空き家に棲みついた30匹の野良猫 保護された1匹は臆病でマイペース 縁に恵まれなかったあなたに幸せが舞い降りた
増え続ける空き家。政府発表によると、この30年間でその数は2倍以上といいます。空き家を放置すると崩壊の危険があるだけでなく、不法投棄の温床になったり、放火対象になったりと、近隣住民にとっての不安材料の一つとなっているわけですが、問題はこれだけではとどまりません。
空き家に棲みつく野良猫、野良犬などの問題もあります。
■空き家に棲みつく野良猫だったピロシキ
関東近郊のとある地域の空き家に野良猫が入り込み、繁殖を繰り返し増えてしまっているということが発覚しました。その空き家にいる野良猫は30匹。個人で猫の保護活動を行う人が、この空き家にいる野良猫にTNRを実施しましたが、それでもやはり30匹もの猫を放っておくわけにはいきません。
その一部の猫を、保護団体・一般社団法人LOVE & Co. (ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)が引き取ることになりました。そのうちの1頭がグレーの毛をしたピロシキでした。
個人で活動を行う人は、「空き家で暮らしていた猫たちは人間を怖がらない子が多く、新しい里親さんへのマッチングの可能性も高いはず」と言っていましたが、ピロシキに限っては、ラブコスタッフが保護した際、やけに警戒していました。
ラブコのオフィスでは、多くの保護猫たちが自由に過ごしていますが、そのフリースペースにピロシキはあまり姿を見せません。たとえば、何かの荷物の下にピロシキが潜り込むと、あまりの恐怖からか荷物ごと移動するありさまでした。
■臆病なのにマイペース。ときにはマウントも
そんな状態で数カ月が過ぎた頃のこと。普段は多くの人・猫がいる場に来たがらなかったピロシキが普通の表情でフリースペースで過ごしていました。その様子を見たスタッフは、ピロシキのズングリした体形と短いしっぽから「灰色グマ」に見えたと言います。まさにクマが冬眠から覚めたかのように、季節が暖かくなった頃から、ピロシキは日中でもフリースペースに出てきてくるようになりました。
臆病なのにどこかマイペースのピロシキですが、実はときどき隠れて他の猫にちょっかいをかけることも。言い換えれば、臆病さがあまって、他の猫にマウントを取るのかもしれませんが、そのややおとぼけの表情を見ていると、全てが許せてしまうような不思議な魅力のある猫でもあります。
■なかなか縁がなかったピロシキに幸せが訪れた
ラブコがオフィスを移転する都合で、今いる猫たちの預け先を探していたところ「ピロシキを迎え入れたい」という人が現れました。
これまでもラブコのSNSを見た人たちから何件かピロシキの里親希望の問い合わせがありましたが、これまでの通りの相当なシャイぶりと引きこもりがちな性格を伝えると、それ以上話が進みませんでした。
スタッフはそれでもピロシキのありのままの性格や行動の傾向を、里親希望者さんに伝えました。すると、その方は「大丈夫です。ピロシキが心を開いて自由に過ごしてくれるようにがんばります」と言ってくれ、見事ピロシキは、この優しい里親希望者さんと縁が結ばれました。
元いた空き家やラブコのオフィスとも違い、これからは「ずっと一緒」の家族と過ごせる環境なので、ビビリのピロシキもすぐに心を開き、穏やかに暮らしていくことでしょう。
ラブコには、このピロシキのように人馴れしていない、あるいはなかなか心を開いてくれない猫もいます。しかし、諦めることなく今後も1頭でも多くの猫を幸せに繋げていきたいとスタッフはその思いを新たにするのでした。
一般社団法人LOVE & Co.
https://love-and-co.net/
(まいどなニュース特約・松田 義人)