね』と外へ。店の電話が鳴る。『今入店した者ですが、全部ノンアルコールで誤魔化して下さい!お願いします!』。何食わぬ顔で『ご予約承りました』と返答。その後2人の様子を見ていて色々とお察ししました…」

「バーは目の前で作るからこそ、カクテルを知ってる人が相手だと、お酒を入れてないのがバレる。だからそういうシチュエーションのために、シロップ類などをお酒の瓶に移し替えてた。電話で、相手がトイレに行ってる間に、トイレから電話で…と色々なパターンがあったな。うん、ほんと、みんな色々あるよね…」

■そもそも2人で行かなければいい→男女問わずビジネスのお付き合いの場合も

さらに続けて、実は「男性側」からの依頼も少なくなかった、とポスト。

「『そもそも2人で行かなければいいのに』という方のために補足しておきますと、繁華街からもビジネス街からも近いかっちりしたオーセンティックバーだったので、ビジネス利用の方も結構いらっしゃいました。よって、男性女性に関わらず、『飲みたくないけどお付き合いしなければ…』というシチュエーションをお見かけすることが多々あり、男性からも何回もこっそり言伝(ことづて)、ということは何度もありました。女性の場合はそこへ更に、ビジネスにかこつけて邪(よこしま)な思いを満たそうとする相手の場合があり、全力で神経を尖らせていました。カウンターの中からだと、どういう関係なのか、何を思っているのか、とてもクリアに見えます」

■伝統的な「ノンアルコールのカクテル」も

また補足として、通常のバーであれば、ノンアルコールのカクテルを注文した場合でも、店側に金銭的な損失はないことも投稿。

「ノンアルコールカクテルでもカクテルとしてきちんとお作りするので、アルコール入りの物と原価は大して変わらず、よって料金も大して変わりません(きちんとレシピがある伝統的なものもあります)。また、オーセンティックバーでメニューをご覧になる方はあまりいません。どの店でもカクテル名や酒の名前で分かってもらえますし(ど忘れしても『えーとほらアレとアレが入ってる…』で通じますし、好みに合わせて提案もしてもらえる)、街と店内の設えでおよそこれくらいだろうと相場の見当がつくためです。決してボッタクっているわけではありません…」

■本来「バー」ではナンパ行為もお酒の強要もタブー

バー経営者だった時代のおかっぱせんせーさんの経験談に対して、コメント欄には多くの共感の声が殺到。その中には、「お店の人が男の人とグルだったら怖いですね」というコメントも寄せられた。

「まともなバーなら絶対に女性を守ります!ナンパのような行為もタブーですし、それを知らないんだなという人の場合は、さりげなくバーテンダーが間に入ります(バーテンダーの知人も皆同じように言います)。あと、飲めない(飲みたくない)のに無理矢理連れて来られた人もフォローします」と、返信していたおかっぱせんせーさん。

果たして、ノンアルを指定した女性はどうなったのか?おかっぱせんせーさんにお話を聞いた。

■立場を利用して「度数の強いカクテル」ばかり勧める男性

ーーポストにあった「男女」はどんな様子だったのですか?

「お話の内容から、男性は仕事を発注する側の40代会社員、女性が仕事を受けている30代個人事業主でした。男性はセクハラ的な発言も多く、女性を口説きたい…といっても真面目なお付き合いではなく、性的な関係になりたい様子でした。さらに今後の仕事の発注についても匂わせるなど、立場の上下を利用してそういうことをほのめかしながら、度数の強いカクテルばかり『飲みやすいよ』と女性に勧めていました。女性は相手に表情が見えないようにしながらも、大変不快な様子でしたが、波風立てず、明るく上手くやり過ごすことにとても神経を使っている様子でした」

ーー女性からの電話を受けた後は…?

「当時、私以外に主にお酒を作る人がもう1人おりまして。電話の後は女性からのお願い通りに、バーテンダーさんが上手く誤魔化しながらノンアルコールで全てお作りしていました」

■店の外までお見送りしたところ…

ーーその後、女性は…?

「男性が化粧室へと離席された際に、『大変そうですね、大丈夫ですか?』とこっそりお尋ねしたところ、『慣れっこですが、疲れますね…』と苦笑いされていたのが印象的でした。夜も深い時間帯でしたので、ちょうどお家の場所が話題になった際にそれとなく話に入り、タクシーをお呼びしましょうか?と提案し、女性が『ぜひお願いします』とのことでしたので、お呼びしました。男性は曖昧にお断りになりました。

本来でしたらドアまでのお見送りなのですが、気になったので外までお見送りしたところ、やはり男性が送るからなどと理由をつけて、女性のタクシーに同乗しようとしていました。女性は終始、『申し訳ないからいいですよ』という体(てい)でお断りされており、私も流れに合わせて、『全然方向違うじゃないですか~。大人だから心配しなくて大丈夫ですよ~(笑)」などと冗談めかしてお話しし、女性がお一人でタクシーに乗られるまで見届けました」

ーー女性は心強かったでしょうね。

「後日談ですが、その一週間後くらいに女性が、『先日は本当に助かりました!』とわざわざ店にお越しくださり、さらにその後、店の常連様になってくださいました。男性は件の時に初めて来た方でしたが、その後も来店がなかったことを確認された上で、です」

■離席した女性のグラスに何かを入れた!?

ーー他にも「危ないな」と感じられた状況はありましたか?

「一度だけ、男女のお客様で、どちらも初見の方々でしたが、女性が離席された時に、男性が女性の飲み物に何かを混入しようとしたのを見ました。ポケットを触った後に相手のグラスを触ろうとしたので、すかさず目の前まで行き、話しかけると明らかに狼狽していたので、きっとそういうつもりだったのだろうと思います。他のお客様もいらしたため、全てを見ていたわけではなく、100%何もないという確信がなかったので、女性が戻っていらした時に、『もう氷が溶けて美味しくなくなってしまったのでサービスで何かお作りいたしますよ』と、適当に理由をつけてそのグラスはお下げしました。元々お酒も全く進んでおらず、お勧めのものでとのことでしたので、ほぼジュースのものをお出ししました。

他の方もポストされていましたが、酒場で離席をする際は、グラスの中身を飲み干していくのは大事だと思います。また、男性側と店がグルになるなど、お酒を扱う資格がないような悪どい人間も、ごく少数とはいえ存在することも事実なので、親しくない相手の“行きつけの店”というのは避けた方が無難です。本当はこんな自衛などしなくて済むことがいちばんですが、信用できない相手だとしても、どうしても同席を避けられない状況もありますから」

■お酒は「楽しい時間」を過ごすためにあるもの

ーー緊急事態以外でも、もう飲めない、飲みたくないけど楽しい雰囲気を壊したくないといった場合も、バーテンダーさんに相談していいのですか?

「もちろんです。男女関係なく、やむを得ずその場をお付き合いしていることはありますよね。メモで、電話で、スマホの画面で、相手が離席した時やご自分が離席した時に直接など、皆さま色々な方法でご相談してくださいました。どんな時でも遠慮なく相談していただければ、バーテンダーは必ず理解してくれると思います。

そもそもの話ですが、現在はかなり理解が進んでいるとはいえ、アルコールの強要は絶対にいけません。お酒を飲む場合、特に立場が上になる方は、同席者に飲酒を強要していないか?また、飲めないと断られた時に不満そうにしてないか?断れない雰囲気を作っていないか?今一度振り返っていただきたいと思います。お酒は毒にも薬にもなります。一人でも誰かと一緒にでも、時に楽しく、時に癒され、最終的には幸せな気持ちになるためにお酒やバーを使っていただきたいと心から願っています」

◇ ◇

寄せられたコメントの中には、「絶対に一杯目は唇を濡らす程度。どんなにちっさいグラスでも飲み込まない。飲み干したらおかわり飲まされる」という、女性からの経験談も寄せられた。

現在は新宿区で活動する新体操クラブ「Rouge RG Club」の指導者を務める、おかっぱせんせーさん。バーの経営から離れた今も、「お酒」や「バー」は大好きだという。

「お酒は楽しい時間を過ごすためにあるものです。相手の思考能力を奪うために悪用するものではないこと、お酒を断られても不満に思わないこと。楽しい時間に自衛をしなくて済む世の中になってほしいと願っています」(おかっぱせんせーさん)

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)

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