居場所がない2匹の茶トラ猫→直感的に「うちへ」 甘えん坊になるまで1ヶ月、ペットロスを癒やしてくれた
「ペットロス」
大切な“家族”との別れを受け止め切れず、喪失感や後悔にさいなまれて苦しむ人は少なくありません。愛知県名古屋市に住むテツさんもそうでした。
愛猫・トラくんが腎臓病で旅立ったのは9年前。ビニール袋に入れられ捨てられていたところを保護され、知人を通じてテツさんの家にやって来た茶トラの雄猫でした。
「最初は“預かりボランティア”のつもりだったんです。それがそのままうちの子になって」(テツさん)
それまでにも“預かり”をしたことはありましたが、正式に家族として迎えたのはトラくんが初めて。「警戒心がまったくなく、猫っぽくないのんびりした子だった」そうで、推定1歳半から2歳だったと言いますから、健康であれば10年以上一緒に暮らせるはずでした。でも、腎臓病を患いわずか4年で天国へ。テツさんは「思ってもみなかった」ペットロスになりました。
「食欲がなくなり、睡眠もあまり……トラの話をするたび悲しくなりましたし、スマホの中にある写真を見られなくなりました」
テツさんはもともとお酒が大好きで、毎晩のように泥酔するまで飲んでいたそうですが、ある日を境に禁酒。以来、1滴も飲んでいません。
「トラが死んでしばらくは飲んでいました。でも、『お酒を飲んでいなければもっと一緒にいてやれたのに』という後悔が生まれて、きっぱりやめたんです。知り合いはみんなびっくりしていましたね」
■心に響いた「居場所がない」という言葉
そんなテツさんの心を癒してくれたのが、今、一緒に暮らしているライくんとレンくんです。偶然なのか必然なのか、2匹もやはり茶トラの雄猫。名古屋市内で保護され、2021年夏にテツさんの家族になりました。
「同じ場所で同じような柄の子が複数保護されたそうです。子猫だったけど、僕が聞いたときには少し大きくなりかけていて、しかもまったく人馴れしていないから、このままだともらい手が見つからないかもと……」
当時、保護していた人の家にはほかにもたくさんの保護猫がいて飽和状態。テツさんの胸に響いたのは「居場所がない」という言葉でした。
「今のままでは『たくさんの猫の中の人馴れしてない2匹』で終わってしまう。そう思ったら居ても立っても居られませんでした。トラが死んでからも預かりはしたことがあったのですが、正式に迎えようと思ったのはライとレンが初めて。うまく言語化できませんが、とにかく直感的に『うちへ』と思ったんです」
人馴れしていない猫を育てた経験もあったことから、テツさんへの譲渡はスムーズに進みました。天国のトラくんが「そろそろどう?」と茶トラくんたちを送り込んだのかもしれません。
家に来た当初はとにかく怯えがひどく、少し近づくだけで「シャー」。特にレンくんは威嚇がひどくて、触れるようになるまでに1ヶ月以上掛かりましたが、今では2匹とも「レベルの高い甘えん坊」になりました。
「2匹の中のルールがあるみたいで、同時に甘えてくることはないんです。いつも交互で、1匹が甘えているときもう1匹はそっけない。2匹いると何かと忙しいんですよね。それで気がまぎれたところもあるかもしれません。トラのことを忘れている時間ができて、ライレンと暮らしているうちに、後悔や悲しみが徐々に癒やされていきました。
喪失感や後悔が完全になくなったわけではありません。それは今回、記事のための写真を探していて改めて感じました。2匹が来たから元気になりました、というような簡単なものじゃない。
ただ、今ペットロスで苦しんでいる方に同じ経験をしている僕から言えるのは、僕はライとレンを迎えてよかったと思っているということです」
(まいどなニュース特約・岡部 充代)