「こんなんもらったら…」小学校低学年の男児から届いた1枚の葉書 難しい漢字も必死で綴り…ある心臓外科医の誓いと覚悟
「こんなんもらったら泣いちまうじゃないか、ありがとうー!よし、頑張るか」と小児心臓外科医の小渡亮介さんが自身のXのアカウント(@RyosukeKowatari)で公開したはがきの写真。宛先には子どもの字で「心臓の先生」、そして小渡さんの名前があります。裏面には「元気になりました。」「運動会は玉入れをしました。」とうれしい近況報告。誰かのためになれる仕事、素敵だなあ。
小渡さんは弘前大学医学部附属病院の呼吸器外科・心臓血管外科に所属し、専門は先天性心疾患です。笑顔で泣けてしまうような写真に、「お子さんの手紙を見て、当時の自分も手術前は運動を制限されていたので、制限が外れて本当に幸せと感謝を感じたことを思い出しました」「もらい泣きする」「宝物ですね これからも たくさんの方々を助けてあげてください」「ひとつひとつ文字を書く姿を勝手ながら想像してしまいます」「5年前、3歳の時に長男が小渡先生に心室中隔欠損症の手術して頂きました!今でも長男は小渡先生の事を覚えていて、あの先生好きだったと言ってます」と、心を打たれたユーザーが相次いでコメントしています。
どんなドラマが秘められているのでしょうか。小渡さんに連絡したところ、このお子さんのお母さんの了解をとっていただき、取材に応じてくれました。
■どうしても漢字で書きたい
ーー頑張って宛先を漢字で書いていることが印象的です
「小学校低学年の男の子です。どうしても漢字で書きたいとお母さんに言っていたそうです」
ーー男の子と小渡さんは
「男の子は生まれて間もなく手術が必要になり、当時は私は手術の助手をする担当医でした。非常に重症で、救命困難ケースでしたがなんとか乗り切りました。その後成長に伴い再手術が必要となりました。当時執刀した僕のボス(鈴木先生)が退職されていたのですが、入院時に『小渡先生がいてくれるならなんの心配もありません』と言っていただきました。本人は記憶はないはずですが、お母さんからいろいろ聞いていたのかすごく僕に懐いてくれました」
退院時、「大変な手術だったけど無事合併症なく帰れますね、これでもうしばらくは手術が必要ないですよ」と説明する小渡さんに、「信頼してる先生にまた治療してもらえて本当によかったです。次もよろしくお願いします!」と男の子のお母さん。「その頃には後輩が上手くなってるので僕はサポートに回りますよ」と冗談めかすと、男の子は「先生がいい!」と即答。「マジ?じゃあ後輩に負けないように頑張んないとな」と小渡さん。なんて素敵なシーンなんだ…。
■また頑張ろうって気持ちに
何物にも代えがたい宝物のようなはがき。小渡さんは「人の命を救えた、その人や家族の明るい未来を作れた実感が感じられて、また頑張ろうって気持ちになれます。同時に、僕たちは人のことを不幸にしうる者だということも再認識させられます。謙虚に、1人でも多くの方が幸せになれるよう、頑張り続けるしかないなと思っています」と話します。
はがきは机の中にしまっていて、小渡さんは時折読み返しにやけているそうです。
(まいどなニュース・竹内 章)