道端で動けない猫 骨盤を折る大けがだった 大手術を乗り越えリハビリに励む 安静中も「体をなでて~」と甘えん坊
千葉県我孫子市と協働し猫のTNRや保護活動を行う猫保護団体・ねこ友会(以下、ねこ友会)。同団体のもとに2023年7月のある日、TNR活動で関係のある人からSOSの一報が入りました。「道端で動けなくなっている猫がいるので、なんとか保護してもらえないか」というもの。
スタッフはすぐにこの猫を保護することにしましたが、下半身が全く動かない様子。すぐにねこ友会の活動に協力的な動物病院へと連れていくことにしました。
■骨盤骨折が判明し緊急入院
動物病院でのレントゲン検査の結果、なんらかの事故によってこの猫は骨盤を骨折していることが判明。手術に対応できる大きな病院へとすぐに移動することになりました。
大きな病院では、血液検査、超音波、そしてもう一度レントゲン検査。すると、骨盤の中心が潰れ、折れた骨の一部が骨盤の上に重なってしまい、さらに骨盤の幅が狭くなり、複雑に骨折していることがわかりました。
スタッフは心を痛めましたが、まずはなんとか手術がうまくいき、障がいが残らないことを願いました。
手術の実施までの数日、この大きな病院に入院することになりましたが、その際、この猫にスタッフは「颯汰(そうた)」と名付けました。
以前、保護した子猫の風太と同じ地区にいた猫なので「風」にちなんだ「颯」という字と、水で悪いものを取り除くという意味がある「汰」という字からこの名前にし、どうか手術がうまく進み、元気な姿になってほしいと強い願いを込めました。
颯汰は自分では半身を起こせないので自力で排泄ができません。さらに事故のショック、慣れない環境への移動、激しい痛みからか、入院して間もない頃は、食欲もありませんでした。
しかし、ねこ友会のスタッフや病院の職員さんたちによる「全力で助けたい」という思いが通じたのか、やがては颯汰は、次第に心を開くようになり、数日すると病院スタッフがなでると、嬉しそうにゴロゴロ言うようにもなりました。
■「生きる力」を発揮してくれた颯汰
手術に際しては、ご飯をしっかり食べて体力を温存しなければなりませんが、この間も颯汰は痛みにじっと耐え、そしてようやく手術を受けることができました。
折れた骨盤をつなぐため、背中から腰にかけての大きな執刀を行いました。担当の獣医師からは「長めのプレートを使用したので、場合によっては将来的に再手術の可能性もある。手術自体は成功したが、麻痺が残るかは別の問題なので経過観察が重要」という報告を聞きましたが、まずは手術がうまくいったことを、関係者一同おおいに喜びました。
そして、手術から2日目。颯汰は自分で身体の向きを変えて座れるようになりました。食欲も戻り、自力での排泄も確認できるようになりました。また、痛み止めを投与しているので痛そうな様子も見えず、颯汰の回復力、精神力の強さに感心し「すごいね、颯汰!」と褒めてあげました。
■無事退院し甘えん坊ぶりを見せるように
後に颯汰はさらなる回復を見せ、めでたく退院し、術後暫くはねこ友会のシェルターでお世話に来てくれるスタッフたち に見守られかわいがられて過ごし、その後、預かりボランティアさんの家でリハビリに励むことになりました。
物静かで優しい性格の颯汰は預かりボランティアさんの家のたくさんの猫さんたちとも仲良くなり、月齢の近い猫さんとはかけっこやニャンプロをする毎日で元気いっぱいに過ごしています。そして、さらに甘えん坊ぶりを発揮し、体を撫でてほしくて膝に乗ってきたり、後をついてきたりすることも。
怪我の完全回復は難しいですが、それでも毎日朝晩継続してリハビリをがんばっている颯汰は、近々、里親募集することになるそうです。壮絶な経験をした颯汰に、近い将来、幸せな第二の猫生が訪れることを願うばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)