パッと開くだけで“盾”になる!刃物からの攻撃から身を守る「防刃傘」が登場 軽量、強固…スケスケの特殊素材で攻撃者の動きもわかる
刃物や包丁を振り回す事件が増えていますが、刃物を振り回す相手に対して防御する機能がある新しい傘「防刃傘」が登場しました。
展示されていたのは、10月11日~13日まで東京ビッグサイトで開催した「危機管理産業展(RISCON TOKYO2023)」です。「防刃傘」を販売している、株式会社TASKMATE代表の今井啓詞さんに、開発理由や特徴を聞いてみました。
■常識に囚われない誰もが使いやすい防刃傘
--そもそもこの防刃傘を作ったきっかけを教えてください
最初に刃物から防御できる傘を着想したのは2017年のことです、当時は市販のビニール傘に、特殊な防刃素材である「CYGUS(サイグス)」を被せた試作品を作りました。
製品化を決断したのは、2018年に起こった「東海道新幹線車内殺傷事件」でした。刃物で襲ってくる状況に遭遇したら、どう守ったらいいのかと妻と話していたところ、切れない生地を使った傘なら女性でも使えるかもしれないと言われましたことでした。
--どういう風に使うのでしょうか?
防刃傘の使い方は雨傘と同じように広げて構えるだけです。すばやく広げられるようにバンドは付いていません。防刃、防犯品の多くは男性向けに開発されていて、例えば「さすまた」は相手を壁まで追い込む必要があり、女性が使うのは実際のところ難しいというのがありました。
また、2019年にはスクールバスのバス停にいた児童らが包丁で刺された事件がありました。保育園や幼稚園などの場合では、女性の保育士しかいないところもあると思います。その場合にどうやって身を守るかという課題もありました。そのときに防刃傘があれば、児童を逃がす時間稼ぎができるのです。防刃傘は傘を広げて「逃げる、逃がすための補助具」で攻撃する用途はありません。
--防刃傘の販売はいつごろどこで買えるのですか?
2019年に初代モデルを作りました。当時は防刃傘というものに対して世間から理解されないこともあったのですが、何回かイベントに出展することによりメディアでも取り上げてもらい、少しずつ売れ始めました。購入はネット通販でも買えますが、基本的に法人向けの商品です。
■関西の人から指摘を受けて…阪神カラーも用意
--防刃素材のCYGUSがこの防刃傘の要だと思うのですが特徴を教えてください
CYGUSは米国メーカーが開発した特殊な繊維を使っていますが、生地自体は日本で織り上げたもので、西陣織です。CYGUSに使われている糸は、手袋やシャツ、アームカバー、ベスト、盗難防止ベルトなどさまざまな製品があり、海外では警察や特殊部隊などでの採用実績があります。
--今回展示している新モデルはなにが変わったのでしょうか?
初代は傘の外側になる骨である親骨はグラスファイバーだったのですが、親骨を支える受骨が鉄だったため、ちょっとした衝撃でも曲がることがありました。新モデルは受骨もグラスファイバーにしました。さらに初代よりも傘のサイズが70cmと大きくなったことでより防御する範囲が広がりました。価格は初代と同じく4万2,000円(税抜)です。
--傘だと強度自体が心配ですが?
傘がたわむため刃物からの衝撃を逃せることで切断を防いでいます。傘自体は防風性能が高い雨傘を使い、生地を剥がしてCYGUSに張り替えています。生地の耐防刃性には問題がないため、900グラム程度に抑えたいというのもありましたので、生地自体は初代と同じものを使っています。
--防刃傘の色について教えてください
防刃傘の色は、「黒色」「オレンジ×黒色」「黄色×黒色」の3色用意しています。もともとはまわりに危機が迫っていることを知らせるためにも、目立つオレンジ×黒色を作りました。しかし、関西の方から「オレンジ×黒色は巨人の色やないか!」と指摘されたこともあり、阪神カラーの黄色×黒も作ったのです。
黒色の生地はオレンジや黄色よりも透過性に優れているため、黒色のみのカラーも用意しています。生地が透けているので攻撃してくる人の動きがわかりやすく、また、傘の内側からでもフラッシュライトを当てて、攻撃者の視界を奪うという使い方もできます。
--ちなみに、この防刃傘は雨傘や日傘としては使えるのでしょうか?
透過性を持たせているため雨はまったくしのげません。また、日よけにはなるかもしれませんが、紫外線を防ぐ効果はありません。雨をしのごうと思ったら糸の密度を上げて織る必要があるため、透過性がなくなり重たくなるというデメリットしかないのです。そもそも外に持ち歩くというより、施設に常備しておくものです。わかりやすく傘という名前をつけていますが、厳密にいうと盾です。
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盾だと重量もあるため、軽量な防刃傘なら誰でも使えますね。でも、使う機会がないことが一番です。
※記事を一部修正しました(10月23日22時2分)
(まいどなニュース特約・鈴木 博之)