「学校の授業は退屈…塾だけ行きたい」中学受験で“変わってしまった”息子 不登校は許していい?【お笑い芸人→教師経験者がアドバイス】

近年、中学受験をする子どもたちは年々増加傾向となっており、受験戦争を勝ち抜くべく早いうちから塾へ通う子どもも増えています。各塾もより授業内容を充実させており、その結果「塾の方が楽しい!」と言い出す子も少なくないようです。

■中学受験を見据えて塾へ通うことに

Mさん(神奈川県在住、30代、メーカー勤務)には現在、悩んでいることがあります。それは、Mさんの息子(小3)の学校へのモチベーションが著しく下がっていることです。

息子は2月から、中学受験を見据えて塾へ通い始めました。勉強することが好きな様子だったので、より高いレベルの学習ができる環境に身を置かせてみようと、夫婦で相談して決断しました。息子本人もやる気があり、普段とは違う授業も刺激的なようで楽しそうに塾へ通っていました。しかし、ここで弊害がおきてしまいます。

■授業態度がよくないと先生から指摘が…

ある日、Mさんのもとに担任の先生から連絡が入りました。面談することになり学校へ行くと、息子の授業態度が最近よくないとの指摘をされてしまいます。

「息子さんは頭がよく、質問にはしっかり答えられています。しかしここ最近、タブレットで授業以外のことをしていたり、ぼーと外をみていたりと集中力の低下が見られます。

Mさんは驚き、大きなショックを受けました。息子は勉強を楽しんでいると思っていたので、授業中の態度がよくないという指摘は想像もしていませんでした。その日の夜、息子の本音を聞き出すため、夫(30代、会社員)も合わせて3人で話し合いをすることにしました。

■周りの子たちとレベルをあわせた学校の授業は…

「塾の先生の話は面白くて、わかりやすくて楽しい。でも学校の授業はつまらない」これが息子の主張でした。

息子の「勉強が楽しい」という気持ちは変わっていません。中でも、丁寧に解説や補足がされる塾の内容は、息子にとって刺激的で興味深いものになっているようです。しかし、学校での周りの子たちとレベルを合わせた授業は退屈で、新しい発見もなくつまらないようです。ついには学校にも行きたくないと言い出す始末。

学校へ行かず、塾だけ行きたいと主張する息子に、Mさんは頭を抱えてしまいました。勉強は塾だけでいいと言われても、中学受験をするなら内申点も重要になってくるでしょう。何より、学校へ通うことは社会で生活する練習でもあると思うので、どうにか学校に通ってほしいと思っています。一方で夫は、「行きたくないのであれば無理に行かせる必要はない。勉強をしたくないわけではないのだから」と、夫婦間でも意見が分かれてしまいました。

■専門家「成長する良い機会…子どもに主体的に考えさせて」

塾は楽しいけれど学校の授業がつまらないので行きたくない、と言い出す子どもたちは案外多いようです。こうした場合、なんと子どもたちに声をかけるべきなのでしょうか。

お笑い芸人から教師に転身し、現在はコーチングの専門家として活動する坂田聖一郎さんにお話を伺いました。

ーー塾だけに行くから学校に行かないと子どもに言われたらどうすればいいのでしょうか?

結論、子どもに決めさせる。ただし、塾だけ通う場合、塾の無い時間帯に何をするのか具体的に考えさせましょう。塾だけ行かせるとなると、「社会性が身につかないのではないか」と不安になるかもしれません。しかし、今の学校の仕組みは果たして、これから社会で必要とされる力が身につくのでしょうか。

今の時代を生きる力とは、主体的に考え計画し、実行する力です。そこに従来の学校のシステムとギャップがあると感じています。

例えば、学校の学びのスタイルは、一斉授業が基本です。そのため国語がしたいと思っても算数があったり、もっと勉強したいのに時間が決められたりと、自分で学べる子にとっては没頭できる環境とは言えません。

塾で学びたいという意欲の高いお子さんであれば、「学校に行かなくてもいいけど、塾がない時間は何をするの?」このような問いかけが、主体的に考える機会を作りお子さんを成長させるのです。

ただし、親の意見もしっかり伝えましょう。塾にだけ通うと選択した場合、日中の時間が空きますよね。その時間、何をするのかが問題です。

ーー子どもに主体的に考えてもらうことが大切なんですね。

例えば、私の娘も不登校ですが、日中、何も目的なく動画やSNSを見るのは禁止しています。

結果、自分でやりたいことを考えて英語やネイル、整体を学び始めました。自分のSNSアカウントを持ち発信もしています。

「学校に行かなくてもいいけど、塾がない日中はどうするの?ダラダラと動画やゲームをするのはダメだよ」と条件を付けて子どもに考えさせることが子どもの成長につながるのです。

塾だけ通いたいという主張は、捉え方を変えれば、学校の授業がつまらないという意見を持ち、塾で学びたい意欲がある証。

子どもの主張を否定せず、まず受け止めてみてください。そのうえで、成長する良い機会として具体的に考えさせていくことが大切です。

◆坂田聖一郎(さかた・せいいちろう)ドラゴン教育革命代表

愛知教育大学教育学部卒業後、東京NSC9期に入学。同期だった現在「しずる」村上純とコンビを結成するも解散。愛知教育大学大学院に入学。大学院生の傍ら、定時制高校で非常勤講師として国語を教える。卒業後、愛知県豊田市の正規教員として小中学校に勤務。2020年7月には「株式会社ドラゴン教育革命」代表取締役に就任。2022年「ままためコーチング塾」をスタート。

(まいどなニュース特約・わたなべ こうめ)

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