おにぎりのような毛並みの保護猫 昼間身をひそめるのは食器棚の上 仲間と一緒に幸せをつかんだ
2018年のある日のこと。とある住宅街の公園に子猫のきょうだい3匹が現れました。その子猫たちを見た近くに住む高齢女性は不憫に思い、毎晩エサを与えるようになりました。
子猫のきょうだい3匹は、その女性を見つけると、甘えて近寄ってくるようになりました。女性はこの子猫のきょうだいの命をなんとかして救ってあげたいと考えましたが、年齢的なこともあり、自分で世話を続けることは現実的ではないと判断。猫の保護活動に取り組む知り合いに思いを託し一時保護をお願いしました。
■スタッフが帰った後からが「僕の時間」
無事安全な場所へと保護されることになった3匹でしたが、数年後にはこの保護主さんの家も猫の数が多くなりすぎてしまったため、猫の保護活動を行う一般社団法人LOVE & Co. (ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)に預かってもらうことにしました。
そのうちの1匹がおにぎりというオス。白と黒の毛並みがまるでおにぎりのようなかわいいルックスでした。
最初にお世話をしていた保護主さんの元で、とにかく甘えん坊ぶりを発揮し続けていたそうですが、ラブコに来てからは人を避けるようになりました。天真爛漫で明るいように見えるおにぎりですが、用心深い面があり、そう簡単には心を開いてくれませんでした。
日中は食器棚の上から決して動きません。夜間の行動をペットカメラで確認してみると、ラブコのスタッフが帰った後、「やっと安心して過ごせるぞ」と言わんばかりの様子で、フロアの床でゴロゴロ伸びていました。
■後からやってきたシャ子のお兄ちゃん的存在に
そんな状態で8カ月が経過。少しずつ環境に馴れたところで、民家のガレージから保護されたシャ子(記事はこちら)がやってきました。
シャ子も当初は環境の変化にドギマギする様子でしたが、夜間におにぎりと過ごすことで、心を開くように。言わば、おにぎりはシャ子の友達であり、お兄ちゃん的な役割を果たしていたのかもしれません。
■すっかり人馴れし、新しい環境でもデンと構える
おにぎりが来て1年になる頃、ラブコではオフィスの移転にあたって、今いる猫たちのお世話を、預かりボランティアさんにお願いすることになりました。
しかし、おにぎりの預け先には先住猫が2頭いました。あれだけ用心深かったおにぎりなので、新しいお家では、また引きこもってしまうのではないかと心配しましたが、いざ引っ越しをすると「ずっと前からいますけど?」と言わんばかりの表情でデンと座り周囲を見渡していたそうです。
ラブコでの1年間で、「この人たちは悪い存在ではないんだ」「むしろ、優しくしてくれる人たちなんだ」と悟ったのか、とにかく保護当初、あるいはラブコが引き取った当初とはまるで違う成長ぶりを見せてくれました。
■仲間のシャ子と一緒に「ずっとのお家」をゲット!
同時期、ラブコではおにぎりの里親募集をスタートしました。初めて会う里親希望者さんにも、すぐに馴染んでくれるだろうと見込んでのことでした。
程なくして「おにぎりを迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。しかも、「仲良しのシャ子も一緒に」とのこと。シャ子はこの時点で人馴れが進んでおらず、「譲渡には時間がかかるだろう」と考えていたラブコのスタッフでしたが、これは朗報です。大好きなおにぎりと一緒なら、シャ子もいち早く環境に馴染んでくれるはずだからです。
おにぎりは仲間のシャ子と一緒にこの優しい里親希望者さんのお家に迎えられました。2匹を迎えるため、里親さんはおにぎりとシャ子が退屈しないよう、様々なものを準備してくれていました。
おにぎりはハンモック、シャ子はちぐらが大好きで、すぐに環境に馴染んで2匹一緒に遊んでいるとのことです。新しいお家に来て数日間こそ、あまりエサを口にしなかったおにぎりとシャ子ですが、すぐにモリモリ食べはじめ、部屋に家族がいなくなると、2匹一緒に部屋中を探検するようになったそうです。それだけ仲良しのシャ子と一緒に「ずっとのお家」をゲットできたおにぎりは本当に幸せ者です。
スタッフは他の猫たちも良縁に恵まれることを目指していきたいと、その思いを改めて強く抱きました。
一般社団法人LOVE & Co.
https://love-and-co.net/
(まいどなニュース特約・松田 義人)