「おうちに入れて!」雨の日にやってきたオス猫 視力を失った老犬に寄り添う 2匹の姿は長年連れ添ったパートナーのよう
大阪市生野区に住むSIHOさん宅にやってきた、オス猫の「あめ」。雨が激しく降る日の夜にやって来て、まるで「おうちに入れて」と訴えるようだったという。
「あめ」が最初に打ち解けたのは、SIHOさん宅の先住犬で盲目の老犬テリー。「あめ」はテリーの境遇が分かっているかのように、いつも寄り添っている。
■オス猫なのに初めて出会ったときは子猫を連れていた
SIHOさんが初めて「あめ」と出会ったのは、2020年秋のこと。
「自宅マンションの下で、若い猫が子猫を2匹連れていました。だから、ごはんをあげていた近所の人も私も、てっきりメス猫だと思っていたんです」
そのときは地域猫でもなく、ただの野良猫だった。
ある日を境に、その3匹の姿が見えなくなった。SIHOさんは「どこかで保護されたのかな」と思ったそうだ。それから間もなく、若いオス猫だけが再び現れた。
「右の耳をカットされていたから、そのとき初めてオスだと分かりました。私の想像ですけど、子猫たちと一緒に保護されたのかな。子猫は里親さんのところへ行ったのかも」
飲食店で働くSIHOさんは、仕事がある日は夕方4時頃に自宅を出て深夜に帰宅する生活を送っていた。
「仕事に出かけるとき、いつもマンションの下にいるのを見かけていました。近所の人が、ごはんをあげていたみたいですね。どこか別の場所で寝ているのか、深夜には見かけなかったです」
コロナ禍でお店の営業時間が短縮になり、夜9時頃に帰宅すると、まだ夕方と同じ場所にいたという。
「その頃から、うちの玄関先までついて来るようになったんですよ」
■今は盲目の先住犬に寄り添ってよきパートナーに
その猫は、帰宅するSIHOさんの姿を見かけたら、玄関先までついてくるようになった。しかし、SIHOさん宅には、すでに2匹の犬と1匹の猫がいる。そのせいなのか、中まで入ってくることはなかったそうだ。
「でも、誰かの家に入りたかったんじゃないかなと思います」
その頃からSIHOさんは、この子を保護しようかと考え始めていたという。
「情が移ったのもあるんですけど、前に亡くした犬と毛並みのカラーがよく似ていたんですよ」
そして、ごはんをあげるようになり、体に触れたり抱きあげたりできるまでになった。
いよいよ保護しようと決めたある日の夜、激しい雨が降っていた。そのとき、猫が自らSIHOさん宅にやってきて、まるで「入れてください」と訴えているように見えたそうだ。
「一度はうちに入ったんですけど、前からいる猫が怖いみたいで……。その日はまだ保護しないで、雨がやむまで一緒にいてあげたんです」
次の日、SIHOさんは知人から借りたケージに入れることに成功。その足で病院へ連れて行った結果、健康状態は良好だった。
「雨が激しい日に一緒にいてあげたし、『あめ』と名付けました」
じつは2匹いる先住犬のうちの1匹、オスのパグ犬テリーは盲目で13歳の老犬。SIHOさんはそれを承知で里親を引き受けていた。「あめ」は先住猫とはしばらく距離を取っていが、テリーとはすぐ打ち解けたそうだ。
「ケージから出てすぐテリーに近寄って行って鼻チューをしたり、毛繕いをしてあげたりしていました。テリーもそれを受け入れて、あめを頼りにしている感じです」
「あめ」を保護したのが9月。季節は秋から冬へ向かっていく。
「2匹は寝るときも一緒で、すごく仲がいいです」
テリーのほかにもう1匹いる犬が、不注意で「あめ」の尻尾を踏んでしまったときは怒るのに、テリーに踏まれても怒らないのだという。
あめはテリーの目が見えないことを分かっていて、自分の境遇と重ね合わせて守ろうとしているのかもしれない。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)