中学受験…うちの子は「男女別学」「男女共学」どちらがいいの?気になる志望校の選び方【専門家がアドバイス】
近年では私立中学の共学化が進んでいますが、その一方で男子校・女子校を受験する生徒も少なくありません。男女の共生を重んじる共学か、男女それぞれの特徴に合わせた男女別校かで志望校を迷っている生徒も多いのではないでしょうか。
■志望校を迷っている息子
Fさん(40代、東京都在住、会社員)の息子(小5)は中学受験に向けて勉強や部活に励んでいますが、まだ志望校を決めかねています。偏差値を基準に、狙えそうな学校の資料を取り寄せたり、説明会に行って話を聞いてみましたが、なかなか本人が納得する学校がみつからない様子。そんなある時、塾の先生から一つの選択肢を提示されました。
「これまで候補になっていたのが共学ばかりなので、男子校の見学に行ってみるのはどうでしょう?」
Fさん自身が共学出身でしたので、すっかり頭から抜け落ちていた選択肢でした。息子の選択肢が広がるならと、Fさん親子は男子校の資料を取り寄せ、説明会に参加することを決めました。
■男子校の説明会で雰囲気を実感
しかし、男子校のイメージが全くわかないFさん。
「男子だけの環境だと体育会系になりそう。息子は気が優しい方だから、いじめられたりしないかしら」
「思春期の時期に男女が別の環境になると、将来女性の扱いがわからなくなったりしない?」
Fさんの疑問と不安は止まりません。
しかし実際に説明会に行ってみると、Fさんと息子の男子校へのイメージは変わりました。男子しかいない環境は確かに不思議な感覚ではありましたが、生徒たちはのびのびと、その環境を楽しんでいるようでした。息子にとっても、良い刺激になったようです。
男女が同じ空間にいる共学なら、進学しても小学校とのギャップが少なく、安心して過ごせると思っていました。しかし環境が変わることで得る刺激もあるのだと、Fさんは実感しました。
■男女別校と共学、結局どちらがいいの?
一方で、選択肢が増えてしまいFさん親子はさらに悩むことになってしまいました。男子校も共学のどちらにも利点があり、迷ってしまいます。また、息子の性格に合った校風の学校をなるべく選びたいと思っています。
男子校・女子校といった男女別校と、共学でどのような点で学校を選んだ人が多いのでしょうか。また、実際に通った学校の別校・共学ならではのエピソードを伺いました。
▽30代 東京都在住 自営業
女子校出身です。女子の生態に詳しく、そして世渡り上手になれます。就職して、女性の上司の取り入り方とか、結婚してママ友の付き合いのあれこれも、難なくこなせたのは、女子校での経験があったからこそだと思っています。
▽40代 埼玉県在住 住宅メーカー営業
息子が男子校に通っています。高1ぐらいまでは違和感なく過ごしていたようだが、高2ぐらいになると、男子校を選択したことをかなり後悔していた。女子がいないことの違和感をやっと感じたらしいです。
▽50代 千葉県在住 主婦
共学出身です。男子と女子の友情は成立します。卒業から30年以上経ちますが、いまだに男女ともに友達付き合いをしています。
■専門家「どちらを選ぶにしても、子どもに合った環境を」
また、志望校を選ぶ際に男女別学と共学のどちらを選べば良いのかについて、一般社団法人<芙和せら>心理研究所の所長で、企業研修や心理セラピーをしている公認心理師の芙和せらさんにお話を伺いました。
ーー中学受験は、男女別学、共学どちらを受験した方が良いのでしょうか?
発達心理の面からみると、中学・高校時代は人間形成のうえでデリケートかつ大切な時期です。保護者の皆様にはこの時代に「お子様をどういう環境に置いてあげるのがいいのか」「お子様がどういう友達と語り合うことで成長するのか」をしっかり考えていただき、進路の選択をしていただきたいのです。
男女別学、共学のいずれでも進学先を選ぶ際には次の点が大切です。
・希望の学科、コースがあるか。
・やりたい部活動があるか。
・校風、建学の理念などが性格にあっているか。
・大学進学のときに不利益がないか。(中高は共学でも、大学が女子校しかない場合も)
・通学の利便性
ーーどちらを選ぶとしてもにしても子どもに合う学校を選ぶことが大切なんですね。男女別学のメリット、デメリットを教えてください。
女子校に進学する場合、リーダーシップが形成される可能性が高くなります。共学に進学しても女子がリーダーシップを発揮できる可能性は大いにありますが、全員が女子なので活発な男子の陰に隠れて学級活動の手をぬくことが許されません。
男子校に進学する場合、結束力と人脈が将来に役立つことがあります。歴史のある男子校の中には、同窓生同士の結束力が強い校風のところがあります。在学中にも男子校ならではの結束力とチームワークの作り方を学ぶことができますし、社会人になった後も人脈が形成され、就職先を超えた協力関係を築いている人たちが多くいます。
男女別学のデメリットは異性との接し方を学ぶ機会を失う可能性があることです。異性のきょうだいがいる場合はあまり心配する必要がないのですが、同性のきょうだいしかいない場合は、学校でも家庭でも同性としか接することができません。その結果として異性と接するときに距離感がわからない、極端に理想を抱く、苦手意識をもつといった可能性があります。
同性のきょうだいしかいない、または一人っ子の場合はそのことを念頭において進路を考えたほうがよいかもしれません。
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◆芙和せら(ふわ・せら)公認心理師
一般社団法人芙和せら心理研究所・代表理事。芸術療法士(日本芸術療法学会)、シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、フラワー心理セラピスト、色彩グラスセラピスト、子ども花育セラピスト、コミュニケーション心理士、心理アセスメント専門士、箱庭療法士などの資格を持つ。
(まいどなニュース特約・わたなべ こうめ)