緊急保護の2日後に旅立った子猫 お供えのフードを肺炎と闘う先住猫が初めて口にした 「生きたい」という願いを感じたんだね

千葉県我孫子市と協働して猫のTNRや保護活動を行う保護猫団体・ねこ友会(以下、ねこ友会)。各地の野良猫の保護をはじめ、多頭飼育崩壊にあった猫たちの命を救い、世話をし続けながら、幸せへと導いてくれる新しい里親さんへの譲渡活動を行なっています。

2023年7月、ねこ友会の代表が野良猫のTNR活動を行い、リリースする場所へ行ったところ、近くにまだ小さいオスの黒い子猫が倒れているのを発見しました。

そのそばには母猫がいましたが、なす術もない様子。ねこ友会の代表は一も二もなく、この子猫を緊急保護して動物病院へと連れていきました。

■「生きるんだ」と必死にフードを口にした風太

代表はすぐに「風太」という名前をつけ、獣医師に診てもらうことにしました。体重500gでおよそ生後2カ月ほどといいます。倒れていた要因は重度の貧血。貧血タイプは不明で、すでに口腔内は真っ白で予断を許さない状況でした。

脱水が見られたため、補液点滴をし免疫対策としてインターフェロン、栄養補給にビタミン剤を投与。目薬と点鼻薬、そして抗生物質。動物病院では、風太にあらゆる手を尽くして処置してもらいました。

自力での採食が難しい様子。嚥下状態がわからないため、少量ずつ強制給餌をして様子を見る必要がありました。パテ状のウェットフードを与えたところ、なんとか15mlほど食べてくれました。小さな体であっても「必死に生きるんだ」とがんばっているように映りました。

「なんとか命をつないでほしい」と願うねこ友会の代表でしたが、その思いが通じたのかしばらくすると自然排尿も見られ、補液のお陰で脱水が改善されたことが確認されました。一安心した代表はねこ友会の預かりボランティアさんのお宅に、風太のお世話を委ねることにしました。

■「これ以上の改善は望めないだろう」

しかし、翌日になっても風太の歯肉も舌も変わらず真っ白のまま。

改めて動物病院に連れていき、獣医師に経過を診てもらいましたが、前日の束の間の改善から一転、風太の体調は悪化しているとのこと。さらに触診の結果、腹部に異常な硬化も見られると言います。結果、「このまま治療を進めても、これ以上の改善は望めないだろう」と診断され、風太は再び預かりボランティアさんの家へと帰ることになりました。

少しでも長くその命をまっとうしてほしいと願い、預かりボランティアさんは風太を酸素室の中で過ごしてもらうことにしました。貧血は、体中に酸素を運んでくれる血液中のヘモグロビンが不足している状態。普通に呼吸をしていても酸素が足りないためです。預かりボランティアさんは奇跡が起きることを信じ、見守り続けました。

しかし、その思いは届くことはなく、深夜、風太は酸素室の中で眠るように息を引き取りました。

■風太が旅立った後、先住猫のポパイがご飯を…

実はこの預かりボランティアさんの家には、重度の肺炎と戦うポパイという先住の子猫がいました。風太と似たような月齢のポパイは長引く肺炎によりそれまでは流動食しか受け付けませんでした。

風太が静かに旅立った日、供えられた風太のドライフードをポパイが自ら突然食べはじめました。ポパイにとって生まれて初めてのドライフードでした。風太が「生きよう」と強く願った思いをポパイが感じ取り、ポパイがその代わりにドライフードを口にしたように映りました。

ねこ友会の代表が倒れているところを見つけてから、2日で旅立った風太。野外で生まれ、母猫の愛情だけで過ごしてきたことでしょう。最期に人間の優しさに触れた風太には、来世では、元気いっぱいの猫生を生きてくれることを願うばかりです。

ねこ友会一同はこれからも1匹でも多くの命を救えるよう、保護活動への意気込みを新たにしました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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