ネグレクトされ遺棄されたミックス犬 愛護センターで小さな体を震わせていた みんなの愛情を受け本来の明るさを取り戻した
笑顔で尻尾をフリフリしながら、甘えてくる小さなワンコ。推定年齢5~7歳ほどのミックス犬で、名前はリシャちゃん。愛らしい表情からは想像できないほど辛い過去を持つワンコでもありました。
飼い主から満足な世話をしてもらえず、遺棄され2022年2月に愛知県の動物愛護センターに収容されることになったワンコでした。
動物愛護センターでは通常、飼い犬とおぼしき場合、一定期間飼い主からの名乗りを待ちますが、残念なことにリシャちゃんには連絡はなく、その期限が過ぎてしまいました。そうなると、次に考えられるのは殺処分です。この話を聞いた愛知県を拠点に動物の保護活動を行う団体・一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)のスタッフは、このリシャちゃんを引き出すことにしました。
■小さな体を震わせ不安気な表情
SORAのスタッフがリシャちゃんを引き上げに行った際、現在の様子とはまるで違い、小さな体を震わせながら不安そうな表情だったといいます。そんなリシャちゃんを前にスタッフは「大丈夫だからね。これからは私と一緒に遊んでね。そして元気を取り戻したら、優しい家族との出会いを目指そうね」と声をかけました。
わゆるネグレクトを経て捨てられたワンコです。飼い主がリシャちゃんの健康面でのケアを行なっているとは到底考えにくく、スタッフはすぐに動物病院に連れていきました。
両膝に蓋骨脱臼(がいこつだっきゅう)、気管虚脱、両変形性股関節症といった持病を抱えていることがわかりました。獣医師と相談したスタッフはすぐにリシャちゃんに手術をしてもらうことにしました。入院は約2週間。この間に、複数の手術が行われることとなりました。
この間、驚いたことがあります。それがリシャちゃんの我慢強さです。
リシャちゃんにとってみれば、飼い主に捨てられ、ひとりぼっちで動物愛護センターに収容され、さらにいきなり知らない人が目の前に現れ、知らない場所で体のあちこちを検査されるわけですから、相当な不安があって当然です。実際、入院中は不安げな表情で過ごしていたそうです。
それでもリシャちゃんはスタッフや獣医師、そして動物病院スタッフの声かけなどから「この人たちは悪い人たちではないかもしれない」と、少しずつ心を開くようになり、大暴れすることなく、じっと我慢して手術を乗り越えました。
もちろん、SORAのスタッフは、ここでもリシャちゃんをいっぱいほめてあげました。「すごいね、リシャちゃん! 手術は辛かったかもしれないけど、このおかげで、これからはもっと自由に楽しく生活できるよ」と。
■本来の明るい性格を出してくれるように
手術を終えたリシャちゃんは、SORAのスタッフの家で過ごすことになりました。
術後間もないことに加え、まだ完全にリシャちゃんの不安が払拭できたわけでもないことから、スタッフはよりいっそうの愛情を注ぎながら接するよう心がけました。そして、スタッフと一緒に根気強くトレーニングを積んでいったおかげで、今では本来の性格である満面の笑みを出してくれるようになりました。本来のリシャちゃんは、明るく元気いっぱいのワンコであることがわかりました。
■他のワンコに威嚇する気の強さも
スタッフが「リシャちゃん!」と呼ぶと、「待っていました!」とばかりに尻尾を振りながらそばに寄ってきて、なでてあげると満面の笑みを浮かべ甘えてくるようにもなりました。散歩も大好きで、うれしそうに歩き回ります。
少々負けん気の強いところもあるようで、散歩中に出会う他のワンコに威嚇することも。あるいは、散歩中に見つけた虫を夢中になって追いかけることもあります。
愛情を注がれなかった以前の環境に比べ、現在の時間はきっと自由で楽しいはず。多少ヤンチャな一面があったとしても、今のリシャちゃんはワンコらしい幸せな日々を送れていると思います。今のリシャちゃんの様子からは、暗い過去、心に負った傷は感じられません。
SORAのスタッフ同様、リシャちゃんにたっぷりの愛情を注ぎ、その一生を家族として迎えてくれる里親希望者さんを募集中です。辛い過去はあったけど、明るくかわいく成長してくれたリシャちゃん。今後、優しい里親さんとつながることを願うばかりです。
一般社団法人SORA小さな命を救う会
https://sora-chiisana.org/
(まいどなニュース特約・松田 義人)