多頭飼育崩壊から救出された猫 悪性腫瘍で余命半年と宣告 一度はあきらめた譲渡募集 「ぜひ、うちに」とプロポーズする人が現れた! 

2020年のこと。神奈川県海老名市にある民家で144匹もの猫の多頭飼育崩壊が起きました。県内の保護猫団体がレスキューすることにしましたが、行政上の都合で猫たちの新たな行き場を一週間以内に確保しないことには、元の民家へと戻さなくてはいけません。

多くの保護猫団体やボランティアが協力する中、一般社団法人LOVE & Co. (ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)も参加。キャパシティの問題があり、2匹のみの引き受けでしたが、行き場を失った猫の世話をし、新たな里親さんへと繋ぐマッチングへの一歩を踏み出しました。

■保護当時ガリガリに痩せ首に傷を抱えていた

その2匹のうちの1匹が男爵(だんしゃく)というオス。推定年齢1~2歳ほどですが、ガリガリに痩せており、明らかに満足なエサを与えられていないように映りました。また、その首には他の猫から攻撃を受けたとおぼしき傷もあり、こういった点でも元いた多頭飼育崩壊現場の劣悪な環境を想像させました。

また、ラブコに来た当初の男爵は、あまりの恐怖から昼夜問わず大声で鳴き通していました。しかし、ラブコスタッフは慌てません。「男爵、大丈夫だよ。ここはもう怖くない場所だからね。ご飯をいっぱい食べて、元気に育ってね」と声をかけ、念入りに世話をすることにしました。

やがて、男爵は落ち着きを見せ、本来の性格を見せてくれるようになりました。ケージの中でもジッと過ごし、水やトイレを荒らすようなこともありません。ラブコにいる他の猫たちとの協調性もあり、本来はとてもお利口さんであることがわかりました。

■「このままであれば余命3ヶ月~半年」

男爵がラブコに来て半年ほど経った頃、スタッフが男爵の頭をなでると、コブのようなものがあることに気づきました。そのコブは意外と硬かったため、動物病院に連れていきました。

獣医師によると、「これは何かに頭をぶつけたり、他の猫からの攻撃でできたコブではなさそうだ」とのことで、細胞検査をすることになりました。スタッフは「念には念を」と、2つの機関で検査しましたが、結果はどちらも「線維肉腫」という悪性腫瘍でした。

この腫瘍は再発しやすく、できたのが頭部であるため手術は現実的ではありません。もし手術をしたとしても予後は良くなく、そして「このままであれば余命3カ月から半年」という告知をされてしまいました。

■腫瘍を抱えながらも元気に過ごす男爵

劣悪な環境で育ち、やっと安心できる環境を与えてあげられると思った矢先の腫瘍の発覚。胸を痛めるスタッフは、この先男爵がどれくらい生きられるかはわからないため、里親募集を見送り、生涯をラブコで送ってもらう覚悟をしました。

当の男爵自身はときどきお腹を下したり、アレルギー反応から目が腫れてしまうことがあったものの、頭の腫瘍が大きくなったり、痩せたり衰弱するようなことはありませんでした。むしろ、ラブコ内では一番おもちゃで遊び、ごはんも元気よく食べてくれる優等生。この男爵の様子は気落ちするスタッフの心を逆に勇気づけてくれました。

■再度募集をかけると、里親希望者さんが現れた

余命宣告されてから1年以上が経過しましたが、男爵の頭のコブは悪化するどころか小さくなっていきました。悪性腫瘍であれば自然と小さくなることは考えにくく食欲や元気もバッチリです。どういうことか原因ははっきりとは分からなかったものの、なんと腫瘍の診断が覆ることになりました。

めでたく改めて里親募集を再開したところ、一緒に保護されて先に卒業したきょうだい猫の伯爵を迎え入れてくれた里親さんから、ライブ配信中に公開プロポーズをしていただきました。この方は、当初より男爵のこともずっと気にかけてくれていました。「これ以上男爵にとっていいお家はない」とみんなで大喜びし、晴れて男爵の卒業が決まりました。

スタッフは改めて「一度は諦めた男爵の里親募集だけど、見事縁に繋がって本当に良かった」と喜びました。そして、この好例を胸に、今後も1頭でも多くの猫を幸せへと繋いでいきたい、と気持ちを新たにしました。

一般社団法人LOVE & Co. 

http://love-and-co.net/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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