コワモテなのにおっちょこちょい 譲渡は困難だった元野良のシニア猫 優しいカップルと出会い幸せつかんだ
保護される猫は、動物保護団体のスタッフが自ら保護する場合もあれば、他団体や個人で活動する人との連携で迎え入れられる場合もあり、経緯は様々です。
2021年11月、保護団体・一般社団法人LOVE & Co.(ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)が迎え入れることにした、推定8~10歳ほどの「がんも」というオスの野良猫も、同団体と交流があった保護主さんからお願いされた猫でした。
■個人の保護活動家宅からラブコへやってきた
がんもはもともと野良猫で、2020年の7月にまず、個人で活動する人に保護されました。その出会いは、保護主の自宅前だったとのことですが、見ての通り、ややコワモテの猫でした。
「こんな顔をして外でがんばって生き抜いてきたことを考えると、今後は誰かの家で暮らせるようにしてあげたい」。そう考えた保護主さんは当初、がんもを一時預かり、不妊手術をした後、再び元いた場所へとリリースするつもりでした。いわゆるTNR(トラップ・ニューター・リターン)です。
がんもが懐いてくれたため、リターンはせずしばらく保護主さんの家でお世話をし続けることにしました。しかし、この保護主さんは諸事情あって、今後個人での活動を縮小することとなり、このがんもをラブコが引き受けることにしました。
ラブコに引っ越しをした当初のがんもは環境の変化になかなか馴れず、しばらく夜鳴きを続けていました。しかし、馴れてくると、シャイながらも本来の性格を見せてくれるようになりました。普段はおとなしくて穏やかな性格で、同じく部屋にいる仲間の猫たちも仲良くできる協調性のあるお利口さんの猫でした。
ただし、オッチョコチョイな一面も。そのシャイさから普段は部屋の隅っこなどが大好きながんもですが、ラブコのスタッフが夕方にブラインドを閉めただけで、「ごはんの時間っすね!」と勘違いして、出てきてしまうことも。
また、がんもがのんびり過ごしているところに、不用意に近づくと「シャーッ」と威嚇してくる割に、なでられると気持ちよくてウトウトしてしまうような良いところもあるようです。
■背骨に骨折の痕。脊髄の一部に損傷が残っていた?
ご飯をよく食べてくれるがんもでしたが、一時、便に異常が続いていたため、動物病院で診てもらうことになりました。
検査の結果、背骨に骨折した痕があり神経が詰まっている脊椎の一部が傷ついていることがわかりました。その原因が生まれつきなのか、それとも、事故なのかはわかりませんが、排便の異常はそのせいではないかとのことでした。
しかし、普段の生活は特に問題もないこと、そして大きな手術となれば、がんもの歳から言って相応の負担がかかることから、まずは食事で腸内環境を整え、改善するかどうか経過を観察することにしました。
■里親探し難航を覚悟するも、すぐに現れた希望者
シニア猫の域に達していること、健康状態、そしてそのコワモテのルックスから、スタッフは「現実的に、がんもの里親探しは難航するだろう」と考えていました。
しかし、がんもの里親募集をかけたところ、「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、まずお見合いの申し出がありました。この里親希望者はカップルで、とても優しそうな方でした。
当のがんも2人から優しさを感じ取ったのか、普段は人見知りして隠れてしまうはずなのに、この里親希望者さんの前では、いきなりなでてもらうこともできました。果たして、がんもはこの人のお家でのトライアルを経て、正式に譲渡されることとなりました。がんもは、ラブコに来て約半年で幸せをつかんだというわけです。
今ではすっかり里親さんの家に馴染み、ずっと前からその家で暮らしていたかのようにドッシリと構えているとのことです。その話を聞いたスタッフは「いつまでもそのままの姿で楽しく過ごしてね!」と目を細めながら、今のがんもの幸せいっぱいの姿を思い浮かべるのでした。
一般社団法人LOVE & Co.
https://love-and-co.net/
(まいどなニュース特約・松田 義人)