【プロが解説】もし住宅ローンが払えなくなったら…? 絶対やってはいけないことを教えます

「家を買う」という話はよく聞きますが、「家を売る」となるとよく知らない人も多いのではないでしょうか。家を売る前に知っておきたいあれこれを、不動産売却一筋15年で「売り主のミカタ」のIESUKU代表・田端梓さんに聞きました。

■もしも住宅ローンが払えなくなったら

「突然ですが質問です。もし住宅ローンが払えなくなったら、どうしますか?」

-え、ローンを払えない?どうしたらいいですか?知らないです。

「そうなんです。知らない人が大半なんです。でも当然です。なにしろ家を買う時は不動産業者も銀行も教えてくれないのですから。でも意地悪じゃないんですよ。希望輝く明るい未来で頭がいっぱいの人に、もしローンが払えなくなったら、なんて説明は難しいものです」

-でもたしかに病気や会社の倒産、離婚……。ローンの返済危機はいくらでもあります。返済できなくなると、どうなりますか?

 「銀行は、残りの金額の一括払いを求めてきます」

-え、一括?

 「そうです。たとえまだ残り3000万円あろうが、金額は関係ありません」

-ローンが払えないのに一括で返済するなんて、無理ですよね?じゃあ、家を売却してお金を作ればいいですか?

「そうですね。例えば残り3000万円のローンがある家に対し、不動産業者が2000万円程度で売れると査定したとします。しかしこの場合、銀行は残り1000万円の一括払いを求めてきますし、それが無理なら『抵当権の抹消』には応じないと言ってきます」

「この抵当権の抹消とは、もし足りない1000万円を一括で用意できなければ家の売却もできませんよ、という意味です」

-そんな。八方ふさがりじゃないですか。

「まさにその通りです。しかしここでやってはいけないのが、他からの借り入れです」

「月々の返済が苦しいからとカードローンなどに手を出せば、とんでもないことになります。住宅ローンの金利はせいぜい1~2%ですが、その返済のために金利8%のカードローンを利用したらどうなりますか?冷静な頭で考えれば分かることなのに、誰にも相談できないままお金のことで頭がいっぱいになり、判断力を失った多くの人が手を出しがちです」

「私はそれで心身を病み、人生を棒に振ってしまった人をたくさん見てきました。借り入れなどに手を出しては絶対にダメです」

■そもそも住宅ローンってなに?

-わかりました。じゃあ、あとは滞納するしかないわけですか?

「そうですね。もし滞納した場合、銀行から催告書という書類が届きます。約半年間滞納すれば、一括払いを求める書類が届きます」

-うーん、また一括ですか。なぜすぐ、一括払いを求めて来るんでしょうか?

「ではここで、住宅ローンについて詳しく説明しますね。借りたお金というのは、本来、相手が返して欲しいと言ってきたら一括で返さないといけません」

 「しかし、3000万円や4000万円の家を買ってすぐ全額支払える人はほとんどいませんよね。そこで私たちは銀行と、『時間がかかっても、いずれきちんと借りた額を返す』という契約を交わします。すると銀行は、最長で35年間待つ代わりに少し余計にお金をいただきますねという条件で貸してくれます。これが住宅ローンです」

-少し余計に、とは金利のことですね。つまり銀行は、本来一括でもらいたいお金を、借りる側が金利を支払うことで待ってくれているってわけですか。

「そうです。私たちは『毎月の金利で、35年という期限を買っている』のです。これを『期限の利益』といいます。ところが月々、きちんと借りた額を返していかなければ契約違反となります。違反すると銀行は期限の利益を無効とし、これ以上待てないから残りの全額を一括で払ってくれ、と言ってくるわけです」

■ 住宅が競売にかけられる!

-滞納すればどうなりますか?

「大抵の場合、6カ月以上滞納が続くと銀行は裁判所に申し立てを行います。すると裁判所から家に書類が届き、裁判所の執行官と不動産鑑定士が家を訪問して査定にかかります。 『現況調査』といって、つまり競売によって売却される家の調査です」

「室内を撮影され、それが競売物件の掲載サイトにアップされます。このサイトの閲覧者は競売物件を扱う業者くらいですが、実際は誰でも見られます。実際に見に訪れたりご近所に聞き回ったりする業者もいますね」

「やがて競売で競り落とされれば強制的に売却され、住民は退去させられます」

-つらいですね……。

「そうですね、家のローンが払えないだけでもつらいのに、裁判所から書類が届き、執行官らが自宅に来て……訪問日は事前に通知がありますが、これを無視したり居留守をしてもムダです。彼らは鍵屋さんを連れてきて強制的に調査しますからね」

「しかしこれらは全て、正規の手続きを経て行われる順番通りの作業です。でも、みなさんのような一般の人たちは知りませんよね。だから『次はどうなるんだろう』という恐怖を味わい続けることになります」

-一体どうしたらいいですか?どうしたらよかったでしょうか?

「ローンが払えなくなった時点で正しい選択をしてほしい。それが任意売却です」

-任意売却?

「そうです。お金の返済義務は続きますが、せめて怖い思いをせず、心の負担を軽くする方法が任意売却です」(次回に続く)

(まいどなニュース特約・國松 珠実)

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