「メロスは激怒した」 あの名作の世界観を和菓子で表現 味わえる文学「文菓子」が話題
秋と言えば読書。今、SNS上ではこの時期にぴったりの"味わう文学"が大きな注目を集めている。
「突然ですが、『走れメロス』が和菓子になりました。
その名も『文菓子』。作中の印象的な感情や情景に寄り添ったお菓子をお作りし『走れメロス』を読みながら、色付きの一文にあわせて一つずつお菓子を楽しんで頂きます。
例えば冒頭の『メロスは激怒した。』では、怒りの気持ちをスパイスを効かせたお菓子に込め、全部で4つの和菓子が登場します。
クリエイティブカンパニーWunderman Thompsonさんとお作りしました。」
と新作のお菓子を紹介したのは京都の老舗和菓子店、亀屋良長の吉村良和さん(@yoshimura0303)。
吹き寄せ、錦玉羹、琥珀糖、羊羹の四種のお菓子で太宰治の名作「走れメロス」を表現したという吉村さん。その斬新なアイデアに、SNSユーザー達からは
「めちゃくちゃ素敵ですね!活字好きにはたまらない一品だと思います。視覚情報だけでなく、味覚からも作品を味わえるなんて。私の好きな作品でもやってほしい…」
「これは画期的で面白い試みだと思い、亀屋良長さんの「文菓子」を買いました。中には『走れメロス』の冊子が入っていて、秋の夜長に読みながら食べてねって事ですね。文学シリーズになるのかしらん。」
など数々の驚きの声、称賛の声が寄せられている。
■投稿者さんに聞いた
吉村さんに話を聞いた。
ーーこのお菓子の開発経緯を聞かせてください。
吉村:ワンダーマントンプソン様から「文学の印象的シーンをお菓子にする」から一緒にお菓子を作ってくださいという依頼を受けました。面白そうだと思って依頼を受けさせていただきました。
ーー文学の世界を表現するにあたりこだわったこと、苦労されたことは。
吉村:各シーンから受けた印象を形にする作業でした。シーンも双方話し合いながら決めていきました。シーンから受ける印象は人によって違います。形や色にした時のイメージが微妙に違って苦労しましたが、お互いの意見を尊重し作り上げるのは醍醐味でもありました。
ーーそれぞれのお菓子について解説をお願いします。
吉村:「吹き寄せ〈激怒〉」は冒頭の有名な「メロスは激怒した。」のシーンを表現しています。メロスの怒りの気持ちを唐辛子や柚子胡椒などのスパイスを効かせた吹き寄せに込めました。
「錦玉羹〈祝宴〉」はメロスが村に戻り、妹に結婚式の支度をするよう伝える「結婚式は、あすだと。」のシーンです。人々が陽気に歌う牧歌的な結婚式の風景を錦玉羹に写しました。歓喜に酔う花嫁の気持ちはライチリキュールで香り付けすることで表現しました。
「琥珀糖〈水音(みずおと)〉」は城に戻る途中、疲れ果て自暴自棄になったメロスが立ち直るきっかけになった「水の流れる音が聞えた。」のシーンです。
メロスが再び希望をもち、走り出す糧となった水を琥珀糖であらわしました。ライム果汁を加え、水の清涼感を演出しております。
「羊羹〈夕陽と共に来たる〉」はもう間に合わないと止めに来たセリヌンティウスの弟子を振り切った「まだ陽は沈まぬ。」のシーンです。日没直前、メロスは到着し、二人の友情に改心した王。美しい夕景を描いたマイタイ羊羹は、ラム酒入り黒蜜をかけると夜へと移ろいます。
ーー反響への感想を。
吉村:取り組んで良かったと思います。文学を読んで響いた印象を形にするのは、大変だけどクリエティブで楽しい作業でした。思いを形にするという上菓子屋の昔から変わらぬ仕事だと思いました。
◇ ◇
文菓子「走れメロス」は数量限定で亀屋良長本店とウェブショップで購入可能。ぜひ多くの人に美味しい読書の秋を楽しんでいただきたい。
亀屋良長 関連情報
所在地:京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)