肺炎と診断された生後3週間の子猫 酸素室でゆっくり成長 「もっと大きくなるんだよ」スタッフの願いは届かなかった

千葉県我孫子市と協働し、野良猫のTNR(捕獲・不妊や去勢手術・元の場所に返す)活動や保護活動を行っているボランティア団体・ねこ友会。

同団体スタッフは、2023年4月のある日のこと、捕獲したメス猫を病院へ運んでいました。運搬担当が異変に気付き車を停めてケージの中を覗いてみると、中で出産がはじまってしまいました。生まれたのは合計3頭。新生児猫の世話に慣れているねこ友会のスタッフにより、母猫・子猫ともに無事を確認した後、子猫たちの成長を見守ることにしました。

しかし、その数週間後。一番小さかった黒猫の体に異変が起き始めました。

■他のきょうだい猫に比べて体重が増えない

赤ちゃん猫が成長するための第一関門は、母乳を自力で飲めるかどうかです。毎日、十分に飲むことができれば、順調に成長する子猫で1日10~20gぐらいずつ体重が増加していきます。母猫と子猫たちは預かり担当のスタッフから大切にお世話され、子猫たちの体重も毎日こまめに計測されました。

しかし、誕生から3週間経った頃のこと。産まれた子猫のうち、黒猫のポパイの体重が、朝から5gも減少していました。子猫たちの中で、一番大きな子が443gあるのに対してポパイは308gでした。

子猫の成長期の中で一番早く大きくなる時期に、体重が減少するのは明らかな異常です。また、ポパイの呼吸には風邪のような症状が見られました。ほかの子猫たちに感染する恐れがあるため、ねこ友会の預かりスタッフは、急きょ猫たち全頭を、動物病院に搬送することにしました。

■母猫の猫風邪が感染し肺炎に…

手のひらに乗るほど、あまりに小さい体のポパイは動物病院に連れていくときから酸素室で過ごしました。そして、動物病院でのレントゲン検査の結果は「肺炎」。肺に白い影が見えると言います。一緒に過ごしていた他の子猫たちも肺にやや影が見えるものの、ポパイほどの症状ではありませんでした。

感染源は母猫の猫風邪だったようですが、ポパイの肺炎は「特に炎症が重い」と獣医師は言います。そのため、ポパイは、3時間ごとに流動食をシリンジで強制給餌。こういったケアのおかげで、ポパイの肺炎はほどなくしておさまりました。

しかし、その数日後、ポパイの体調に再び異変がおきました。

■台風が去った日の翌日、虹の橋を渡った

最初に異変を感じたときと同じような呼吸をしているのです。再び動物病院で診てもらうと、肺炎が再発しているとのこと。最初の治療後のポパイの体重はゆっくり増加していたものの、一番大きな子の6割程度ほど。この小さな体で、肺炎を乗り越えられるのだろうかと、スタッフは不安を抱きました。

幸い、酸素室の中でもポパイの成長は進みました。そんなポパイを前に「がんばってね! もっといっぱい大きくなって絶対良くなるんだよ!」と声をかけるスタッフ。回復の希望を抱ける出来事でした。

しかし、8月に入った頃から、ポパイは飲み込む力が弱くなっていきました。そして日本を縦断した台風が去った日の翌朝、意識レベルが低下し、ポパイは息を引き取ってしまいました。このときの体重はきょうだいの4分の1ほどで、発症してから3カ月間、頑張った末の旅立ちでした。

残念な結果になってしまったポパイでしたが、それでも母猫が捕獲されず外での誕生だった場合は、さらに短く苦しい日々を強いられていたかもしれません。短い猫生でしたが、親猫やきょうだい猫、そしてねこ友会のスタッフの愛情を受けて過ごせた日々は確かにありました。虹の橋の向こうで思い出してくれることを願っています。

ねこ友会

https://nekotomokai.amebaownd.com/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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