京阪神を速達…俊足ぶりが話題の新快速、滋賀県内で「停車駅急増」の謎 それでも関東の快速列車と比較してみると…
京阪神を結ぶJR西日本の新快速はその俊足ぶりで話題になっています。しかし、複々線以外の区間はあまり注目されていないように感じます。複線区間となる草津~米原間、西明石~姫路間で検証してみました。
■滋賀県に入ると停車駅が一気に増える新快速
新快速の停車駅を複々線区間と複線区間で分けて見ていきます。複々線となる西明石~草津間の中間停車駅は明石、神戸、三ノ宮、芦屋、尼崎、大阪、新大阪、高槻、京都、山科、大津、石山、南草津の計13駅です。複々線区間は約120キロですから、単純計算すると約9キロごとに停車駅が存在することになります。
次に複線の西明石~姫路間、草津~米原間の停車駅の数を確認します。西明石~姫路間の中間停車駅は加古川駅のみ。同区間の距離は32キロなので、16キロごとに停車駅があります。
一方、草津~米原間の中間停車駅は守山、野洲、近江八幡、能登川、彦根の計5駅です。同区間は約46キロですから、停車駅は約8キロ間隔です。
このように比較すると、複々線区間と複線区間草津~米原間で停車駅の間隔はだいたい同じという結論に至ります。しかし、このままだと重要な点を見逃してしまいます。
実は新快速は滋賀県に入ると一気に停車駅が多くなります。先ほどの複々線区間の停車駅のうち、大津、石山、南草津の各駅は滋賀県にあります。山科~草津間は約17キロのため、複々線区間にも関わらず、停車駅は約4キロ間隔という高密度になります。
■なぜ滋賀県に停車駅が多いのか
滋賀県に停車駅が多い理由として、普通列車の運行区間が挙げられます。普通の基本的な運行区間は西明石~高槻・京都です。快速は高槻以東は普通に変わり、各駅に止まります(一部の快速は高槻~京都間に通過駅があります)。そして、京都駅以東は新快速が快速の役割を果たすような感じで、停車駅が多くなるという理屈です。
二つ目はライバルの存在です。滋賀県内では京阪大津線や近江鉄道線がJRと同じく東西を結びますが、普通しか存在せず、ライバルになり得ません。
一方、明石~姫路間には山陽電鉄線が走り、直通特急で約30分です。一方、JRは新快速で約25分、普通で約40分です。新快速の停車駅を増やすと、速達面で山陽に負けてしまいます。
三つ目は沿線開発です。2023年10月現在、最も遅くに新快速の停車駅になったのは南草津駅です。同駅が開業したのは1994年、新快速の停車駅になったのは開業から17年目の2011年のことでした。
南草津駅は立命館大学びわこ・くさつキャンパスの最寄駅です。また、駅周辺の開発により、乗客増が続いていました。地元の努力もあり、晴れて新快速の停車駅になったのです。
コロナ前の2019年には乗車客数で草津駅を抜き、滋賀県で最も利用客数の多い駅となりました。
西明石~姫路駅間では西明石駅の隣駅の大久保駅が頑張っていますが、まだ乗車客数では西明石駅には及びません。大久保駅に新快速を止めると明石、西明石、大久保の順に3駅連続停車となってしまいます。一方、2021年より通勤特急「らくラクはりま」が大久保駅に停車するようになり、同駅は特急停車・新快速通過という珍しい駅になりました。
このように滋賀県内で新快速の停車駅が増加する理由は複線・複々線以外によるダイヤ事情以外にも様々な理由が挙げられます。
■関東圏の快速と比較するとどうなるか
草津~米原間の新快速の表定速度は約85キロ。京都~米原間だと約80キロです。
関東ですと、中央線東京~立川間・中央特快の表定速度が約60キロ、常磐線・上野東京ライン東京~取手間・特別快速が約70キロです。
確かに新快速は滋賀県内に停車駅が多いというのは事実です。しかし、このように比較すると、滋賀県内でも新快速は「速い列車」に変わりはありません。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)