知っておきたい「ペット保険」 愛する動物の医療費・賠償リスクに備える【弁護士が解説】
不慮の事故や病気による急な出費に備えて、保険に入っている方は多いと思います。ペットにまつわる保険も、近年多くの商品がみられます。ペットに保険なんて関係あるの?と思われるかもしれませんが、高額な治療費やペットの行動による賠償など、意外とお金にまつわるトラブルは多いものです。
▽1 治療費の補償
ペットには人間のような健康保険制度がないため、動物病院でのペットの診療費は全額自己負担となります。また、治療費も、動物病院ごとに自由に設定できます(自由診療)。
そのため、愛するペットが病気や怪我をしたときには、思っている以上に高額の診療費がかかってしまうことがあります。最近は獣医療も高度化してレントゲンやCT・MRI検査なども当たり前に行われるようになっており、獣医療にかかる治療費もどんどん高額化しています。難しい外科手術では100万円を超えるケースも見られ、経済的な理由から、泣く泣くペットの治療を諦める方もいらっしゃるようです。
このような経済的な負担を少しでも回避するために、民間の保険会社がペット保険サービスを提供しています。
サービスの内容は商品によっても様々ですが、加入に年齢制限があることが一般的です。また、多くは1年ごとに更新する契約となります。人間同様、加入時には健康状態や持病に関する告知が必要です。
これらを踏まえると、ペット保険に加入するかどうかは、加入制限年齢を見据えて、早期に検討したほうが良いと言えるでしょう。
一般的なペット保険の補償範囲は、通院、入院、手術の3種類で、補償のタイプには治療費の一定割合(50%や70%とするものが多いです。)を補償するタイプと、一定の金額を補償するタイプの2つがあります。いずれのタイプについても一回ごとの補償限度額や補償の日数に制限が設けられています。ですので、入通院費用や手術代を必ず全額賄える内容にはなっていません。また、ワクチン接種や不妊去勢手術、ある種の感染症の治療、漢方治療やサプリメントによる治療など、補償対象外の治療もありますので、加入を検討する場合は、各保険の特性をよく比較検討するようにしてください。
▽2 賠償金の補償
ペットが他人に怪我をさせたり、他人の物を壊してしまった場合、飼い主が賠償責任を負担しなければなりません。
このような場合に対応できる保険として、個人賠償責任保険があります。個人賠償責任保険とは、日常生活上、法律上の損害賠償責任が発生した場合に、これによって生じた損害を補償してくれる保険です。単体で加入するタイプの保険もありますが、自動車保険や火災保険に特約として付帯できるものや、クレジットカードに付帯するタイプもあります。また先述のペット保険にペット賠償責任特約をつけられる場合もあります。
補償内容は保険商品によって異なりますが、一般的には損害賠償金、裁判費用、弁護士費用などが対象になります。また、自動車保険の個人賠償特約では、示談交渉を代行する示談代行サービスもあります。
個人賠償責任特約は、意識せず重複して加入していることも珍しくありません。しかし、二重三重に加入していても、一つの保険事故で補償されるのは実際の損害額だけです。2倍3倍に補償を受けられるわけではありません。
加入している保険に個人賠償責任特約が付帯されているか、重複加入していないか、加入している特約の補償内容・範囲がどのようになっているか、ペットの加害行為が補償対象に含まれているか、これを機に、一度ご加入の保険の内容を見直してみてはいかがでしょうか。
◆石井 一旭(いしい・かずあき)京都市内に事務所を構えるあさひ法律事務所代表弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。