自国防衛を猫のケンカにたとえ 表紙にウ大使館が猛抗議 カタログハウスがおわび「表現が不適切でした」
通信販売カタログ誌「通販生活」で掲載されたウクライナ侵攻に関する内容について、発行する株式会社カタログハウスは10月30日夜、公式ホームページで謝罪文と見解を公表した。これを受け、担当編集者に企画の意図や批判への受け止めを取材した。
■表紙で「殺せ」「殺されろ」
同誌は23年冬号の巻頭で、8ページにわたってロシアによるウクライナ侵攻を特集。反戦を訴えた内容ではあるものの、表紙で「殺せ」「殺されろ」といった言葉を使ったり戦争を「猫どうしのケンカ」に例えたりしたことや、国際紛争処理の専門家・伊勢崎賢治氏(東京外国語大名誉教授)による「停戦案」を掲載した(※詳細は後述)ことで、疑問や批判の声が強まっていた。
SNSでは、「戦争反対を唱えるのは構わないが、これはウクライナの人々を愚弄しているようにしか見えない」「いわば殺人被害者の遺族に『憎しみは何も生まないんだよ?だから今までのことは忘れて仲直りし』と説教するような感じになっちゃうと思う」といった声が上がった。
27日には、在日ウクライナ大使館がX(旧ツイッター)で抗議声明を発表。「日本国民及び日本政府の立場に矛盾するものとして強く非難します」「主権国家に対する侵略戦争はケンカではありません。侵略者を宥めることは終戦に導きません」などとしていた。
同社は30日にホームページで見解を公表。「『殺せ』『殺されろ』の主語は決して『ウクライナの人びと』ではなく、戦争の本質を表現したつもりです」とし、「つたない表現で誤解を招いてしまったことをお詫びします」とした。また「ウクライナの皆様の祖国防衛の戦いを『ケンカ』という不適切な言葉で表現したこと」を謝罪する書面を在日ウクライナ大使館に持参したことも明らかにした。
■編集責任者「表現至らない部分あった」
騒動について、どのように受け止めているのか。通販生活編集部の責任者の男性が取材に応じた。
まず、企画の意図としては「ウクライナの現状を知り、どうすれば人が死なない形で平和が戻るのかを考えてもらうきっかけにしたかった」とした。表紙の文言については「戦争はどうしても殺し合いになってしまうもので、その本質を表現した結果がこうした強い言葉になった。私たちの表現力に至らない部分があったと思う」と話す。
特集ページで停戦案を掲載したこと自体に、大使館が抗議の意を表明した。これについては「ウクライナの方が停戦に関して『とんでもない』とおっしゃるのは当然かと思う」としつつ「これまでの歴史でもそうだが第三国なり国連なり当事国以外が入って、戦争をどうやって終わらせていくかを考えていく必要がある」「ウクライナの立場とは異なっても、私たち日本人が停戦案を提案してはいけない、というわけではないと思う」とした。
また、伊勢崎氏による停戦案を紹介した後、4人の識者による寄稿を掲載しているが、その中には停戦案への反対意見も含まれており「あくまで伊勢崎氏の意見をたたき台にして、どうやったら今の状況というものを1日も早く止められるのかを考える内容にしたかった」と説明した。
■ 「通販生活」23年冬号の内容
表紙には、銃を構える兵士が映るテレビ画面と、それを眺める猫をレイアウト。そして猫のせりふと思しき言葉として以下の言葉が続く。
「プーチンの侵略に断じて屈しないウクライナの人びと。がんばれ、がんばれ、がんばれ。守れ、守れ、守れ。殺せ、殺せ、殺せ。殺されろ、殺されろ、殺されろ。人間のケンカは「守れ」が「殺し合い」になってしまうのか。ボクたちのケンカはせいぜい怪我くらいで停戦するけど。見習ってください。停戦してください。」
また巻頭に特集「いますぐ戦争をやめさせないと」を掲載。ウクライナ侵攻による死傷者数などのほか、伊勢崎賢治氏による「停戦案」を図解付きで紹介。「停戦」と「講和」はイコールではないと定義し、「とにかく『戦闘をやめること』で、領土の帰属などはその後の長い政治的交渉を通じて決めていくものです」として、段階を踏んでウクライナ東部のドネツク州バフムトなどを緩衝地帯とする案や、過去の停戦事例などを示した。
続いて、この停戦案への賛成、反対意見を含め、衆議院議員の石破茂氏ら識者4人の見解が掲載されている。
(まいどなニュース・小森 有喜)