「ネコババ」「犯罪者」開始1カ月、インボイス巡り誹謗中傷 事務負担の増加などマイナスの影響訴える声が続々 緊急調査で浮き彫りに
インボイス制度が10月に始まってから1カ月になるのを機に、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が緊急意識調査を実施した。フリーランスだけでなく多くの会社員からも回答が寄せられたが、うち7割が「仕事の見通しが悪い」「廃業を検討している」などのマイナスの影響を指摘。未登録事業者が「ネコババし続けるつもりか」「犯罪者」といった誹謗中傷を受けた事例も複数あったという。
同会は9月末、制度に抗議する54万筆超のオンライン署名を岸田文雄首相に提出。「フリーランスや個人事業主だけではなく、全ての人の暮らしに悪影響を及ぼす制度」だとして、10月以降も見直しや中止を求めて活動を継続している。
10月20日から31日にオンラインで実施した緊急意識調査には、フリーランスや会社員、経営者ら計2868人から回答が寄せられた。内訳は年商1000万円以下の免税事業者が60.0%、年商1000万円超の事業者7.2%、会社員28.5%、その他4.4%(※小数点以下第2位を四捨五入しているため100にはならない)。職種では、経理や経営、財務に関わる人とクリエイティブ系が6割を占めた。
インボイス発行事業者の登録状況については、「登録済み・登録検討中」が5割に上ったが、うち4割が「登録しなければ仕事が継続できなさそう」という消極的理由で登録、もしくは登録を検討しているという実情が明らかに。取引先から「登録は自由だが、登録しないなら契約は継続しない」などと事実上の強制があったとする証言も散見された。
取引や業務の変化については、マイナスの影響を訴える回答が目立った。2人に1人が「経理事務負担の増加」を感じており、3割超が「説明や交渉の負担」「手取りの減少」を訴える結果に。「事業・仕事の見通しは悪い」「廃業・退職・異動を検討」「すでに廃業・退職・異動した」を合わせると、 回答者全体の約7割がインボイス制度によってマイナスの影響を受けていると答えた。
未登録であることを理由に一方的な値下げや取引排除が行われた事例は200件以上。中には「犯罪者」「着服」 「脱税」といった誹謗中傷を受けたとする免税事業者の声も少なくなかった。
・取引先から「着服、ネコババし続けるつもりか」と誹謗中傷を受け、精神的ダメージになっている。政府やマスコミはいつまで「間接税」という嘘をつき続けるのか。心を病む人が増えると考えられる。 あまりにひどい税制だ。不安とかのレベルではなく怒りしかない。(50代/北海道札幌市)
・カメラマンです。「益税」「ポッケナイナイ」「ネコババ」「そんな仕事やる価値ない」。そうした言葉の数々に、正直やる気を失っている。(50代/東京都)
・俳優とプログラマーという複数の仕事をフリーランスでやることで生計を立てている。「インボイス登録するつもりはない」と言ったら、ある会社の社長から「脱税の手伝いはできないからちゃんとしろ」と言われ、「脱税ではない」反論したら喧嘩になった。とことんマイナスにしかなっていない。(40代/神奈川県藤沢市)
同会は「複雑を極める制度設計と行政による周知不足、相談機能の不全、多くの当事者にとって相談先がない中で現場は混乱しており、経済活動や人生の将来設計にまで影を落としている現状が浮き彫りとなった」として、11月13日、衆議院議員第2議員会館で記者会見を実施。こうした事例を報告した上で、財務省、国税庁、公正取引委員会、中小企業庁に要請書を提出し、制度の中止、廃止をあらためて強く訴えた。
(まいどなニュース・黒川 裕生)