好奇心旺盛で行動力があるのに…超がつく心配性! 理解されぬ「HSS型HSP」の生きづらさ…専門カウンセラー・時田ひさ子さんに聞いてみた

HSP(Highly Sensitive Person)とは、感受性が異常に高い人たちのことを指し、その特性による弊害も大きい。学術的な基準はないが、全体の約20%がHSPだと考えられている。書店には多くの関連本が並び、ネット上には情報が溢れ、HSP診断なるもので簡単に自己診断もできる。しかし安易に自分はHSPだと決めつけるのは良くない。

HSPは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が1996年に提唱した心理学上の概念で、精神医学上の概念ではないもののHSPの側面からアプローチをするメンタルクリニックも多い。未研究の分野で学術的にいえることは少なく、うつや発達障害と混同されることもある。いっぽうでHSPだと自覚し、正しい知識を得たり適切なカウンセリングを受けたりして生きづらさから解放される人も少なくない。

時田ひさ子さんは、HSPのうち約30%(全体の約6%)いるといわれるHSS型HSPを専門とするカウンセラーで、これまでHSPの枠に収まり切れなかった人たちから「しっくりきた」と関連の著書が話題を呼んでいる。HSS(High Sensation Seeking)型HSPとは、HSPの特性である高い感受性を持ちながら、同時に好奇心が強く刺激的なことを求める気質を持ち合わせる人で、時田さん自身HSS型HSPを自認している。

「世の中の大半は非HSP(HSPに当てはまらない人)で、HSPとは感じる度合いも範囲も異なります。HSS型HSPは感受性が高いうえに好奇心旺盛で行動力もあり、二つの相反する気質が常に綱引きをしている状態で心休まることがありません。『相反する気質なんて誰にでもあるよ、気にし過ぎだよ』と多くの人はそう思うかも知れません。しかしそれは非HSPの考えであって、HSS型HSPからすると『何で分からないのだろう?』ともどかしい気持ちになります。私自身がHSS型HSPですので、一人でも多くの人が私の知見で生きづらさを改善していただけるなら、そんな思いで本を出版しました」と時田さんは話す。

HSPの特性である慎重さや洞察力の高さを過大評価し、「HSPは優秀」「能力が高い」そんな偏った情報も多く、自らをHSPだと自慢げに公表する人たちも見かける。HSPは感受性が異常に高く、その特性を生かして能力を発揮している人もいるかも知れないが、だからと言ってHSPが優秀だということにはならない。多くはその高すぎる感受性によって生きづらさを感じ、思い通りの人生を歩めていない自分に不甲斐なさを感じている。

「HSPを『繊細さん』と呼ぶことから、些細なことにも落ち込んだり心配したり、ネガティブな方向ばかりにスポットが当たりがちですが、非HSPが見過ごすような些細なことにも感動できたり喜びを見出せたり、ポジティブな方向への感受性も高いんです。HSS型はそれに加えて好奇心旺盛で何でもやりたい人たちですから、やりたいことを否定されず、感受性が高いことを良しとして育てられたなら、慎重ながらも自分の意思でどんどん物事を進められる自立した大人になっていくと思います。反対にやりたいことや素直な気持ちを否定される経験を積み重ねたなら、悪い意味で空気を読んで自分の意思を無意識に押し殺し相手や周囲に合わせる、そんな思考癖がついて常に原因の分からない不満にさいなまれます。大半が後者だと思いますし、かつての私もそうでした」

HSS型HSPの代表的な悩みの一つに「自分のやりたいことが分からない」というものがある。やりたいことはあるが、第三者の目を気にしたり固定観念にしばられたりしてやりたい気持ちを抑え込んでしまう。例えば、「ひと月かけてアメリカ本土を一人旅したい」そんな欲求があったとする。「そんな時間は取れない」「アメリカはいま物価が高いし治安も悪い」「そんなことに挑戦する年齢でもない」などとあれこれ理由をつけて、やりたい気持ちを無かったことにする。そんな思考癖がつくと自分のやりたいことが本当に分からなくなり、何歳になっても自分探しを続ける負のスパイラルに陥ってしまう。自分の本当の気持ちに気づき、認めることが大切だと時田さんは解説する。

「アメリカ本土を一人旅したいのは本当の気持ちなのに、あれこれ理由をつけた末に『実はそれほど行きたくなかったんだ』と、こちらを本当の気持ちだと勘違いしてしまう。アメリカ一人旅をしたい気持ちを否定するのではなく、自分はアメリカ一人旅をしたいんだと認める。本心を認めることで自分の気持ちに素直になり、やりたいことも少しずつ分かるようになっていきます。HSS型に限らずHSPは自分のネガティブな感情に対して『そんなことを思ってはいけない』と自分を戒めたり、自分にとってつらい出来事を『いい経験になった』と前向きにとらえようとしたりします。こういった本心を押し殺したポジティブ思考もHSPはしがちで、生きづらさの原因になっています」

HSPに限らず人は他人の感情を推し量るとき、自分を基準にするほかない。他人も自分と同じような感情や感覚を持っていると考えてしまう。しかし非HSPとHSPの感受性はかなり異なる。それを知らず非HSPの言動を「人の基準」だと理解しているために「自分はメンタルが弱い」「いつまで経っても大人(の人格)になれない」「自分は何も成し遂げられない」HSPの多くはそんな呪縛に囚われている。しかしHSPを自覚し、非HSPとの感受性の違いを正しく理解することで、これらの呪縛から解き放たれる。実は筆者もHSS型HSPを自覚し理解することで、それまで悲観的にとらえていた自分の高い感受性と無節操な好奇心を良きものとしてとらえられるようになった。

▽時田ひさ子(HSP/HSS LABO代表カウンセラー)

https://hsphsslabo.com/profile

(まいどなニュース特約・北村 守康)

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