ほこりまみれの車庫で4匹を育てる母猫 人への威嚇は子猫を守るため 仲良しの保護猫と一緒に幸せをつかんだ
これまでに多くの行き場を失った猫を保護し、幸せへと繋いできた保護猫団体・一般社団法人LOVE & Co. (ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)。
同団体のオフィスにある保護部屋では、複数の保護猫たちが新しい家族との出会いを待っています。里親さんがみつかるまでの間、ここで過ごす保護猫たちは雑貨のパッケージモデルとなり、そして、その収益を猫たちの生活費に充てています。言わば「保護猫がはたらく会社」です。
ラブコのスタッフによれば、このような活動をしていると、野良猫の相談も寄せられることがあると言いますが、ある日のこと、個人携帯からスタッフに着信がありました。
電話を取るとやはり「野良猫を保護してほしい」という依頼。聞けば「自宅ガレージで野良猫が出産してしまい、母猫と子猫たち4頭が住みついてしまった。保健所に連絡すると殺されてしまうかもしれないから、なんとか命を救ってもらえないか」とのこと。電話主の様子から察するに、「すぐに行ったほうが良い」と判断したラブコのスタッフ。すぐに保護する際の道具一式を抱えて、現場に向かうことにしました。
■ガレージの荷物を慎重に撤去しながらの保護活動
向かった先のガレージは、シャッターなどはなく、道路に面してネットを張っているだけでした。普段は不要品を置くスペースとして使っているようで、とにかくいろんなものが山積み。保護するための道具を設置できる隙間すらない状態でした。かと言って、その「荷物の山」を崩してしまうことがあれば、猫たちにけがをさせてしまう可能性もないとは言えません。そこでスタッフは、上に積んであるものからひとつずつ撤去する作業から始めました。
たちこめる埃や虫に苦戦しながら荷物の撤去をしていた際、子猫2頭を洗濯ネットで保護することに成功。残りは母猫と子猫2頭ですが、隠れていた母猫が、状況に驚き飛び出して遠くへ逃げてしまいました。すぐにでも追いかけたいところですが、まずは荷物の撤去が先です。
どのくらいの時間、片づけていたのかわからなくなったころ、ようやく無事に残り2頭の子猫も保護することができました。次は母猫ですが、飛び出していってしまったため、現場に捕獲器を仕掛けさせてもらい保護できたところで連絡してもらうことになりました。
■「子猫たちを守る」とばかりに威嚇するシャ子
結果、母猫も翌日にはあっさりと捕獲器に入り保護されたと連絡が入り、スタッフはこの母猫も保護することにしました。
一時は離れ離れになった親子5頭の猫たちでしたが、一晩明けての再会に胸をなで下ろしたのか、一同丸まって過ごしていました。このうち、母猫は、大事な子猫たちがそばにいることもあってか、人への不信感が強く、威嚇してきました。その一方、そのまん丸の目の奥にはどこか優しさも兼ね備えているように映りました。
スタッフはこの母猫に「シャ子」という名前をつけてあげました。由来は、あのガレージの「車庫」から。ラブコスタッフのセンスを感じるかわいい名前です。
■シャ子の里親希望者さんが現れた
後に子猫たちは大きくなり、それぞれ新しい里親さんが決まったり、預かりボランティアさんのお家に引っ越しすることになりました。
冒頭でも触れたラブコのオフィスにある保護部屋でシャ子がひとりぼっちになってしまったので、スタッフはフリースペースで過ごしてもらうことにしました。最初はフリーな環境がかえって落ち着かない様子を見せたシャ子でしたが、他の猫たちとの交流もあり、次第に環境に馴れていきました。
また、それからほどなくしてラブコではオフィスを移転することになり、シャ子の預け先を探すことになりました。移転先の新しいオフィスでは、これまでのように保護猫たちをたくさん飼育できなくなったためです。
しかし、これまで何かと人間に対する不信感が強かったシャ子です。新しい預け先に馴染んでくれるのかどうか心配も抱えるスタッフでしたが、なんと、タイミング良く「シャ子を迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。しかも、シャ子とずっと仲良く過ごしていた友達の猫・おにぎりくんと一緒に迎え入れたいとのことでした。
■仲良し猫と一緒に、見事幸せをつかんだ
この里親希望者さんの家へとシャ子と友達猫・おにぎりくんのトライアルが始まりました。
里親希望者さん宅へ向かう当日、何も知らないシャ子は朝ごはん待ちで、いつも通りゴキゲンの様子でしたが、食後ケージから出してもらえないことから不安な顔を覗かせていました。その1時間後、シャ子はキャリーバッグに詰め込まれ、おにぎりくんと一緒に里親希望者さん宅へお届けしました。
予想通り、シャ子は新しい家で数日間のハンガーストライキをしていたようですが、里親希望者さんはそんなシャ子の性格全てを受けれてくれる優しい方でした。
やがてその優しさがシャ子にも通じ、後にはおにぎりくんと一緒にこの家に正式に迎え入れられることとなり、今では、あのハンガーストライキが嘘だったように仲良くのんびりと過ごしているそうです。
車庫で子猫たちを育て、ときには子猫たちを守り抜こうと人間を威嚇したシャ子。これからは相棒のおにぎりくんと一緒に、幸せいっぱいの猫生を過ごしてほしいと願うラブコスタッフでした。
一般社団法人LOVE & Co.
https://love-and-co.net/
(まいどなニュース特約・松田 義人)