歩いちゃダメ、抜いちゃダメ エスカレーターの歩行問題解決へまさかのアイデア 名古屋で激写 

2列で乗れるエスカレーターの片側は、歩いて追い抜く人のために空けておく-。そんな暗黙のルールが定着しているが、エスカレーターは基本的に「立ち止まって乗る」ものであり、エスカレーターのメーカーや、設置している施設も利用者にそう呼び掛けている。さて、名古屋市でエスカレーターの安全な利用の促進に関する条例が10月1日に施行された。施行後2週間ほどは「なごやかにSTOPしてね」と書かれた巨大な黄色い“手”を背負った「なごやか立ち止まり隊」が一般の利用者に紛れてエスカレーターに乗り込み、追い抜き行為を人力で牽制。その異様な光景はSNSやニュースを駆け巡り、見る者に強いインパクトを与えた。施行から半月余り。果たして「立ち止まって乗る」のは定着したのか。名古屋市の担当者に現状を聞いた。

「名市交(※名古屋市交通局)がついに本気出してきたぞ!!!」

そんな投稿がX(旧Twitter)を賑わせたのは10月13日のこと。エスカレーターの右側に、例の黄色い手を背負った立ち止まり隊が立ち、力ずくで「立ち止まって乗る」状況をつくり出している様子が見事に切り取られていた。撮影者はじゅんさん(@Rabbit_D06)。リプライ欄には「これ東京でやると肩叩かれたりぶつけられたりするんですよね」「右側に乗る勇気無いです」などの反響が寄せられた。

名古屋市が定めた条例の主な内容は「右側か左側かを問わず、階段上に立ち止まって利用しなければなりません(第8条)」「事故等を防止するため、エスカレーターの安全利用に努めなければなりません(第5条)」など。「エスカレーターは高齢の方や障害のある方なども含め、多くの方が利用されます。一人一人が立ち止まって利用することで、皆さんが安全にエスカレーターを利用できることにつながります」としており、逆に歩いての利用については「自身が転倒したり、接触によって周りの方が怖い思いをすることも」ある、と注意喚起する。

担当する市消費生活課によると、条例施行後初のウィークデーとなった10月2日、啓発のため立ち止まり隊を名古屋市内の鉄道主要駅に投入。隊によるPR活動は約2週間続けられ、多くの人の目を引いた。

条例やPRの効果については今後検証していくことになるが、担当者によると、名古屋では十数年前から、交通局が中心となってエスカレーターには立ち止まって乗るよう促す啓発が続けられてきたという。このため条例で急に始まった取り組みというわけではなく、担当者は「認知自体はすでに広がっていたと思われます」とした上で、「条例によってあらためて意識したり、行動を変えたりすることにつながれば」と期待する。

10月4日に「利用者の視点」から「立ち止まり隊」を撮影し、Xに投稿したMamiさん(@FlynFit_trapeze)。その後の利用状況を聞いてみると、「以前よりは2列で立っている人を見るようにはなりましたが、まだみんな恐る恐るという感じですね」とのことだった。

■埼玉では2年前に施行

実は同様の条例は2021年10月、埼玉県でも施行されている(「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」)。担当する県の消費生活課によると、2022年度の県政世論調査で条例の認知度は7割近くに上り、百貨店などの小売店舗やホテルなどの宿泊施設、行政機関の庁舎や図書館などの公共施設では「立ち止まって利用した」という人がいずれも9割を超えた。

一方、駅での利用に関しては約4分の1が「歩いた」と回答したが、担当者は「条例ができたことで、多くの県民の間に『エスカレーターは立ち止まって利用するもの』という意識が根づいてきていることは確かだと思う」と手応えを話す。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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